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妖刀ですか!? 村正さん

作者: 嫁葉羽華流

この小説は「吼えろ聖剣! エクスカリバーさん! 〜僕は聖剣の担い手です〜」の二次創作です。過度な期待はされないようにお願いいたします。

なお、本家「吼えろ聖剣! エクスカリバーさん! 〜僕は聖剣の担い手です〜」の方をお読みしてから、こちらを読まれると、よりわかると思いますので、そちらを先にご覧下さい。

よろしいので? 覚悟はいいのですか? 本気ですか? 後悔したって知りませんよ?

では本編へどうぞ。

 ――小さいころ。私は正義の味方にあこがれていた。


 そんな一文から始まる小説があったような気がする。


『姫。今日もお疲れ様です』

「ああ」


 私は手にもつ刀を鞘に納め、声の主にこたえる。

 刀は鞘に収まった後に光を放ち、私の肩に乗る。

 そこには小さな小人がいた。

 大きさは5?ほどの小さなものだが、豪奢とはいえないが美しい着物を着た女の子だった。

 清楚ではあるが派手ではない、平安時代の着物を現代人のモデルに着せたようなものだと、はた目からはそう見えるだろう。


『今日も今日とて聖剣狩り、ですか』

「ああ。今日こそはと思ったんだけど……残念だよ」


 目の前には致命傷ではないにしろ、当身で気絶させた男子生徒が1人転がっていた。

 近くには私の肩に乗っているような妖精が苦しそうに呻いている。


「――安心しろ。命まではとらんさ。まだ戦争は始まってはいない。だが――」


 倒れている男子生徒の近くまで行って、私はささやいた。

 最低限声音を低くし、相手の目を射抜く。

 どこにでもいるような男子生徒は、哀れにもがくがくと体を震わせていた。

 もう戦う意思はないだろう。だがまたどこで戦おうとするかわからない。

 牙はさいごまで折っておかないと。


「戦争が始まった時、もしも再び剣をとって挑むとき。その時には貴様と、貴様をご主人と呼んでいるその剣を折る。――それが嫌なら、剣を二度と取るな。いつものように再び穏やかな生活に戻れ」


 乱暴に男子生徒をその場に転がさせ、私は家に帰った。


※――――


 「誰だ?」って聞きたそうな│表情かおをしてるので、自己紹介させてもらうと……。

 私は山内理子。いわゆる正義の味方を自称している。

 趣味はゲームやマンガ、アニメがそれに該当している。あと読書と心身の健康を整えるために我流で剣術を磨いていたりする。

 その名も幻魔示現流げんまじげんりゅう。戦場戦闘を想定した無敵の剣術だ。

 ……まぁ、自覚しているが厨二病をこじらせているかもしれない。

 頭の中で襲いくる悪人をばったばったと切り倒すとか、よくやることだ。

 だが誤解しないでほしい。

 いつも私がそんな風にしているのかというと、そうではない。

 いつもの私はひとり隅っこでいつものようにカバーつきの小説を読んでいるだけだ。

 あと、夜では髪を下して、メガネをコンタクトにしているが、それ以外では地味な三つ編みとメガネを着用している。

 こうしておけば夜襲ったのがまさか私だとは思われまい。


「佐々木ィ! こないだのパンツ大戦のゲームどうだったかぁ!?」


 佐々木。

 そう聞いたとき、私は胸が高鳴った。


――――さ、佐々木くんっ!? 佐々木くんって、あの佐々木くんだよね!?


 いつも以上に本を顔に近づけて気取られないようにそっと彼の方向を向く。

 佐々木武人。

 このクラスの中でもすさまじい運となんでか聖剣や魔剣をもっている人物を幾度となく撃退した人物。

 そして……私の意中の人でもある。

 私は彼に恋をしている。まぁ、きっかけは些細なことで一目ぼれだ。

 彼は先ほど話しかけてきた人物と嬉しそうに話している。

 流れるような髪が陽の光にあたってきらきらと輝く。

 そして楽しそうに笑う彼の顔。

 見ているだけでも幸せになる。


――ああ、いい。

――たまらなく、最高っ。

――あれを見ているだけでも、ご飯3杯は、軽くいける……っ!


 なんて恍惚に浸っていると、


「おい山内」

「ひぅっ!?」


 トリップしていると先生に言われた。


「もう授業始まってるぞー」

「あっ……」


 私はせっせと授業の準備をしていると、クラスのみんなから笑いが起きた。

 とうぜん、佐々木くんも笑っていたので問題はない。


※――――


「はぁ……今日も疲れたなぁ……」

『お疲れ様です。姫』

「村正ちゃん……」

『いやまぁ。今日も一日、気配を殺して見ていましたが……意外と姫は奥手なんですねぇ』

「うん……まぁね……」

『いやご自身でも認められるんですかソコ……』


 呆れられつつも村正ちゃんにツッコミを入れられて「はうっ」となる私。うう。そこまでのことかなぁ……?

 

「ただ遠くで好きな人が嬉しそうな顔してるとなんかご飯何杯でもいけない?」

『いや、それができるのは姫くらいかと……あと姫。近くに気配がします。数は……多数ですね』

「え?」

『あいや、すみません。囲まれてしまいました』

「あ、えっ?」


 きょろきょろと見回すと、そこには昨日ぶちのめした人を先頭に何人かがぞろぞろとやってきていた。


「おう……昨日の借りを返しに来たぜ……」

「えっと……誰でしたっけ? お名前」


 ひとまずここは挑発しておく。戦いで冷静さを失った人物は負けるという定石である。


「んなっ……てめぇ! この〝天下五刀”の俺様の名前を覚えてないのか!」


 ちょっときょろきょろと見回す。よし、この中に知り合いもクラスメイトもいない。


「……ええ。知らないわ」


 三つ編みを解いて、メガネをコンタクトに素早く変える。ここは村正の力を借りて素早く行った。

 あたかも人には変身して別人に見えることだろう。


「おう……へっへ。やっぱり昨日の女だな」

「……ブレザーが邪魔ね」


 上着を脱いで腰に巻きつける。荷物になるカバンは地面にどさり、と置いた。


「へっへへ……てめぇをこんどこそぶっ飛ばすぜ! 魔剣使いさんよぉ!! 村正なんてのは魔剣の代表格じゃねぇか! 倒されて当然ってなぁ! その点俺は天下に名だたる聖剣、天下五刀の大典太サマってもんだ!」

『……ご主人。名乗りをあげてる場合ではございませぬ。この者、闘気がこの間とは比べ物になりませぬぞ』

「わかってる。そのために今回は人を集めたんだろ?」


 近くにはずらりと並んだ不良。

 その数は大体……100人くらい?


「一人頭1万円……このくらいで雇われたのかしら?」

「ヴァーカっ! 一人1万5000円だよ!」

「あら。金で結局雇われたの。傭兵ってところ?」

「ぐっ……!」


 聖剣使いの中にも、こうやって本来の聖剣の持ち味を殺している人物がいる。

 人格的に問題のある人物が、聖剣、あるいは魔剣を持っていると、自己顕示欲などが肥大化するのだろうと私は考えた。


『姫。今はそんなことを考えている場合ではございませんよ。晩ご飯に間に合うように終わらさなければ』

「ええ。そうね村正。――手加減、できる?」


 『ふっ』と村正は刀に瞬時に変わり鼻で笑った。


『誰にものを言っておられるのですか姫。この村正。加減もなにも全てはあなたの心持ち次第でございます。もっとも、私が斬るのはただひとりの血族、徳川の血族のみです』

「……随分と徳川さんを毛嫌いしてるのね」

「ごちゃごちゃごちゃごちゃと! 余裕ぶってんじゃねーよ! こんのクソアマァァァァァァァァアアアアアア!!!」


 一人が金属バットを振りかぶって打ってくる。

 それが堰を切った合図なのか、ほかの人物がなだれ込むようにしてかかってきた。

 全員が私に向けて金属バットや角材、チェーンなどを振り下ろす。

 

「素晴らしいわね。こんなふうにして多勢で襲いかかるなんて。確かに数の上ではあなたたちが圧倒的に有利。この点では感動したとも言えるわ。おめでとう」


 ひとまずはここまで人を集めたというその相手に敬意を表する。

 ただそれだけはしておく。だが


「だが無意味よ」


 そう。

 幻魔示現流は戦場戦闘を想定した戦い。

 空想、想像でやってのけたのだから、あとはそれを――|現実にする(実現する)だけだ。


「幻魔示現流……特技! 昇竜閃しょうりゅうせん!!」


 昇竜閃……腰を深く落とし、相手の正中線を狙って、足、腰のバネを用いて斬りあげる。

 男性の場合であれば股間を叩き上げ、さらに全身を使うものだから周囲を吹き飛ばす!

 昇竜閃が決まり、私の体は少し周囲より高く上がる。これで数人ははね上げただろう。

 さて。彼らには悪いが少し病院で寝てもらう。


「幻魔示現流……連技! 断竜刃だんりゅうじん!!」


 断竜刃……昇竜閃の連続技(連技とする)からつなげられる下に向かって刃を水平にし、叩き下ろす剣技。

 その衝撃で風圧で何人かなぎ倒すが、確実に2,3人は体の4分の3地面に埋まる。

 だがまぁ、意識はない。

 打ち上げられてさらに地面に埋まっているのだ。生きている……とは思うが、まぁ病院送りにはなってもらう。

 だがまだ何人かいる。仕方ない。ここは新技を試すとしよう。


『姫、この間の新技を試すおつもりで? やめておいたほうが……』

「いえ……この場合はこれをやらざるを得ないわ」


 中下段に刀を構え、腰をひねる。

 刀の嵐が止んだところを狙って不良たちが飛びかかってくる。

 だが遅い。


「幻魔示現流……秘技! 風車かざぐるま!」


 風車……その場で腰を深く落とし、中下段に構えた刀をひねった体の勢いと共に振り抜き、その場で1回回転し、周囲の敵を薙ぎ払う。

 相手はほかの敵に巻き込まれてなぎ倒される。

 この程度ではまだくじけないだろう。故にこの間つくった必殺技をお見舞いすることにした。


「幻魔示現流……連技! 大風車だいかざぐるまァァァ!!」


 大風車……風車の連技。風車が1回転するだけだが、それに足の反動をつけ、5回回転する剣技。

 そこに生まれる風圧による刃を相手に叩き込むことで、さらに相手を吹き飛ばす。

 だがこの連技には欠点があった。それは……。


「め……目が回るぅ……」

『だから言わんこっちゃない! 回転技はあれほどやめておくようにと言ったじゃないですか!』


 呆れるような村正の声がする。

 でも一回やってみたいじゃない。かの時の勇者よろしく大回転斬り。


「今だ! 相手はひるんだぞ! いけー!!」


 「うぉおおおおおおおおおお!!」と声がすると共に大量の人物がのしかかってきた。ぐふ、重い。


「剣だ! 剣をとれ! 剣さえなければこいつはただの女だ!」

「くっ……!」


 相手にのしかかられて超絶なピンチ。だが私の心は最高にハイってやつになっている。

 おちつけ。冷静になれ。まだ慌てる時じゃない。

 こんなこともあろうかと新必殺技を用意していたのだ。


「幻魔示現流……新技! 心太抜きところてんぬき!!!」


 心太抜き……背中などに乗っかっている敵にやられそうになったとき、剣を杖にして立ち上がり、抜け出す新技。かのところてんのようにちゅるんと行くのだ。

 思うように心太抜きが作動して抜け出す。そして集まった奴らを昇竜閃でぶっ飛ばし、吹き飛ばなかった奴らは断竜刃で地面に埋める。


「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

「大分消耗してるようじゃねぇか……魔剣使い!」


 大典太を抜いた聖剣使いは私を前にして言った。

 まんまと術中にはまった、ということか。


『姫……くっ!』

「きゃっははははははは!! ざまーねぇなぁ!? ここまで体力を使っちまったのが、お前の運の尽きだよ! ヴァーーーーーーーカッ!!!」


 といって聖剣使いはそのまま抜き身で突っ込んできた。


「……村正……」

『……仕方が、ありませんね……』

「今更命乞いか!? 無駄だよ無駄無駄ァ! てめーはもうブッコロ決定だってーのぉぉおおおおお!!」


 私は村正を鞘に収めて、腰に佩くようにしてだらん、と構えた。


「……こんな低脳に使いたくなかった……私の奥義を……」

『……ああ、姫の悪い癖が始まった……』

「あぁ!? 何言ってんだ、テンメェエエエエエエエ!!」


 頭の悪い声があたりに響く。

 関係ない。相手はひとり。ならば一撃で決めればいいだけのこと。


「幻魔示現流……奥義」


 聖剣使いが振りかぶった。

 同時に私は左足で地面を踏み抜く。

 骨が少しきしんだ。

 だがもう……相手は私の術中にはまった。


「――――抜・帝龍刃ばつ・ていりゅうじん


 抜・帝龍刃……左足で踏み抜いた跳躍を活かして、倒れこむようにして相手に斬りかかる。

 相手が正面にいて、肉薄しており、さらに絶対的な隙……すなわち、相手が襲いかかる時・・・・・・・・・。その効果は絶大となる。まさしく、

 ――必殺の移動型居合術だ。


「う……おおおおおおおっ!?」


 相手も馬鹿ではなかった。流石に聖剣の使い手だった、と言うべきだろう。

 大典太の使い手は横に大きく吹っ飛んで遠くの地面に不時着した。

 ……そう。誰ひとりとして斬ってはいない。


「……村正。ありがとう」

『姫。私はお礼を言われる筋合いはございません。言うなれば私は私の信念を貫いたまでです』


 村正が叩いた相手からは、打撲からの血|(鼻血とかの出血)は流れているが、それ以外は無傷……誰も殺してはいない。


「まぁ、あの程度の頑丈さだったら、大丈夫だよね?」

『大丈夫でしょう。さぁ姫。家に帰りましょう。今日のご飯はなんですか?』

「ハンバーグだよ」

『わぁいハンバーグ! 村正ハンバーグだいすき!』

「あはは」


 笑いながら私たちはそこから去っていった。


※――――


 翌日。

 学校ではいろいろと噂がもちきりになっていた。

 なんでも佐々木くんにも聖剣がやってきたのだという。

 私と同じような刀とかだったら……話題もできるかな? でもその前に佐々木くんは契約していないようだったし……。


「村正……どうしよう」

『安心してください姫。私に考えがあります』

「えっ? どんなの?」

『簡単でございます。私と姫でかの佐々木殿の周りに近寄る、佐々木殿を狙う剣士を倒せばいいのです』

「あっ、そっかぁ! それはいい案だね!」

『ええ。徳川の血族がいれば、私も喉を潤せます』

「ぶっそうなこと言ってるとなっ●ゃんのいちご味買ってあげないよ?」

『わぁぁああん! なっちゃ●のいちご味買って買って買ってぇぇぇ!』


 そんなわけで。

 私は佐々木くんを守るために、日夜正義の味方として頑張ることにしたのだった。


※――――


 ちなみに。

 私が村正と契約した理由は、


「ねぇ村正。こんなの考えてみたんだけど!」

『どれどれ……ほう、いいじゃないですか。なんていうかこう、抜刀術を組み込みつつ全員をなぎ倒す的な……』


 私が考えた厨二病な技の数々を、私自身で再現してみたかったので、契約したのだった。

 魔剣だったとしても関係ない。なんか異端っぽくてかっこいいし。

 正義の味方は、そのついでであったが……佐々木くんを守るためにも、私は日々頑張らなくてはならない。


「よーしっ。佐々木くんを守るために、今日も頑張るよっ!」

『この村正。魔剣であってもお供いたします』


 そんなわけで。

 今日も私は正義の味方――もとい、佐々木くんを守るための正義の味方として、頑張っているのだ。

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