ユーナの吸血
消え入りそうな声で、ユーナは、お願いをした。
「血を?」
「はい、実は『スレイブ』でも、血をもらっていたのですが、家畜の血らしく、生命維持には問題なかったのですが、空腹感に似た欲求が消えなくて。ご主人様にお願いするのは、とても、申し訳ないのですが。」
ユーナは、すごく消え入りそうで、その瞳は、おびえているようだった。
「なんで、そんな顔するの?」
「なんでって、血を吸うんですよ?怖くないんですか?気持ち悪くないんですか?」
ユーナの瞳は、さらにおびえの色を濃くしていく。まるで、美湖に嫌われるとでも思っているようだった。その考えが、美湖にも伝わったらしく、
「...はぁ、ユーナちゃん、僕さっきなんて言った?」
「しかし!、私は、この体質のせいで!私の周りからは、好きだった友達も!育ての親もみんな!いなくなってしまったんです!!もう、あんな気持ちは、あんな思いはもう...嫌なんです。」
ついに、ユーナは泣き出して、叫びながら、最後にはその場にうずくまってしまった。その姿を見た美湖は、ゆっくり近づいて、
「ねぇ、僕って信用ないかな?」
ユーナの体を抱きしめていた。ユーナは、いきなり抱きしめてきた美湖に対して驚いていた。
「...あの、ご主人様?何を?」
その質問には、美湖は答えず、さらに抱きしめる力を強める。
「ユーナちゃんが、これまでつらい経験をしてきたのは、わかるよ。だけど、それと僕が、ユーナちゃんの前から消えることとどう考えがあるの?」
「えっ、だって、気持ち悪くないんですか?」
「言ったでしょ、いつでも、僕を頼ってねって。それに、もし、吸血が嫌なら、ユーナちゃんを買ったりしないよ。心配しないで、ユーナちゃんが望まない限り、僕は君の前から消えたりしないよ。」
そういって、さらに抱きしめる力を強める。ユーナは、美湖の腕の中で、泣き始めってしまった。
「だからさ、もうそんなことを言わないでよ。僕は、君のご主人様なんだから、もし、周りが、世間が、君を傷つけるなら、僕は喜んで君の味方になる。絶対に、君を見捨てない。」
「うっ、うう、ごじゅじんざまぁ、ありがどうごじゃいまずぅ...」
ユーナは、美湖の腕の中で泣き続けていた。
「落ち着いた?ユーナちゃん。」
「はい、すみませんでした、ご主人様。」
「こら、もうそういうの、ナシって言ったでしょ?」
「はい、ありがとうございます。」
泣き止んだユーナは、目元が少し晴れてるが、明るい表情をしていた。
「で、吸血だっけ?どうやってするの?」
「はい、では、ベッドで仰向けに寝てください。」
美湖は、言われたとおりに、部屋にあるベッドに寝転がった。すると、その上から覆いかぶさるようにユーナがベッドに乗ってくる。そして、美湖の来ているハードレザージャケットを少しはだけさせ、首筋から肩を露出させた。
「ご主人様、きれいな肌ですね。」
「えっと、ユーナちゃん、結構大胆だね?」
ユーナの行動に、今度は美湖が驚いていた。ユーナは、美湖の耳元に顔を近づけ、
「ご主人様のそういう顔、かわいいですよね。」
そういって、ユーナは、美湖の首筋に舌を這わせた。
「あん、ユーナちゃん、くすぐったいよ。」
「失礼します、ご主人様。」
ユーナは、美湖の首筋に歯を立てた。美湖の傷から一筋の血が流れた。ユーナは血をチューと吸い始めた。
「っ、あ、ユー、ナ、ちゃ、だめ、...あんっ。」
美湖は、ユーナから与えられる刺激に悶えているが、ユーナは気にせず吸血を続けた。吸血は1分ほどかけて行われた。ユーナから解放された美湖は、ベッドの上で息を荒げていた。
「ハァハァ、ユーナちゃん。ほんとに大胆なんだから。」
「ごめんなさい。ご主人様。でも、さっきのご主人様、かわいかったですよ。」
ユーナは、謝っていたがその顔は、妖艶な微笑みを浮かべていた。
「もう、ご主人様にむかって、そんなこと言って。でもまぁ、いいよ。必要なことだしね。」
美湖は、息を荒げながら、ユーナをやさしく抱きしめベッドに寝転がった。
「ふぇ、ご主人様!?」
「もう、疲れっちゃったし、このまま寝ちゃおっか?」
「...はい、おやすみなさい。」
二人は、ベッドで抱き合いながら、眠りについた。




