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加害者のわけ

作者: 間宮遊助

まだまだ未熟ですので、すみません。

初投稿ですけど、これから頑張ります。

……ここって、どこだろ?


真っ白な布団とベッドに僕は挟まれていた。

何してるんだろう…って、あれ?


僕って誰?ここってどこ?今まで何してた? 


暫く一人で呆けていたが、その内「起きよう」という思いが芽生えた。

何故思ったかは自分でも分からないが、

「寝てるのに飽きたから」と適当にごまかせばいいだろう。誰にだろう?


「…うっ!」


起き上がろうとした時頭がゆれ、同時に頭痛に似たような症状がでた。

右手で頭を抱えどうにか上半身を動かした。

どこか見たような景色、けど分からない。

起き上がってから頭の痛みが酷くなっている気がした。

分からないがこれ以上酷くなったらいけないと悟った。

息を荒くしながらも、視線を右に泳がせた。

真っ白なカーテン、真っ白な部屋、真っ白な机。

しかし、机の上にはペーパーナイフがある。

まるでその白い机に馴染んでいない、異物のような感じだ。


……どこかで使ったような気がする。


「なんだ、起きてたんですか」


僕は彼を横目で見た、頭が酷く痛み、ブランと頭を下げていたため、目だけで見たので残念ながら顔までは見られなかった。

唯一見えたのは白衣。


「症状はどうですか?」


ああ、こいつはきっと医者だ。こいつの言うことを聞けばこの痛みはきっと治る。

理由は無いが、確かにそう思う。


「聞いてます?    さん」


考えてたせいでつい答えるのが一瞬遅れてしまった。

いやそれより聞き取れない。何故か名前のところだけ聞こえない。


「   さん、今日もこの薬飲んでくださいね。ちゃんと飲めばこの後遺症もどうにかなりますよ」


やはり聞き取れない。それは僕の名前を呼んでいるのだろうが、分からない。

後遺症……。そうか、なんかの事故に巻き込まれたのか。

この頭痛は後遺症なんだ。なら何故こんな事になったんだろう。


「…あの、僕ってどうかなってしまったんですか?」


「ああ、心配要らない。脳に障害が少しありますが何とかなりますよ。……ただ大事な問題ですからね。」


うわ言のように彼は呟くと、パタパタとスリッパの音を響かせながら彼は部屋をでた。

それから一分も経たずに一人の女性を連れてきた。

二人で何かをごそっと話して女性がこちらを見た。


「    さん、今からあなたの記憶、見させてもらいますね」


やはり彼女の言葉も聞き取れない。彼女は僕の目を見て、笑った。

嫌な感じがする、自分の、自分の正体が、何もかも見られるような感じがした。

え、正体……?


「そんなに力まなくてもいいのよ」


彼女の目は僕の胸のうちまで知り尽くしそうな、そんな見透かすような目だった。

一瞬彼女のやったことが分からなかった。

ただ急に目蓋が重くなり、すっと暗闇に落ちていった。


真っ暗な闇、不安を抱いた。

体が浮いているような心地だ。僕は周りを見たがどこにも闇が広がるだけ。

まっ白な、フワフワしたシャボン玉のようなものがこちらに来た。

一つ奥から来るとまるで追いかけるようにまた一つ、また一つとシャボン玉がきた。

いくつもののシャボン玉の中にはそれぞれ世界が広がっていた。どこにでも僕は居た。


シャボン玉が二つ三つ通り過ぎた頃に四つ目が来た。少し覗いてみるとやはり僕が居た。

小学生の頃の入学式だ。僕ともう一人女の子が居た。どこかで見たことがある。

……悪寒がした。できればもう、忘れたい、何故かそう思った。現に覚えてないのに。

僕はそのシャボン玉から離れるとそのシャボン玉はパチンと音をたて無くなってしまった。

あの嫌な感じ……。なんでだろう?そして何故アレだけ割れてしまったのだろう?




僕はいい加減シャボン玉を見るのに飽きてしまった、というのもすでに何十時間と時が過ぎたのだから。

飽きる、と言うよりかは疲れたといったほうがいいかもしれない。僕はシャボン玉の川を出た。

どれも僕の昔の記憶ばかりで懐かしかった。が、もう来る記憶全てがただの日常になっていた。

シャボン玉の川は少しずつ勢いが弱まっていき、そして最後には黒いシャボン玉が残った。


そのシャボン玉は様子が明らかにおかしかった。黒く淀んでいる。

僕はすぐに駆け寄ってその世界を見た。



「……はぁ、はぁ……」


荒々しい呼吸をしている僕を見た、雨の中傘もささずに走っている。

…手にはペーパーナイフ。


「絶対に、絶対に金作ってやるから…。待っててくれ、   ……!」


あ、そうだ。僕には病気の妹が居たんだっけ、でも名前だけは聞こえない。

確かこの日、妹の手術の日だ。お金がどうしても足りなくて……。


僕は自分が路地裏に走っていくのをみとどけた。


「頼む!金を貸してくれ!」


「もう無理よ!いったいいくら貸してると思ってるの!?」


どこかで見た女性に金を求めていた。無論女性は嫌がったが


「頼む!妹の一大事なんだ!頼む、もう当てが無いんだ!少しでいい!分けてくれ!」


と食い下がってきた。見たところ女性とは面識があるようだった。

だからきっと声を掛けてのだろう。


!?あれ?この人って…彩夏さん?

彩夏さんとは小学中学と同じ学校に通い続けた同級生だ。

そうか、僕はお金を借りようとしているのか。妹のために。


ようやく状況が飲み込めた。


「い、嫌ですよ!他をあたっ…!」


そこで女性は声を止めた。銀に光る、小さな異物が彼女の首の辺りで止まっていた。


「……金を……出せ。時間がないんだ」


僕の手にはあのペーパーナイフが握られていた。いつ人を殺すか分かったもんじゃない。

そのくらい僕の精神は揺らいでいた。しかしいくら事情があっても金を出せ、と恐喝して言いわけがない。


  ―――だめだ!やめろ!―――


僕の叫びは僕自身に届かなかった。彼女はパニックになり思わず逃げ出した。

僕は彼女のハンドバッグを掴み、引き寄せた。

急に引っ張られたので、彼女は倒れてしまった。

引き寄せたバッグを彼女は易々と放してはくれなかった。

僕は彼女を殴ったが放さなかった。高ぶった感情はもう誰にも止められなかった。


刺した、ペーパーナイフで。彼女の胸のあたりだろうか。

溢れていく紅い、それは紅い深紅のしずく、やがてそれは水溜り程度の大きさになる。

しとしとと降り注ぐ雨の中、場違いなくらい真っ赤な液体……血だ。

一目でそれが死んでいることが分かった。


彼女はダランと腕を下ろした。そのまま僕はハンドバックを乱暴に取り上げ財布から現金を取り出すのを見た。

僕はハンドバックと財布を投げ捨て、そのまま走っていった。


……殺人犯。


僕はそう悟った。僕の行く先は病院だ。この道は間違いない。

歩道を走っていく、不運にも青信号にも関わらず軽自動車が突っ込んできた。

居眠り運転だった。僕は数メートル吹っ飛ばされた。そのまま僕は病院に運ばれた。


……ナイフを握り締めたまま。



そうか。僕は人を……殺した、のか……。



目を見開く、そこには鮮やかさに欠ける、真っ白な部屋があった。

どこかで見た光景、胸によぎらせる予感。不安になって僕は上体を起こそうとするが、突然、頭部に痛みが走る。

「……ッ!」

頭痛が、完全に起き上がろうとする僕を牽制する。

白い机の上にある、ペーパーナイフ。月夜に照らされ、銀に光る。

一瞬何故かは分からないが、全身から汗が吹き出るような感覚になった。

そこでコンコン、と扉を叩く。白の部屋に無限に響く。


「やあ、    さん、調子はどうですか?」


分からない、一体、彼がどういう存在なのか、ただ分かるのは彼が、医者である、と言う事。

……え?何で知ってるんだ?

疑問に思ってからすぐ、僕の推理はつながった。彼は白衣を着ていた。


「やれやれ、ま、この薬、飲んどいてください、いずれこの後遺症とも決着がつきますよ」


男がポケットから錠剤を取り出す。


「私は用事があるので」


そういうと彼は白衣をはためかせながら部屋を出る。「飲んでくださいね」彼は小さくそういった。

ぼうっとする中、錠剤が視界に入る。

――ああ、飲まなくっちゃ

薬を飲む、瞬間頭痛が走る。寝よう、僕は再び横になった。

するとどこからか、声が聞こえる。声から察するに、どうやら先ほどの医師のようだった。


「やれやれ、ほんとに    さんの容態、全く良くなりませんね」


するとそれにつられるかのように、どこかで聞いたことのあるような、女性の声が聞こえる。


「仕方がないですよ、やっと手に入れた金で妹を助けようとしたら、もう妹死んでたんですもんね」


血の気が引く、え?今なんていったんだ?


「ま、何にせよ。あのままでは裁判にならん、取り合えず、容態が回復するまでの間、アレを繰り返すしかありませんな」


もう、声は聞こえなかった。反射的に僕の両手はその耳をふさいでいたのだから。

がたがた震えてるうちに部屋に誰かが入ってきた。


「    さん、大丈夫ですか?」


優しい女の笑み。しかし恐怖のほうが強かった。

もう、全身の神経を集中させて、彼女を見ていた。鳥肌が立っていたのに、僕は気づかなかった。

そんな僕の手を優しく包み込んで、言う。


「そんなに力まなくていいのよ」

ずっと前に書いたもののリメイク版。

かなり描写に差が出来たけど、

嬉しいような……。

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