世界の説明
「落ち着きましたか?」
女神さまが、ジト目で美湖を見つめる。まぁ、先ほどの奇行を見れば正しい反応だろう。
「...すみませんでした。お見苦しいところをお見せしました。」
女神さまの前で、美湖は正座させられていた。女神さまは、玉座に座っている。
「まぁ、先の奇行はもういいです。あなたの前世の性癖は把握していましたし、この姿で現れた私にも落ち度はありましょう。それよりも、あなたの転移先ストライドの説明を行いましょう。
まず、あなたは特に使命などはありません、先ほども言った通り自由に生きて頂いて構いません。その世界は、いわゆるファンタジー世界です。世界には、七つの神々が作った搭『アンティークタワー』と、それの子塔があります。それらは、世界中の魔力を元に、魔物を生み出している。それらを討伐するのが探索者という職業の者たちです。塔は、そのほかにも生活に役立つものをもたらしてくれるため、切手切れない関係となっています。」
「つまり、僕はその探索者になったほうが、その世界で生活しやすいということですか?」
「ええ、探索者には、身元がはっきりしない者たちが多くいます。それに、塔によっては高額な稼ぎを得ることが可能でしょう。しかし、塔を放置していると、魔物があふれ出してしまいます。また、塔が成長していき、最上階が高くなってしまう欠点があります。」
「魔物があふれてくるのは危険なのはわかりますが、最上階が高くなるのは何かまずいことがあるのですか?」
「塔に出現する魔物は、完全にランダムなのですが、その塔が保有している階層の魔物が、これまたランダムで外に溢れてくるのです。例えば、一階層分増えた際、ドラゴンが発生する階層として生まれてしまった際、周辺にドラゴンが溢れてくるということです。一般人からしたら、一体だけでも絶望することです。ですので、階層を増やすことは得策ではないのです。その周辺に、どんな高位の魔物も狩れる凄腕の探索者や、騎士などが何人もいれば別の話ですが。」
「その世界では、つまるところ腕次第というわけですね。楽しそうな世界ですね。」
美湖は、すごい楽しみ、みたいな表情を浮かべている。それは、普通の女子高生がこの場面で浮かべる表情ではなかった。
「まぁ、そういうことです。」
女神さまは、美湖がどうしてそんな表情をするのか思い当たる節があるため、突っ込まなかった。しかしと付け加えて、
「今回あなたがここにいるのは、あなたの人生があまりにもひどいものだったからです。普通の人生を送っていたのであればこの話はなく、すぐさま次の因果の中で来世に送り出していました。あなたの前世は、私が見た中でも、ひどい部類に入ります。来世ではそのような人生にならないように、こういう形で話しているのです。つまり、次死んだら、おそらくこの空間には来ることはできないでしょう。ストライドは、前世に比べて、物理的な危険が何倍も多いです。命は大切にしてください。」
女神さまは、少し頬を赤らめながら小さめの声で言ってきた。そのしぐさを見て、じっとしていられるほど、美湖の精神は強くなかったようで、
「女神さま、私を心配してるれるんですね―――!」
美湖が、女神さまに抱き着き、
「だから、抱き着くな、離れなさい!!」
女神さまに、杖で殴られるのがワンセットとなったのだった。