ユーナのクラン登録
「うう、まだ頬がじんじんします。」
「ユーナちゃんが悪いんだからね?僕をおかしい呼ばわりしたから。」
ユーナは、両頬をさすりながら、美湖の後ろを歩いていた。美湖はそれを横目で見ながら微笑んでいた。そうしているうちに、クラン支部についた。中に入ると、美湖を見つけてアリアが、手を振って専属専用の受付に案内した。
「いらっしゃいませ、ミコさん。早速奴隷を購入されたんですね。おめでとうございます。それで、今回は、どのようなご用件でしょうか?」
「はい、このユーナちゃんを探索者として登録させたくて。できますか?」
「大丈夫ですよ。それでは、えっと、ユーナさん。こちらの紙に血を一滴たらしてください。」
ユーナは、言われたとおりに、差し出された紙に血を垂らすと、名前、年齢、レベルが浮かび上がった。
「はい、では空欄に、ステータスと、スキルを記入してください。書きたくない物は書かなくて結構です。」
ユーナは、アリアから言われたように、空欄に能力を書いていく。ステータスと、闇魔法は記入したが、吸血と吸性は記入しなかった。
「はい、大丈夫ですね。では、これがクラン証です。なくさないように注意してくださいね。」
アリアは、ユーナに青い金属製のカードを差し出した。
「はい、ありがとうございます。ご主人様、お願いを聞いてくれてありがとうございます。」
「いいよ、これくらい。もっとわがまま言ってもいいくらいだからさ。」
ユーナが喜んでいるのを見ながら微笑んでいると、アリアが手招きしているのが見えた。
「何ですかユーナさん?」
「...あの子、ヴァンパイアですよね。気を付けてくださいね。」
「どうして、気づいたんですか?」
「まぁ、あの瞳ですからね。わかりやすい特徴ですからね。あんまり知ってる人はいないですけどね。気を付けてください。私は気にしませんが、中には気にする人もいるでしょうし、教会には、知られないほうがいいでしょう。協会は、悪魔族や、魔族に対して排他的ですから。」
「教会?」
「はい、教会は、魔族や、悪魔族を塔より排出された魔物の末裔と信じているようです。本当は、獣人や、エルフなどと同じで、魔物とは全く関係がないのですがね。」
「ハァ、どこにもいるんですね。そういう頭のおかしい連中。」
美湖は、ため息をついた。どこの世界にも、頭のおかしい宗教団体はいるようだった。
「大丈夫ですよ。もう彼女は私の物です。もし手を出してきたら、もし彼女を傷つけるなら、僕が殲滅します。」
美湖は、少々怒気を含んで言い放った。しかし、それを聞いたアリアは、顔を青くしていた。どうやら、美湖が無意識にはなった殺気がアリアも巻き込んだようだ。しかし、それも一瞬で過ぎ去り、美湖の表情も元に戻り、殺気も消えていた。
「ご主人様、これからどうしますか?」
二人の会話をよそにクラン証を手に入れたことに喜んでいたユーナが落ち着き、美湖に話しかけてきた。
「そうだね、いったん宿屋に行こうか。アリアさんありがとうございます。明日からは、ミッションを受けますね。では、失礼します。」
「はい、ではまた明日。お待ちしております。」
美湖は、ユーナを連れてクラン支部を出た。すでに、陽が傾き始めていた。宿屋『安らぎの風』に到着すると、昨日の少女が出てきた。
「おかえりなさい、ミコさん。そちらの方は?」
「ただいまです。えっと。」
「ああ、そういえば自己紹介まだでしたね。私はソクラ・クエイテールです。よろしくです。」
「よろしく、ソクラさん。こっちは僕のパーティメンバーのユーナちゃんです。部屋は同じところで大丈夫でしょうか?」
「一応、あの部屋一人用ですが、今は、ほかの二人部屋空いてないので、そうしてくれると助かります。」
「そうですか、ユーナちゃん。今、二人部屋が空いてないから、一人部屋で、僕と同じ部屋だけど大丈夫かな?」
「問題ありません。むしろ、一人で部屋にいると、少し怖いので、一緒に居させてください。」
少し、涙目になりながら、上目使いでそう言われたら、美湖の選択肢は一つしかなかった。
「ソクラさん、同じ部屋に泊まります。料金はどうなりますか?」
「そうですね、こちらとしても助かりますので、一人部屋の料金で問題ありません。もし延長するときもそのままの料金で大丈夫です。」
ソクラにそう言われたので、美湖はユーナを連れて、借りている部屋へ入っていった。