アリアとユーナとの食事
「ホントにもう、自分の宿通り過ぎるなんて...」
「すみませんでした。しかし、早かったですねアリアさん。」
今だ、ジト目で見てくるアリアに対し、謝り会話につなげる美湖。アリアは、一度ため息をついて、
「私は普通にクランを出ましたよ。さて、どこで食事するんですか?」
「ああ、それは、少し安いですが、宿に併設されている食堂ですね。少しお酒臭いですが。」
美湖は、ユーナとアリアを連れて、宿に併設されている食堂にやってきた。扉を開けると、アルコール臭が襲ってきて、3人は顔をしかめた。
「ハァ、毎度毎度すごいにおいだね。僕これだけで酔っちゃいそうだよ。」
3人はアルコール臭の薄い窓際に席を取り、メニューを見始めた。
「僕は、いつもの黒イノシシのステーキとサラダにするけど、ユーナちゃんはどうする?」
「私もご主人様と同じものがいいです。」
「へぇー、口だけじゃなく、ほんとに対等に接しているんですね。ユーナさん、いいご主人様ですね。」
アリアの言葉に、ユーナは顔を赤らめながら、嬉しそうに、はいっ、と答えた。
「あの~、ご注文はどうされますか~?」
横を見ると、従業員が注文を取りに来ていた。
「えっと、黒イノシシのステーキとサラダのセットを2つと、アリアさんはどうしますか?」
「あ、私も同じものをお願いします。」
「わかりました。黒イノシシのステーキとサラダセットを3つですね。」
従業員が注文をもって、厨房に戻っていった。
「それで、聞きたい話とは何でしょうか?」
アリアが、本題を切り出す。美湖がそれに応じ、
「はい、僕たちは今回、スタンビートを壊滅させました。しかし、何というか、手ごたえが無く、物足りない感じなんです。」
「それはまた、とんでもないことを言い出しますね。スタンビート相手に物足りないなんて。」
アリアの顔が、驚きを通り過ぎて、あきれに変わる。
「はい、しかし、今回は報酬も多くて生活を続けられそうですが、ゴブリン一体の買い取りと、ミッションの成功報酬では、今後、この生活を続けることができないのです。それに、僕たちの目標は塔の攻略です。仲間も増やさないといけないし、装備の充実もしないといけない。このままでは、目標に近づくことができないんです。何か、いい案はありませんか?」
美湖の話を聞いて、アリアは少し考え、
「ん~、塔ではありませんが、子塔ならこの町の近くにありますよ。確か、現段階での最大階層は、20階層だったはずです。今回、お二人はFランクにランクアップしましたし、この子塔の難易度は、5階層までならGランクです。入ることはできるかと思います。それに、塔での算出されるものなら、1日に500ルクスは稼げるかと思います。十分にやっていける金額かと思いますが。」
「ご主人様、Gランクなら、今の私たちでも攻略は可能かと思います。それに、ミッションを受けながら子塔に入れば、ランクアップもできます。それに、各階層には階層主と呼ばれる魔物もいます。それらの素材は普通の魔物よりも上質です。武器屋防具の素材にも適しているかと思います。行ってみませんか?」
二人の話を聞いて、美湖は少し考える。
「確かに、生活を続けるにはいい話だと思います。ですが、僕は明日、新しく奴隷を購入しようと思っています。そうなるとその子はHランクということになりますが、塔に入ることはできるんですか?」
「お待たせしました~、ステーキとサラダのセット3つです。ごゆっくりどうぞ~」
従業員が、食事をもってきて、いったん話が途切れてしまった。しかし、アリアは、ステーキを一口食べ、
「それは大丈夫ですよ。難易度より一つ上のランクを持つものが同じパーティーにいるなら、その階層に入ることは可能です。」