スタンビート報告
美湖とユーナの二人は、日が傾き始めたころにラティアの町まで戻ってきていた。帰り道には、魔物が出現しなかったので比較的早く戻ることがせできた。
「しっかし、帰りはまものでなかったね。」
「恐らくですが、スタンビートの影響だと思います。ボブゴブリンが20体もいたとなると、この草原の魔物たちにとっては脅威ですから。」
「そうなんだ。あの程度に脅威感じるなら僕たちの敵じゃないね。」
二人は、門に辿り着くと、クラン証を見せて町に入る。門番に荷物がないのを不信がられたが、秘密があるとこたえたら、すんなり通してくれた。二人は、クラン支部にむかった。支部には、そんなに人がいなかったので、すんなりアリアと話すことができた。
「おかえりなさい、二人とも。ミッションはどうでした?」
「ミッションは何とか達成できたんですけど、ちょっとトラブルがありましてね...。裏の解体場で、人払いをお願いします。後、アヤノ支部長もできれば来てほしいかと。」
「…わかりました。すぐに準備いたします。先に解体場へ行っていてください。」
アリアに言われ、美湖とユーナは、解体場にむかう。解体場には、タイミングよく誰もいなかった。
「しかし、ご主人様?どうして、こんな報告の仕方を?堂々と見せればよかったのでは?」
「ん~、それでもまぁ、よかったんだけどさ。僕としてはあんまり目立ちたくないわけだよ。認めたくはないけど、僕が目立つことで、ユーナちゃんが危険になるかもしれないしね。」
「...すみません。私がダンピール族だから...」
「あー、そういう意味じゃないよ?僕が有名になったりすると、その奴隷であるユーナちゃんをさらって僕を脅しに来るとかが、まぁ、僕のいたところの創作物の定番でさ、だからできるだけ、目立たないようにして、ユーナちゃんと穏やかに暮らしたいんだよ。」
「すでに、スタンビートをほぼ一人で壊滅させているあたり、穏やかからかけ離れてますけどね...」
「余計なこと言わないの。」
ユーナの一言を聞いて、彼女の頬を軽く引っ張る。しかし、美湖のその表情は穏やかなものだった。そして、引っ張られているユーナも嫌がってはおらず笑っていた。
「お待たせしました。って、何この和やかな空気。ミコさん?私、支部長連れてくるのにすごい苦労したのに、あなたは、ユーナさんと何いちゃついてるんですか?」
アリアは、少々イラつきながら、二人に問いかける。その後ろには、頭部にたんこぶを作って涙目になっているアヤノ支部長がいた。
「いや~つい。ユーナちゃんがかわいくて~。」
「ハァ、もういいです。それで、わざわざ私たちをここに連れてきたのはどうしてですか?もしかして、今回のミッションで、何かあったんですか?」
アリアの質問に、ユーナが答える。
「その通りです。私たちはラティアヌス草原にて、ゴブリン討伐ミッションを受けていたのですが、その草原で、ゴブリンのスタンビートと遭遇しました。」
「何、ゴブリンのスタンビート!?どこだ!すぐに高ランク探索者と、騎士の派遣準備をしなければ!」
アヤノが、急に真剣な顔に戻り、すぐに動こうとするが、それを、美湖が止める。
「落ち着いてください、支部長。そのスタンビートは僕たちが壊滅させました。」
それを聞いた、アヤノとアリアは、しばらくぽかんとしてから、
「「はぁ~~~~~~!!?」」
と声をそろえて驚いていた。
「まぁ、そうなりますよね。ご主人様、しっかり説明しないと、お二人の顎が外れてしまいそうになってるじゃないですか?」
「ごめんごめん、まさかこんなに驚くとは。」
当の二人は、どうでもないように笑っていた。