奴隷商訪問
翌朝、また美湖はユーナより早く目が覚めたので、彼女の寝顔を眺めていた。
(しっかし、まだ、僕の対応になれないのかな。ところどころ自分を物のように扱う癖が消えてくれないんだよね。ま、こればかりは、時間が解決してくれるのを待つしかないか。)
しばらくするとユーナが起きたため、準備をして受付に行く。今日で、いったん契約が切れるからだ。
「ソクラさん、契約の延長をしたいんですけど。」
「ハーイ、おはようございます二人とも。」
「おはようございます。それで、延長なんですが、二人部屋か3人部屋って空いてますか?」
美湖が、部屋の空きを確認する。
「いえ、その大きさの部屋は開いていません。でも、5人部屋なら今日空く予定ですよ。」
「そうですか、わかりました。また帰ってから考えます。」
そういって、荷物をもって宿を出る。荷物といっても、すべて美湖の札に封じているので特にないのだが。今日も同じように屋台で適当なサンドイッチを購入し、二人で食べる。そして、クラン支部の裏にある奴隷商『スレイブ』にたどり着く。
「すみませーん。カルアさんいますか~?」
入口から、大きめの声でカルアを呼ぶ美湖。しばらくすると、頭に少々寝癖が残るカルアが急いで出てきた。
「おはようございます。ミコさん。ユーナはどうでしょうか?」
「おはようございます。ユーナちゃんは頑張ってくれていますよ。今日は、新しく奴隷を購入しようと思いまして来ました。」
カルアは、二人を応接室に通し、一度席を外した。
「カルアさんは、どうして席を外したのでしょう?」
「さぁ、どうせ寝癖でも直しに行ったんじゃないかな。」
二人で待っていると、カルアが戻ってきた。彼の頭からは、寝癖がなくなっていた。
「お待たせしました。それで、新しく奴隷を購入したいとのことですが、どのような奴隷を御所望でしょうか?」
「そうですね、まずは魔法、もしくは遠距離からの攻撃ができるタイプと、できれば回復魔法が使えるタイプを探しています。どちらも女性で、この店にいるでしょうか?」
美湖の注文に、カルアは、少し考えると、
「おそらく、ご希望の奴隷がいます。両方ともいますが、二人とも連れてきたほうがよろしいですか?」
「はい、お願いします。」
カルアはうなずき、部屋を出ていった。
「どんな子が来るんだろうね。ユーナちゃんみたいに可愛ければいいなぁ。」
「もう、ご主人様、からかわないでください。それに、この『スレイブ』は、見た目にも気にしています。こういっては何ですが、醜いものはいませんでしたよ。私がいたときは。」
「といっても、2日前なんだけどね。てか、ユーナちゃん、僕が出した条件に合う子がいたか覚えてないの?」
「申し訳ありません。私は、ダンピールで、吸血衝動に駆られてほかの奴隷を襲わないように、隔離されていたので、個人の詳細なことまではわからないのです。」
ユーナは、肩をすくめ、落ち込んだしぐさをする。おそらく、美湖の質問に答えられなかったのがショックなのだろうが、その様子を見た美湖が、暴走しないわけもなく、
「あ~んもう、ユーナちゃんは、ほんとにかわいいんだから。僕をこんな状態にしたのは、君が二人目だよ。」
「二人目、一人目はどなただったんですか?」
美湖の言葉に、ユーナの瞳からハイライトが消える。
「えっと、ユーナちゃん?そんな顔されると怖いんだけど...、一人目は、この世界に僕を送り込んだ女神さまだよ。2回も暴走しちゃって迷惑かけちゃったな。」
「そうでしたか。では、この世界では、私だけなんですね?」
「あ~、そうなるね、もしかしてユーナちゃん、やきもち?」
「そそそそ、そんなわけないじゃないですか!?奴隷がご主人様にやきもちを妬くなど、言語道断ですから。」
そういって、そっぽを向くユーナ。その様子を温かい目で見る美湖。そこに、カルアが戻ってきた。二人の奴隷を引き連れて。
「お待たせしました。こちらが、ミコ様に紹介したい奴隷たちです。」