8.戦場を断つ赤
時刻は遡り、開戦1時間前、セイルら一部の傭兵団と全ての冒険者は軍の招集を受け、北門前の味方砲撃陣地の横に集められた。
総勢で632名、聖都に現在残っていた。冒険者と冒険者ギルド所属の傭兵を掻き集めたことになる。その者達は最早主流となりつつある銃を持たず、剣や槍のみを持っていた。
そして、その時代遅れの集団の前に置かれた壇上の上に、軍服姿の男が立っている。男は辺りを見回し、人の動きが静まっていることを確認すると、その場の全員に届くように、大きく声を上げた。
「傾注!」
その言葉に、一斉に全員視線が壇上の男に集まった。
「戦時規定に基づき、貴様ら予備戦力
には、これより兵として戦線維持に
従事してもらう!
尚、軍及び、政府から貴様らに
銃を渡すことは許可出来ない!
通常業務通り、民間用魔術、剣、槍
弓、クロスボウ等で武装して当たれ
それ以外は認められない! 」
その言葉に、不満を述べる者が一人、二人と出始めた。
「銃無しだと!?死ねと言うのか!?」
「もう戦争は変わっている!
我々の様な古い集団を使って
何になる!? 」
「帰らせてくれ!」
その不満を圧し潰す様に、
壇上の男は声を荒げた。
「黙れ!」
「そもそも!正規兵ですら優先度の低
い兵は銃は渡されず剣や槍で戦って
いるのだ!貴様ら予備戦力に貴重な
物資を割く訳には行かない、銃弾一
発を作るのにも、金と魔力がいる、
そもそも、貴様ら予備戦力に始めか
ら期待などはしていない! 」
「第一!銃を扱えるようになるにも
それ相応の訓練がいる!だが、
貴様らに割く時間も、開戦までの
時間も無い! 」
「なら!何の為に!?」
集団の先頭、丁度男の目の前にいた男は壇上へ向かって問う、
「………決まっている、死ぬ為だ。
貴様ら予備戦力が死ぬ分、正規兵の
損害が減る。それだけの為だ。 」
「クソったれ!」「やってられるか!」
その言葉に我慢ならず、男が二人、門へと向かって駆け出した。
だが、集団を取り囲んでいた軍服の者達に呆気なく取り押さえられる。
「クソっ!」「離しやがれ!」
「暴れるな!」
「おい、貴重な捨て駒だ…
怪我の無いように… 」
そう、男達を取り押さえている軍人に表情無く語りかけると、壇上の男は集団に視線を戻し、言い放つ、
「これより!門へ向かう者、集団から
離れようとする者は敵前逃亡者と見
做され、問答無用で処罰される!
場合によればその場での銃殺も、
この場にいる兵は許可されている!
以上だ… 」
そう言い終えて、壇上を下るその男へ言葉を吐きつける者はいなかった。だが、その男への視線は、男が野戦テントに入り、見えなくなるまで途切れる事は無かった。
その一部始終を見ていた軍人が一人、新兵である彼もまた、ただ押し黙って、壇上の男が消えていくのを見つめていた。
そして、完全に男が見えなくなった後、隣にいた自身の上官へと問いかけた。
「………上官方に人の心は
お有りでしょうか? 」
「無いだろうな、当たり前だ。
人の心など戦場に置いてきた、 」
表情一つ、声色一つ崩さずにそう返す男に、新兵は声を荒げてまた一言問う、
「何故っ!」
「何故も無い、それを大事にした者は、
その、人の心とやらを
抱えて死んだのだからな、」
そう、即答したその男の声は、僅かに揺らいでいた。それを感じ取った新兵は、それ以上追及することはしなかった。
「...........」
冒険者
主に冒険者ギルドへ所属する者達であり魔物退治の専門家、冒険者ならば通常の魔物を相手取るに銃など必要無いそれ程までに、彼らの身体能力は凄まじい、
冒険者は、古くからある職業であり、元々は町の雑用から魔物退治、魔物個体数の調査等を生業にする者達であった。時代が進み、何時しか、魔物退治の専門家として扱われるようになり、戦時では騎士と肩を並べて戦う、誇り高き者達であった。だが現在では、その突出した武力は軍、政治家、そしてかつての戦友である貴族すらも疎み、冷遇されている。
騎士は消え、軍に取って代わられ始め、剣は銃へと置き換えられ始めた戦場に
最早彼等の居場所等、存在しない
時は戻り、開戦後 最前線
現在、銃が主流と成りつつある戦場に置いて、それでも兵士達は剣を腰に携えている。銃と剣が混在する今の戦場に銃だけなら兎も角、剣だけを持つ彼等の存在感は、かなり強かった。
冒険者、と呼ばれる集団の強さ理由にその圧倒的な動体視力と身体能力がある。これら能力は体内魔力を完璧にコントロールすることで出来る身体強化によって可能としているものであり、この身体強化に必要な条件として魔力量と魔力操作能力に長けている必要がある。故に冒険者はこれら才能がある者だけがなれると言えよう、この、魔力量、魔力操作に長けている、と言う才能は本来魔法師となる可能性のある者が持つ才能であり、年を追うごとに持つ者が減っている才能でもある。そんな可能性を秘めた天才達が間違った努力をし続けた結果が、この、冒険者であり、結論から言えば、これら能力を狂気的なまでに高めようと鍛錬を続ける冒険者は異常者の集まりである。
そして、彼等冒険者は訓練された兵と違い、言ってしまえば突出した武力を持った一般人、その上、義理堅く、英雄的思想を持っている。それが軍は気に入らない、合理的、理性的では無く、個人の感情によって動く「不安定な力]を」それを良く思わないのは当然である。
それ故に軍人は冒険者を冷遇していた。
では、その
異常者達は今どうしているか?
簡潔に言えば
地獄の中で、すり潰されていた。
現在時刻 15:47
魔力が焼けた匂い、甲高い音を鳴らしながら発射される弾丸、それでも彼等は抗い続けていた。
塹壕内の混戦の最中、
一発の弾丸が一人の男の元に飛んでくる。その半透明で緑色に光るそれが男の間合いに入った瞬間、男は反射で手に握られた剣を振り上げた。
剣と接触した弾丸は剣を僅かに削りながら、弾かれ、砕け、魔力の粒子となり霧散していった。それによる火花と金属音が連続して三度起こる。
魔物はそれに度肝を抜かれて一瞬手を止めるが空かさず接近してくるその男の顔面目掛けて超近距離から撃ち込んだ、が、それを見越してか男は小さく、それでいて分厚く防郭を展開する、それによりその弾丸は防郭に僅かに食い込んだだけで男に届くことはなかった。男は間髪入れずに剣を振るい、その魔物の毛むくじゃらの首を刈り取った、刈り取られた魔物の首はそれが地面へと堕ちるまで男を見続けていた。その瞳には恐怖でも憎しみでもなく、ただひたすらの畏怖だけが写されていた。
「クソっ!多いな、」
「目で見るな!
探知内に入ったら反射で落とせ!」
冒険者の武力にはムラがあり、弱い者はうずくまり何も出来ずにいた。それでもかなりの少数ではあるが銃弾を落とすことが出来るほどに強い少数の者が、自身より弱い多数の者を庇いながら、地獄の中で耐えていた。
その中に一人、顔に傷のある青年がいた
セイルである、その青年は銃弾を落とすことは出来なかったが、それでも必死に喰らいついていた。
「くっ!」
避け切れず弾丸が耳を掠める、僅かに耳が削がれ耳から血が流れ始めた。それに顔をしかめながらもそれをした目の前の敵に一本踏み込み腹へと一太刀を浴びせた筋肉質で体毛が濃いためかなりの抵抗があったが、腹を割られた敵は膝から崩れ落ち、静かに倒れ込んだ。
どうにかその一体は倒せたが、まだ敵が多くいる、それなのに耳鳴りが止まず、弾丸が掠めた傷口からは血が出続けて、痛みが絶えない、意識が纏まらない、疲労が溜まっているのか足がもたついてしまう
「おい!セイル大丈夫か!?」
傭兵団の仲間達がセイルをカバーし、
そこは何とか切り抜けることが出来た。
セイルがいたグループは周辺にいる魔物の首を荒方刈り尽くし、
どうにか一息を付いた。
「クソっ!何でこっちが掘った、
塹壕が敵に利用されてんだよ! 」
「しょうが無いだろ、転移で防衛線
内側に入られたんだ、 」
「敵さんはそれも見越してここに転移
したなら、俺等なんかより、ずっと
頭が良いよ… 」
この会話の最中にも頭上には、緑の線が行き交い、頭を出すことなど憚られる。
暫くはここで待機することになると思い束の間の休息をと腰掛けた。
周りには、魔物の落とした銃を拾い、使おうか思案している者や、もう実際に使い始めている者がいた。それを傍観しながら自身の傷口に処置をする。
そんなセイルの隣に腰掛けたのはセイルと同じ傭兵団のノア・ガルシアであった彼はそのまま息を付くとセイルに向かって言った。
「お前は暫くここで休め、
次の押し上げは俺等だけで大丈夫だ」
「まだ行けます!」
セイルはそう答えるが、
「左耳、 聞こえて無いだろ?」
「…………」
そう不調を見透かされ、押し黙ることしか出来ないセイルにノアは言った。
「大丈夫だ、まだ死なねえよ」
そう言い、頭の上が少し静かになったことを確認すると、次の塹壕内へと走って行った。
悲鳴が、銃声が、砲声が煩い、鉄臭い、焦げ臭い、口の中の砂利が気持ち悪い、汗で張り付いた服のせいで動き辛い、
そして、死体と血溜まりばかりが見える
五感から訴えかけられる情報全てに、
気分が悪くなる。
一人で、静けさとは程遠いこの場所にいるのに、全てが気になって仕方が無い、
帰りたい、
不安だ。
昔より強くなった、そう、思っていた
でも、今の彼は座り込んで何も出来ない弱虫以外の何物でもなかった。
今現在も心の中で弱さがただひたすらに蠢いていて仕方がない、
「一人でいることがここまで怖いと
思ったことは、今まで無かったな、 」
そう、ポツリと出した声が頭の中で木霊する、それが余りにも煩く、鬱陶しく思い始めたその時、大きな爆発音がその声を上書きし、掻き消した。
「うわぁ゛ぁぁぁ!!」
悲鳴と連続する爆発音その他全てが混ざって聞こえる。何があったと立ち上がり塹壕の上に、頭の先を出すと、その爆音の答えを突きつけられる。
「砲撃だ…」
そう呟いた瞬間、耳鳴りがやみ始めた左耳に聞きこえる風切り音、
頭上を見ると、落下してくる複数の砲弾が見える。
「しまっ!」
その言葉すらも着弾した砲弾の爆音は
掻き消してしまった。
時刻 16:20
時はまた遡る
聖王国軍、砲撃陣地前
先程の砲撃を最後に、前線へと火力が回されている為か、此方への砲撃は無くなっていた。その為、今限りではあるが、ここは戦場にて唯一安全な場所と言えるそんな場所で、レイは自分の役割を果たすべく着々と準備を進めていた。
「おしっ!出来たぞ!」
そう言うレクトの言葉に自分の左足を見ると、今までに無い珍妙な形となっていた。通常通りに一本の足があり、足を折り畳む様な形もう一本、膝先のみのパーツがある、つまりは合計で二本の膝先から足先部分のパーツが付いていることになる。
一つはいつも通り動くが、もう一つは何の反応もなく、また、太腿の裏に付いていることもあって少し動き辛い
「何だ、これは?」
と、不満そうな声を上げるレイに、レクトは真面目な顔で
「スペアだ、」
と言った、レクトは説明を続ける。
「太腿に付いてるのは帰り用の分、
切り離した後、直に付け替えられる
様に改造した。
急ごしらえつぅってんで、少し、
不格好だが、まあ許せ、 」
「後は…良し!術式も弄ったぞ、」
全ての準備が整った様で、レイは歩き始めた、それをレクトが呼び止める
「おい!」
「帰って来いよ…」
珍しく神妙な顔をしたレクトに
「ああ、付けが残ってるからな、」
そう返して、レイは戦場の方へと真っ直ぐに向いた。首元の受信機に声が響く
[あ〜、あ〜聞こえてるか?]
「ああ、聞こえてる」
[俺がオペレーターを担当する
ブライトだ、あー…えーと? ]
「レイで良い」
[分かった、レイ、準備は?]
「出来てる。」
[よしっ、なら始めてくれ]
左足へ魔力を送る
[魔力圧力確認…式を…]
その言葉に答え、短く、はっきりと
「Left Leg On, Speed-SHIFT」
と言った。
次の瞬間、魔力が左足内部で渦巻いた。
大量の魔力を昇圧しなければ動かせない程の力を必要とするその術式に、魔力が満ち、左足の感覚がより鮮明になる。
[…確認した。…………]
[現在16:23、この時刻を持って…]
[作戦を開始する。]
その言葉を聞いた刹那、地面が足形に割れ細かな瓦礫が舞い、その瓦礫と、爆音すら置き去りに赤い残像だけを残しレイはその場から消えた
最前線
どうにか防郭の展開が間に合った。この砲弾は榴弾設定であったが為に難を逃れた形になる。
黒い煙に咳き込みながら、
「えほっ!くそっ!塹壕で良かった…」
だが、次を耐えられる訳がない、
不味い、離れなければ、だが、次の瞬間視界が揺らぎ身体が動かない、
何だ?そう自問するセイルは直に思い当たる、酸欠だ。
歩兵用の榴弾設定にである「炎の炸薬」の恐ろしい点は、着弾周囲の魔力と酸素を奪い、燃焼の為に必要な条件を揃える点である。炎は瞬間激しく燃え上がり後は小さな炎が少し残り、暫くすればそれも直に消える、だが、その一瞬の内に周囲の酸素奪う、防郭で難を逃れても敵の動きはそれで止まり、動けない敵を次の弾が止めをさす。
セイルは塹壕と言う狭い空間に伏せていたこともあり、酸欠となり、意識が朦朧とし始めていた。
どうにか塹壕の崩れた場所から少しずつ這い出るが、それでもまだ距離は足りない、酸素が少しずつ戻り、視界が幾らかマシになりつつあるセイルは聞いた。遠くでなる砲声を、もう駄目だ、と覚悟した瞬間である。その砲弾は幾ら待ってもそこに着弾することはなかった。
「…………?」
何故かは分からないが命を拾った。そう思った瞬間、確かに見えた、着弾する砲弾の中を、駆ける赤い残像が、その残像は戦場を分つように、真っ直ぐと、飛んでいった。
「レイ、なのか?」
そう口に出した。セイルが何故そう思ったのか、ロイズの話を覚えていたからか、はたまた感か、その両方か、そのどれであったとしても、そのセイルの虚空への問いは奇しくも正しいものだった。
敵陣地後方砲撃陣地、ゴブリン魔術師隊
その緑色の肌の者達は、ひたすらに、砲撃を続けていた。
元々のゴブリンは小柄で非力だが、頭は良かったため人の道具を扱うことに長けていた。そんな魔物の中でも高い知能を持つ種族の知能が魔王の存在により更に高くなったのが今この戦場にいるゴブリン達である。どの個体であってもある程度の知能を持ち、尚且つ数が多いため後方にて安定した魔術行使を行うのにゴブリンは適していた。
彼等はせかせかと只管に魔術行使を進めていた、その中で観測手をしている個体が声を上げる。
「高濃度の魔力反応を確認、
敵砲撃陣地カラだ! 」
「砲撃でハ無い!
直ちニ迎撃しロ! 」
その観測手の指示にゴブリン達は一斉にその矛先をその接近準備中の存在に向け始めた。
[敵砲火が狙ってる!防御を! ]
「分かってる!」
レイはそう返すと、小さく呟いた
「Left Arm On,………Aegis.」
その言葉と共に、レイを包み込む様に半透明、紫色で五角錐の形状の防壁が展開された。
この、Aegisは魔力そのものを物質への変換を通さずに強固な盾とするものである。
通常、魔力は人間の脳と感応する以外で、他の物質に物理的影響を及ぼす方法としては魔力そのものの性質を弄るか、化学物質と魔力を混合する必要がある、化学物質との混合により、魔力は、その物質と同様か近い性質を持つ化学物質擬きと変化する。
これら物質は魔力性化学物質と呼ばれており、これらは物理的干渉が可能、それらを術式により操作し、様々な事象を再現することを可能としているのが魔術である。
では性質変化の場合は?、この場合より様々なことが行えるが効率が悪くなっており、それでも人がこの方式をとるのは、既存の物質の限界を超えた挙動を魔力は行えるからである。この盾も後者、性質変化によりこの防御を実現している、性質は上限のない圧縮、それは限界を超えた濃度へと魔力へと変える。
通常、この状態にまで到達した魔力は不安定の為、制御が不可能、しかしレイはこの術式を物理的に自身の手足の延長線上として扱える為に制限付きであるがこの防壁を張ることが出来る。
超高濃度魔力物理物質の壁、これは汎ゆる物理的接触を完璧に遮断する、その為、神の盾の名を冠して『Aegis』と
称されている。
Aegis展開から役0.5秒、レイを狙った砲弾が次々と着弾した。
「対魔法師用の砲弾!」
砲撃術式は対象によって様々な設定を可能としており、この砲弾は対魔法師用である対人誘導砲弾である、これは魔力探知と千里眼の併用にによる半自動の精密砲撃であり、戦場に置いて最も恐れらている魔法師を長距離から無力化する為に人類が開発した砲弾、今回レイに向けられているのはその術式の完全なコピーである。この術式はここまで連射するものではない、理由としては燃費が凄まじく悪い、魔力的なコストが高いが為にこの様な使い方を本来しないのである。だが今回敵の狙いは正にその魔力の枯渇、故に湯水の如く魔力を浪費し砲撃を行い続けていた。
前線の最も砲撃の弾幕が厚い部分を抜ければ安全であると鷹を括っていたレイはこの砲撃に驚愕した、そして彼は元帥が聞かせてきた前線からの通信を思い出し思った。魔力のリソースを一切気にしない砲撃がここまで恐ろしいとは、と、そしてそれは確実にレイへと牙を剥いた
魔力収束誘爆反応、これは周囲の魔力を一気に取り込み、そしてそれを発散、拡散させ爆発を起こす言わば魔術師殺しの砲撃、それらが精密に誘導されレイの付近にて炸裂する。それをAegisにてどういう防ぎながらも活動限界域までの秒数は刻一刻と過ぎていった。
[到達まで残り十秒!]
ブライトのその声が耳元で響く、それが聞こえた瞬間に、Aegisの展開角度を広げ、空気抵抗がかかるように変更したそれにより一気に減速を始める、その急制動に砲弾は一瞬置いていかれるも次には既に修整されたものが飛んでくる、爆炎に巻かれ、それでも止まらずに真っ直ぐと突き進み続ける
[5、4、3…]
そのカウントに合わせて、Aegisを解除する。先程まで左腕へと通っていた魔力を右足へと移す、
「Right Leg On, Attack-SHIFT」
そう呟いた次の瞬間、思い切り右足を踏み込みブレーキをかけた、右足は魔力圧力一気に解放しながら地面へと突き刺さると岩と土と鋼が絶え間なく打つかる音をさせ火花を散らしながらすり減っていき、つま先、踵、脛、と、どんどんと短く成りながらも右足を犠牲に減速していく。そして、まだ減速仕切らないまま右足を支えに左足を振りかぶると、大きく虚空を蹴った。
ギリギリと鈍い金属音をさせながら限界に達した接続部が甲高い金属音と共に破損、そのまま風切り音をさせながら切り離されたひしゃげた左足は真っ直ぐに砲撃陣地へと向かっていった。
敵砲撃陣地
「高濃度魔力反応、分裂大きイ方が
コチラに向かっていル! 」
「小銃によル迎撃を! 」
ゴブリンらはレイの左足を撃ち落とそうと躍起になっていた、だが、最早もう迎撃不可能距離、発砲された弾丸は掠ることすらせずにその砲弾と化した左足は砲撃陣地内へと着弾した。
「マズっ!」
その言葉が僅かに響いたその瞬間、紫色の閃光と共に凄まじい爆発が起こった。それは砲撃陣地内の魔力へと反応すると誘爆、本来安定状態に入った魔力を不安定化させるには凄まじい量のエネルギーが必要であるが、それをレイの左足は満たしていた。
その閃光から約0.2秒数、一瞬の無音の後に紫色の炎の爆炎が砲撃陣地全てを吹き飛ばし巨大なキノコ雲を上げた、その圧倒的な破壊の様は戦場だけでなくあらゆる場所から見えていた。
敵に絶望を与えたその者の背中には爆風によって激しく煽られた赤いマントが、ただバタバタとはためいていた。




