二人の奴隷
カルアが連れてきたのは二人の少女だった。
「まずは、こちらが遠距離攻撃の使い手です。白狼種のアリサです。」
カルアに紹介されたアリサは、銀髪と見間違えるほどに美しいショートヘアの白髪、その頭に乗っているピンととがった狼の耳、少々気の強そうな釣り目、明るい水色の瞳、スレンダーな体躯、腰から生えた流麗なしっぽ、誰がどう見ても美少女だった。
「初めまして、白狼種のアリサです。得意なのは、遠距離からの狙撃です。武器は長弓、あと護身程度の短剣術はあります。後は、料理を少しできます。よろしくお願いします。」
アリサがぺこりとお辞儀をする。それに従い耳としっぽが揺れる。美湖は自分の欲望の暴走を抑えるのに精いっぱいで、アリサの話はほとんど耳に入っていなかった。
「アリサは、白狼種の中でも、特別美しい毛並みを持っているのですが、それゆえ、同族にねたまれ、ここに売られてきました。一昨日、ミコさんがユーナを購入してくれたのを機に、今度来店されたときは紹介使用と思っていたのです。そして、こちらが、ハーフエルフのスーリンです。」
続いて紹介されたのが、普通の人間よりも少しとがった耳を持つ少女だった。濃いダークグリーンの腰まであるロングヘアー、穏やかそうなたれ目に赤い瞳、ボンッ、キュっ、ボンッの体系に、すらっとした足、アリサとはまた違うタイプの美少女だった。
「初めまして~。ハーフエルフのスーリンですぅ。回復魔法と、少しの攻撃魔法が使えます。一応、棒術もたしなんでいます。後、精霊魔法も適性があるみたいです。家事はある程度はできますので、よろしくお願いします。」
スーリンが、お辞儀をする。それで揺れる胸。ミコは鼻血が出るのを隠すのに精いっぱいで顔を背けていた。
「彼女はハーフエルフであるため、エルフの里から売られてきたのですが、やはりハーフというだけで忌避感があるのか、売れ残ってしまいまして。あなたなら、この子を気にいるかと思いまして、ほかのお客様には紹介していませんでした。」
「うん、どっちも最高。ユーナちゃん、判断任せるよ。僕は少し気を落ち着かせたほうがよさそうだから。」
そういって、美湖は部屋の端に移動すると、上を向いて鼻を抑えた。
「ハァ、ご主人様にも困ったものです。それで、カルア様、この子たちの金額は?」
「とても信頼されているようだね、ユーナ。二人の金額はアリサが金貨7枚、スーリンは金貨5枚、しかし、君のその様子を見るとあの人は奴隷を幸せにしてくれそうだ。それを考えて合計金貨10枚でどうだい。」
金貨二枚分、20,000ルクス、現代の通貨で約200,000円程度のサービス。ユーナは面食らっていた。
「いいんですか、カルア様?」
「かまわんよ。それだけ私は、彼女を信頼している。それは君が証明してくれた。君が、本当に幸せそうに笑っている。それで彼女を信頼する根拠は十分だ。」
カルアは、心の底から慈しむような笑みを浮かべていた。この建物の中で、絶望しかなかった少女が、たった二日で幸せそうな顔をするのだ。嬉しくないはずがない。
「最終判断はご主人様がされます。それよりも、その子たちと話させてください。私たちの目標を知ってもついてくる気があるのか、先に知っておきたいのです。」
「わかった。私は少し席をはずそう。くれぐれも、購入前に手を出さないようにしてくれたまえよ。そうなれば、君のご主人様を憲兵に突き出さなければならないからね。」
そういって、カルアは部屋を出ていった。部屋に残されたのは、ミコ、ユーナ、アリサ、スーリンだった。しかし、美湖はまだかかりそうだった。
「それでは、お二人に確認したいことがあります。私たちは、あなたたちを購入するつもりでいます。しかし、私たちの目的を聞いてから、いやだとならないように、ここで確認させてください。」
そう前置きして、ユーナは美湖の目的を話し始めた。




