報酬の使い方
二人は、クランを出た後宿にむかって歩き出した。
「しかし、思いがけない収入だったね。10万ルクスか。懐も膨れたし、どうしよっかな。」
「ご主人様、衝動買いはやめてくださいね。探索者の収入は字不安定です。少しでも油断すれば、すぐさま借金奴隷になってしまいますよ。」
浮かれる美湖をユーナが諭す。すると、美湖はふてくされたように、わかってるよとつぶやく。
「でも、ご主人様が浮かれてしまうものわかります。しかし、今日のミッションで分かりましたが、私たちの実力では、ゴブリン程度では、物足りないですね。それに、収入としても、普通の出現数では、1日の宿賃すら稼げないですからね。」
「そうなんだよね。全部一撃だったし。確かに、安全に狩れる分にはいいんだけど、収入がね。いっそ、僕たちの家を買っちゃおうか?」
「いや、ご主人様、それが衝動買いというのですよ。」
「まぁそれは冗談だけどね。僕の目的は塔の攻略だからさ。1か所にとどまることはできないんだよね。」
美湖は、空を見上げながら答える。その姿を見たユーナは、
「何か秘密があるのですか?」
と聞いていた。美湖は、苦笑しながら、
「秘密って程でもないけどね、僕はこの世界の人間じゃないんだ。とある世界で死んで、この世界に来た。その時に、神様から塔を放っておくと、周囲が危険になるって話を聞いてね。だから、塔を攻略すれば、危険にならない方法があるかもしれない。それを探したいんだよ。」
美湖の話を何も聞かずに聞いていたユーナだが、
「しかし、塔の攻略といっても、世界に何個もあるんですよ。それに、一回攻略してもその塔の活動が止まるかどうかなんて、」
「そう、何もわからない。だから、挑む。何もしないよりは何倍もましだからね。こんな僕の目標、ついてきてくれる?」
「それはもちろん!!ですが、それには、やはり戦力が必要だと思います。私もご主人様も近接タイプです。ご主人様の強さは理解していますが、対応できなくなる場合があると思います。やはり、戦力の拡充は必須かと思います。」
ユーナは、今回のスタンビート戦において、自分が倒れてしまったことを悔やんでいた。そして、自分の主人がそのことに憤ったことにうれしさと同時に悔しさを感じていた。本来ならば、自分が主人を守らないといけないと思っているのだった。
「そうだね。僕たちの装備も充実してるとは言えないし、人数も少ない。明日、また奴隷商に行こう。まずは、人数を増やそうか。もちろん、僕たちのレベル上げもしないとだね。結構やること多いな。」
「大丈夫です。私も全力でサポートいたします。」
ユーナは胸の前で両こぶしを握り、アピールする。そのしぐさを見て、美湖は微笑んでいた。
(こんなに僕を慕ってくれる子を危険にさらすのは間違っているのかもしれない。でも、女神さまが言うには、当を放置すれば魔物が溢れてくる。それも危険なのが。そうなれば、この世界自体が危険になる。それは食い止めないと。)
美湖は、自分のしたいことを、しなければいけないことを再び、ここに刻んだ。
ユーナと話しながら歩いて、宿を通り過ぎていたことに気づいたのは、それから20分のことだった。安らぎの風の前で、アリアは少し怒った表情で二人を迎えた。
「先に出たあなた方が、私より後に着くってどういうことですかね?」
「「ほっんとにすみませんでした!!」」
二人は、お冠のアリアに対して、深く頭を下げるのだった。