当
―――隣のパソコンから何やら爆破音が聴こえてきた。
「な…何やってんのよ」
「へっへーん、驚いたー?コレさ、俺のフォルダの保存音―」
「保存音にそんなマニアックなサウンド組み込む奴なんて、アンタくらいよ」
「そうかぁー?」
「そうよ、絶対そ……」
ヴォグワァアアアアアン!!!!!
ビクッ!
「すまそ。オレっすわ」
軽く左手を立てて、平謝りをしたのは2個前の机に座っていた、1個上の先輩である、七尾新菜先輩だった。
「な…七尾センパイィィィ!脅かさないで下さいよ!‼」
「いっや―悪い悪い。なんとなくリア充に腹が立って♡」
「り…リア充!?とんでもないです!!私のどこがリア充なんですか!?」
「ソコ」
「はい??」
「顔がリア充」
「顔…ですか?」
「そそそ。モモちゃんとloveってたじゃん」
「ら…ラブゥゥゥ!!?」
「そそそ」
「あ、あたしが?」
「んー」
「百木と?」
「それしかないじゃん。お似合いってもんよー」
「ないないない」
あるはずがない。
好き要素ゼロパー。
「ね、吏桜ちんはぶっちゃけど~思ってんの?」
声をひそめる先輩。
「は?」
声なんかひそめる必要もないのに。
「……モモちゃんのこと」
どう思ってるのかって?
「いっやあーそんな質問初めてなんで、どう反応したらいいか」
「んじゃあ、モモちゃんのこと、気になってる?」
「……そりゃあ」
何より、隣に座って仕事をしない男子のせいで、早くもギブアップ。
あたしの言わんことを察したのか、噂の張本人が起きだした。
「だってよぉ…仕方ねーだろ!俺が不器用なのはオマエだって知ってのことだろうが」
「そこは空気をよんで黙って仕事をするべきよ」
「ふーん。俺にしちゃあ、お前の方がよっぽどうるせぇと思うけど」
「だってそれは!」
「おやおやおやー?ラブってるじゃないですかぁ~?」
「に…っ、新菜先輩!何言ってんですかっ!!」
「ひゅーひゅーう」
「マジでいらつくからやめろ、シンちゃん」
「はいよー」
シンちゃん…先輩に向かって、その物言いはなんだとお思いの方もいらっしゃると思いますが、この2人、実はバスケ部の同じチームメイト。
しかも百木によれば、新菜先輩にテクニックを教えたのは自分だとか。その言葉をどこまで信じればいいものか、迷うところだが…新菜先輩がそうだという限りは信じることにしよう。
「そういやぁさあ、モモちゃん」
新菜先輩が椅子をくるくる回転させながら言う。
「ぁんだぁ?」
「今度の土日、合宿あったじゃん?それ、オレ行かんわw」
「えっ、どうしてだよ!エースが抜けりゃあ流石に…」
「だぁーいじょーぶだって!!モモがいるじゃないかよっ!」
「おっ……おい!正気か!?」
「うん。なんなら、そこにいる吏桜ちんと一緒に…へヴぁあ!!?」
「シンちゃん。地雷踏むなよなー。コイツとなんか、絶対いかねぇ」
そんな嫌わなくても…
ま、すすんで仲良くする気にもならないけど。
「…シンちゃんがいかねぇなら、俺も行かねぇ」
「なんでさ、ずっと楽しみにしていたろう?行ってこいよ」
「やだね。俺はシンちゃんがいたから行くって言っただけだ」
「なんでオレ基準なんだよ笑」
「だって俺……こう見えて結構男バスに喋れるやついなくて。話はするんだけれども、なんかこう…話がかみ合わないっていうか」
そりゃあそうでしょうとも。
あなたが言っていることはあまりにも派生しすぎて原型をとどめておりません。