表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/45

7日目 ~ After ~

 Heisei 2112 - 8/21 (Sun) – 10:13 – fine


 白亜は、ベンチにあった紫色のウォークマンを見つけた。それは紫音が気に入っている曲を入れている、手の平サイズの機械。

 それを届ける為に、2人は公園を出た。しかし、紫音が何処に行くかなど、その2人は知らなかった。故に、知っていそうな人物がいる場所まで、走っていった。

 それは萩徒家。インターホンを押すと、すぐさま扉から少女が現れる。

「あ、彩芽ちゃん。紫音、いるかな?」

「? いえ。てっきり白亜さん達のところにいるものだとばかり思っていましたけど」

「10時ごろまでは一緒にいたけれど、ねぇ」

 白亜は、横に立っている茜が頷くのを確認した。「もしかしたら何処へ行ったのか手がかりがあるかもしれません。上がらせてもらってもいいですか?」

「はい、どうぞ」

 彩芽はにっこりと微笑んで、半分ほど開けていた扉を2人が通れるように開けた。ひんやりとした空気が一瞬だけ、白亜、茜の足元を通り過ぎる。

「それに、錬夏だったら何か知っているかもしれないし・・・・」

「「・・・・錬夏?」」

 声を揃えて、白亜と茜はその人物の名を聞いた。彩芽はまたニッコリと微笑んで答える。

「私の双子の兄ですよ」

 白亜達がこの家に来ることは珍しくなかったのだが、奇跡的に錬夏を見ることは無かった。偶然に偶然が重なった結果だったが、あの、久々の美術で見た紫音の絵に描かれていた少年を見て、白亜と茜は、思わず驚いてしまったのは、言うまでも無い。

「あれ? 白亜さんに茜さん? 初めまして、ですね。僕は写真を見せてもらったことがあるから、お2人の事は知っています。・・・・えっと、錬夏です」

「白亜です。で、茜です」

 と、今更感が僅かに漂う中、それは一旦、横に置いておくことになった。

「――僕も、兄さんが何処に行ったのかわかりませんね。てっきり白亜さん達のところにいるものだとばかり思っていましたけど」

 双子揃って、一字一句間違いの無い台詞。紫音とよく似た顔立ちである錬夏の顔を、茜と白亜はまじまじと見つめる。


『――先日青桐町で起こった事件についてです』


 それは、不意に聞こえてきたニュース。ニュースキャスターの冷静な声に、全員の目がテレビに向いた。まるで誰かに操られているかのように、一斉に。

 ・・・・それは、一週間前に起こった轢き逃げ事故のニュースだった。


『先週の日曜日、青桐町の商店街で轢き逃げ事故がありました。これまで警察が捜索しても見つからなかった犯人が、先程、午前10時13分に自首したとの事です』


 目の部分に黒い棒線が引かれた犯人の顔らしき写真と、その犯人の名前、そして年齢などが映し出され、やがて消える。


『なお、これまで警察と被害者の遺族の間でトラブルがったらしく、被害者の個人情報は公開されませんでしたが、つい先程公開されることが正式に決まったとの事です』


 そして、被害者の写真と、名前。年齢が。

 当然の如く、青い背景に、ハッキリと、そして残酷に、映し出されていた。

「・・・・え」

「あ・・・・っ?」

「・・・・・・・・!」

「うそ・・・・」



「おい、藤黄。ケーキのクリーム、飾ってくれ」

 若々しい、というのを通り越して、まだ高校生のようにも感じる声が、甘い香りの漂う厨房から響く。その声に答えるべく、藤黄は何らかの作業をしていた手を止め、顔を上げた。

「ん、分かったよ」

 藤黄は、休みの日はいつも親の店を手伝っている。『黄波町キナミチョウのジョーヌ』といえば、結構有名だ。というのは置いといて、とにかくその時、藤黄は探し物をしていた。

「あ、あった、あった♪」

 それは髪留めだった。その日はどうしても髪がはみ出てしまうらしく、仕方なく、母の髪留めを借りようと、テレビの横に置かれている鏡台に来ていた。

 青と黄色の、綺麗な細工が入った髪飾りだ。


『――なお、警察、被害者の遺族間で何かしらの障害があったらしく、被害者の情報公開が遅れていましたが、たった今、それは解消されたとの事です』


「へぇ。良かったねぇ」

 不意に聞こえてきたテレビのニュースキャスターの声。冷静に話す彼女の言葉に対し、へらへらと笑う自分が、三面鏡に3人映った。


『被害者は中学1年生。青桐町の住人で――』


「青桐町?!」

 藤黄の目線が、テレビの方へと向いた。


『被害者は―― 『萩徒 紫音』君 13歳です』


「――・・・・っ?!」

「おぉい、藤黄? ん、このニュースは・・・・あぁ、あの商店街で起こった事故の。何だ、藤黄。こんなグロイ事件に興味が・・・・って。おい・・・・・藤黄っ?!」

 藤黄は、体から力が抜けていくの行くのが、嫌と言うほどに、ハッキリと分かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ