奴隷購入2
男性に、ユーナと呼ばれた少女は少々おびえているようだったが、その姿が、美湖の精神をがりがりと削っていく。ユーナはみすぼらしい貫頭衣に身を包んでいるが、その美貌は、後ろに控える女性奴隷とはレベルが違った。深紅の髪を肩くらいの長さで揃えており、同じように紅い瞳。背丈は150㎝位と低いのだが、胸や、腰回りが年齢に比べて、膨らんでいた。そのギャップが、美湖の精神をぐいぐい攻めてくる。
「こちらはユーナといいます。種族はダンピール。年は13、少々幼いですが、ミッションに連れて行っても問題ないステータスかと思います。代金は、銀貨50枚です。」
男性は、ユーナを売り込みかけてくる。美湖は、ようやく安定したようで、
「どうして、そんなに安いのですか?」
美湖が気になったのはその金額だった。かつての元の世界での創作物でも、美目麗しい女性の奴隷は、どれも高額であったからだ。
「ふむ、やはりお客様は、このあたりの知識に疎いというよりは、この国、ひいては世界の常識に疎いようですね。」
男性に言われて、びくっとなる。自分がこの世界の住人でないと思われたのかと、そう勘ぐってしまった。
「もし、私が悪徳商人なら、お客様は、足元を見られるだけではすみませんでしたな。このユーナが格安の理由は種族にあります。ダンピールは、元の名をヴァンパイアといいます。かつての亜人戦争により数が減り、稀少ではありますが、種族特有のスキルというよりは呪いに近いですが、『吸血』というスキルにより、定期的に他人の血を吸血しなければなりません。奴隷という立場上、どうしても維持費がかさんでしまい、買い手がつかなくて金額が安くなっているんです。」
男性の説明を聞くが、美湖はそれで金額が安くなる理由には足りない気がした。
「それだけですか?安くなる理由にしては、弱い気がしますが?」
美湖の切り返しで、男性は、ハトが豆鉄砲を食らったかのような顔をした。
「ハァ、あなたは、常識に疎いように見えて、鋭いですね。そうです。理由はこれだけではありません。彼女のステータスを見て頂ければわかります。こちらが、この奴隷を購入した時のステータスです。」
男は、一枚の紙を差し出してくる。美湖はそれを読んでみる。
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NAME ユーナ
LⅤ 10
AT 45
DF 35
МA 50
МD 55
SP 60
IN 35
HP 125/125
МP 150/150
SKILL
吸血(5/10)
吸性(Max)
闇魔法(8/20)
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吸血
他人の血を定期的に吸うことで自身の肉体を維持する能力。頻度は1週間に50ml
また、肉体の維持以外で吸血することにより、一時的に自身のステータスを大幅に向上させることができる。
吸性
相手の精力を吸収して自身の糧にする能力。能力差があると、相手を死に至らしめる可能性がある。
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となっていた。
「見て頂けましたか?吸血スキルはダンピール族の固定スキルなんですが、吸性は、本来はサキュバス族の固定スキルなのです。それを持っているということは...」
「彼女は、ダンピールとサキュバスのハーフの可能性があるということですか?」
「はい。それに、奴隷は基本的に主人を殺せませんし、そもそも、害することを禁じられていますが、この吸性スキルは、例外的に、主人を殺せてしまうことがあるんです。そのため買い手がつかなかったんです。」
美湖はその説明を聞いても、別に気にしていなかった。
(うーん、買う以外の選択肢がないんだよね。てか、あんなかわいい子に血を吸われるとかどんなご褒美ですかって話だし、そもそも、生命維持なら、僕たちも動物殺してるしね。)
「わかりました。その子、ユーナを購入します。」
美湖は男性に告げた。