夢、花見る
……病室。
時を同じくして、白いワンピースに身を包んだ少女は、すでに冷えた己の肉体を眺めていた。少女の"からだ"はベッドの縁を貫通し、真っ白な床に透けた足をつけている。
少女_______花夢は、死んだのだ。
先の見える半透明な手では、その動かない身体には触れられない。それだけではない、「これも、触れられないのではないか」と思って手を付けたものすべてが、腕を飲み込んですり抜けた。肉体から離れ、魂のみの存在となる……花夢は、生まれて初めての体験を不思議そうに体験していた。
……もっとも、魂は輪廻の度に記憶をすべて消しているのだが。
魂が人の形をしているのは?それは、魂が意思という概念のもとにあるからである。魂自身が「私は人間だ」と認識しているなら、魂も人の形をとる。以前、魂は本来空間四次元の存在であると話したことを覚えているだろうか。空間三次元の障壁は、四次元の存在を完全に妨げることは出来ない。つまり、今少女は重力に従って"立っている"が、「空中に浮く」と認識すれば浮遊できるし、「床を貫通する」と認識すれば障壁を無視して下に降りることだってできる。意思の存在というのは、そういうものなのだ。
「……ねえ、誰か、わたしに話してるの?」
少女が、文章の違和感に気づいた。お見事、ならば姿を現そう。
「藤永、花夢。アナタを迎えに来た。」
黒いマントを翻し、闇から姿を見せたのは、死神。ご丁寧に、命を刈り取るような形の大鎌も携えている。その姿を視認した瞬間、花夢は目を輝かせて彼の者の手をとってブンブンと振った。
「すごいすごい!死神さんってほんとにいるんだ!」
「……」
「なんだかユズと似たような雰囲気を感じる!なんでなの?」
ものすごい質問責めに遭ったので、黒い死神はひとまず花夢を落ち着かせて、ゆっくりと話し始めた。
「……私は、キルファー。"黒"の死神として、アナタのような物理界に留まる魂を彼の世___冥界へと連れて行く仕事をしている」
「へぇ~……え、死神さんっていっぱいいるの?」
「そうだ。どうせこの小説が最初に書いたものだろうから説明するが、我々死神は役割ごとに4つの色に振り分けられる。魂を導く"黒"、魂を刈る"赫"、魂を裁く"白"、そして他色の支援をする"蒼"だ。」
「冥界ってところに行ったら、わたしもその白の死神さんに裁かれるの?」
「行くとしたら、だ。」
キルファーは言葉を含ませると、鎌で空を切り裂いてワームホールを作り出した。
「久しぶりに使ったな、こんなモノ」
「それって、どういう……?」
「……ああ、言っていなかったな。アナタがかつて恋したソイツは"白"の死神で、アナタは魂のイレギュラーだ。つまり……」
準備を整えたキルファーは、徐に花夢の前で跪き、手袋を外して蒼白な手を差し出した。
「アナタは『神の貴賓』なのです、カノン様」
次回、舞台は別の超次元へ!衝撃に備えろ!




