新たなる町『リバーサイド』
美湖たちの見張りの時間が終わり、アリサとアリア、レミアの番に変わった。
「ふぁ~あ、あとよろしくね、アリサちゃん、アリアさん、レミアちゃん。」
「よろしく頼む。」
「はいよ、ゆっくり休んでくださいよ。」
「わらわたちに任せるのじゃ。」
「私も、頑張りますから。ごゆっくりお休みください。」
美湖、エイルは、アリサたちに交代しテントに入っていった。
「さて、じゃあ、朝まで頑張りますか。」
アリサはそう言い、短剣と弓矢を準備しだした。
「そいやぁ、アリアさんは水魔法を使うんだよな?どんな魔法が使えるんだ?」
武器の点検をしながら、アリサはアリアに問いかける。アリアは、美湖から渡されていたポットからジュースを注ぎ、一口口に含む。
「そうですね。初級の『アクアショット』、形状を槍の形にして放つ『アクアランス』、水を撒くのようにして、敵の攻撃を防ぐ『アクアヴェール』。無詠唱で使えるのはこれくらいですね。あとは、スクロールや、魔導書があれば上級くらいなら使えますよ。」
「いやいやいや、無詠唱で使える魔法がある時点ですごいから。しかも、媒体有りでも、上級が使えるのもすごいから。何で、クランの受付嬢してんだよ?」
「んー、なんだかんだで、クランの受付嬢のステータスは結構高いですよ。でないと、荒くれぞろいの探索者の相手なんてできませんよ。採用条件も、戦闘系か、魔法系のスキルがカンストしてるのが必須ですからね。」
「うわぁ、聞きたくなかった、そんな情報。」
「ふむぅ、そんなもんかのぅ?わらわも、無詠唱なら中級くらいまでなら使えるぞ?」
二人の告白に、アリサはただただ驚いていた。
「何だ、私がおかしいのか?スーリンさんや、エリザさんだって、詠唱してたぞ?」
「おそらく、スーリンさんは『精霊魔法』と『エレメント』スキルの併用から、詠唱を必要とするのでしょう。エリザさんは、おそらく使っていたのは上級ばかりではなかったですか?詠唱は、より高度なイメージを作るための言霊ですからね。初級中級くらいは、慣れると無詠唱で使えるものですよ。」
アリアはそう言って、一口ジュースを飲む。
「はぁ、ただでさえ足引っ張ってるのに、またすごいのが一緒になって。肩身が狭くなるな。」
アリサは、ぼそっとつぶやいたが、レミアはそれをしっかり聞き取っていた。
「なにを言うか。アリサほどの弓術師はそうはいないだろう。わらわが見たのは、この旅で襲ってきた魔物戦だが、わらわの生前でも、遠距離から、あれほどの乱戦で、的確に敵を射抜くことができるものはそうはいなかった。もっと胸を張ってもいいのではないか?」
「そうですよ。それに、アリサさんに新しく加わっているスキル『狼化』もあるじゃないですか。まだ扱いが難しいかもしれませんが、強力なんでしょ?」
アリアは、以前ステータス更新したアリサの情報から、話を振ったのだが、
「あれは、使わないことにしたんだ。あれを使ったら、またみんなを傷つけちゃう。」
『ケルベロス』戦で、美湖やユーナを傷つけたことが、アリサの中ではトラウマになっているらしい。
「まぁ、アリサさんは、弓術による後方支援が役目じゃないですか。あんまり思いつめないほうがいいですよ。私だって、戦闘はからっきしですからね。」
「そうじゃそうじゃ。わらわも、戦いはできんしの。」
「二人とも、ありがとうな。」
アリサの顔に、少し笑みが戻った。
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「ふぁ~、みんなおはよ~。」
美湖がテントから出てくる。美湖以外は全員そろっていた。
「おはようございます。ご主人様。出発の準備は、ほとんど終わっています。」
「そっか~、ありがとうね。みんな。さ、ご飯にしよっか。」
美湖はそういうと、魔札を数枚取り出し解放していく。ラティアの町で作ってもらった、『フレンジカウのホットドック』と、『ワイルドハーブのサラダ』、『フレンジカウのミルク』が、それぞれ器に入って現れた。
「美湖さんのスキルは、いつ見ても驚きですね。便利すぎて元の生活に戻れなさそうです。」
「ははは、ありがと。それじゃ、いただきます。」
「「「「「「いただきます。」」」」」」
7人は、朝食を食べ、『リバーサイド』に向けて旅を再開した。
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それからの旅路は、数回魔物が襲ってきたが、美湖、ユーナで全て討伐し魔札の肥やしとなった。
「わぁ〜!見て見て皆!おっきい河だよ!てか、本当に河だよね?」
「美湖さん、あれが大運河『ナール』です。」
一行が小高い丘を越ると、かろうじて対岸が確認出来るくらい、河幅が広い大運河『ナール』が一番に目にとびこんできた。
「そして、あっちに見えるのが、目的地『リバーサイド』です。」
アリアが指差す方には、『ナール』に沿うように街並みの広がる都市『リバーサイド』が、その活気を見せている。『ナール』には、いくつもの桟橋がかけられ、大型船がいくつも停泊している。生け簀もいくつか作られているようだ。町の入り口からは、多くの人や、馬車が出入りし、にぎわっていることがうかがえる。そして、『ナール』のちょうど中ほどに、天に向かって塔がそびえたっていた。
「うわ~、すご~い!ここも楽しそうな町だね!!」
美湖は、その街を遠くから眺め、すごいはしゃぎようだった。それを見る仲間たちもほほえましいものを見るような笑みを浮かべる。
「さ、みんな、行こう!」
美湖は、ユーナとアリサの手を引っ張り、『リバーサイド』に向かって走り出した。スーリン、エイル、アリア、レミアは、そのあとを歩いてついていく。
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「ようこそ、『リバーサイド』へ。この町に来た理由は?」
『リバーサイド』の街門に着いた一行に、門番の男性が問いかける。
「はい、僕たちは、この町にある『アクエリアスの塔』に挑戦しに来ました。しばらくは、この町に滞在しようと思います。これが僕の探索者クラン証です。」
「これが私のです。」
「これが私のだ。」
「これが私のですぅ。」
「これが私のものだ。」
「私は「ラティアの町」の探索者クラン支部にて、こちらの美湖さんの専属となった、アリア・スカーレットです。こちらのクランでも、美湖さんの専属として務めさせていただきます。こちらが、クラン証です。」
「どうしよう、わらわ、身分証ないぞ。どうしよう美湖!?」
「ははは、大丈夫だぞ嬢ちゃん。えっと、美湖さんだっけか。この子の入街税として、銀貨一枚1000ルクスを支払ってもらえば、この町でのみ使える滞在許可証を発行させてもらう。」
門番の男性は、レミアの慌てふためく姿を見て、ひとしきり笑った後、そのように説明してくれた。
「そういうことでしたら、はい、これが代金です。」
美湖は、言われたとおり、銀貨一枚を差し出した。門番の男性は、銀貨を受け取ると、代わりに楕円形の金属板のついた首飾りを取り出した。
「ほい、確かに受け取った。じゃあ、嬢ちゃん。これが滞在許可証だ。この町の出入りで、更新が必要だから、もし頻繁に出入りするなら、クランで登録しておくといい。」
「わかったのじゃ。」
レミアは、許可証を受け取り、それを首にかける。
「後は、あんたらほとんどが他種族だな。この町は、人の入れ替わりが激しいから、一般人はさして気にしないだろうが、教会の人間だけには注意しろよ。特に、ダークエルフのねぇちゃんは危ないだろうな。」
「ご心配なく。聖女・クリスティーナ様より、こちらの短剣をいただいております。もし、教会にかかわる場合は、これを見せれば問題ないとのことですので。」
と、美湖はクリスティーナに渡された短剣を見せる。すると男性は、
「これはすごい。嬢ちゃん何もんだ?聖女様からそんな宝剣を授かるとは。長いこと門番してるが、これほど驚いたのは初めてだ。と、おしゃべりはこれくらいにしておこうか。では改めて、
ようこそ、大運河貿易の町『リバーサイド』へ!!」
男性は、美湖たちを大きく、勢いのある声で、歓迎してくれた。




