旅立ち
「はあ、落ち着きましたか?」
「重ね重ねすみません。お見苦しいところを...」
再び、女神さまの前で正座をさせられる美湖。女神さまは、ため息をついて
「あなたは節操というものがないのですか?」
「あー、それは、死んだときについでに置いてきました。」
美湖はおどけてみせる。
「ったく、では、次に、あなたの身体能力を確認しましょう。ストライドでは、ステータスというものがどんな森羅万象に与えられます。つまり、あなたにも与えられるということです。心の中でステータスと念じてみてください。」
美湖は言われたとおりにしてみる。すると、半透明の板状のものが出現した。
「わぁ、なんか出ましたよ。」
「それがステータスです。そこに書かれているのは、あなたの能力と才能です。それは、生まれた時からすべての者が持つ身分証です。」
そこには、美湖の能力値が書かれていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
NAME ミコ
LV 8
AT 125
DF 115
MA 85
MD 80
SP 115
IN 130
HP 300/300
MP 280/280
SUKIL
言語理解(MAX)
封札(MAX)
鑑定(MAX)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「これがステータス。ゲームみたいですね。」
「そうですね、おおむね間違ってはいません。そこに記されているのは、あなたの能力値と、才能です。それらが今回あなたの最適化によりあなたに与えられた物です。」
「ほえー、すごいですね、ステータスの値は比較対象がないのでわかりませんが、スキルがカンストしてるのはバグですか。?」
美湖が間の抜けた感じで言った一言。だがそれを聞いた女神さまがあんぐりと口を開けていた。
「ちょっとまってください。あなたのステータス......これは、...」
「どうしたんですか女神様?」
「あなたのステータスはおかしいんです。レベルが8というのは、年齢的にもおかしくないのですが、レベル8なら、本来平均30から50なんですよ。それが、平均100オーバーとかおかしいですから!!それにスキルも、言語理解がマックスなのは、転生者の特権ですが、それ以外の封札と、鑑定がマックスなのはおかしいですよ!!!」
はぁはぁ、と肩で息をしている女神さま。よほど驚いたらしい。
「しかし、最適化で与えられた能力の改変は紙にも不可能です。すみませんがこのまま転移してください。まぁ、危険が多い世界ですし、強い分には問題ありませんから。」
「そうですよね。で、だいたいのことはわかったんですけど、この封札ってスキルはどんな能力なんですか?」
「ああ、それはですね、専用の札にあらゆるものを封じる能力と、その札の作成ができるスキルです。」
「ん、案外地味な能力ですね。まあ、一般の数倍のステータスってだけでもすごいチートですしね。」
「それでは、最低限の装備を与えます。どうぞ。良ければ鑑定してみてください。ステータスと同じように念じるか、発動を意識して声に出せば発動しますから。」
そういって女神さまが出したのは、一本の剣と革でできた装備、布製の肌着、カンパンのようなお菓子が一袋と、金銀銅でできたコイン数枚ずつと、カード数枚だった。美湖がそれぞれに鑑定スキルを発動していくと
・鉄の剣
・ハードレザーシリーズ
・布の肌着×5
・非常食×30
・金貨×10
・銀貨×10
・銅貨×10
・封じの札(金)×3
・封じの札(銀)×5
・封じの札(銅)×10
となっていた。
「これらは、選別です。これよりあなたをストライドに転移させます。これより先は、あなたに干渉はほとんどできません。命を大事に生きてくださいね。」
「わかりました。女神様。僕を気にかけてくれてありがとうございます。ですが、一つお願いがあります。」
「なんですか?これ以上の物品の授与はできませんよ?」
「そうではありません。ただ、元の世界に残してきてしまったお母さんが、僕がいなくなったことでまた苦しむのではないかと思うんです。ですからどうか、幸せにしてあげてくれませんか?」
美湖は涙を瞳に溢れさせながら、女神さまにお願いした。それを見て女神さまは、慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら
「わかりました。完全に幸せにすることはできませんが、そのきっかけは何回か与えることにしましょう。そのきっかけをつかむかどうかはあなたの母親次第ですが。」
「ありがとうございます、女神さま。」
「それではそろそろお別れですね。生きなさい、美湖。自分の幸せのために。」
「ハイ。行ってきます女神様。」
そういって、美湖の姿は消えた。
「...あの子の運命が、壮大な旅が今始まるのですね。」
女神さまのつぶやきが、死後の世界の虚空に消えていった。