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転生軍師リリスとノルの魔獣戦記(最弱ハンター、二度の覚醒を経て最強へと至る)  作者: たぬころまんじゅう


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黒焔騎士団の団長1

「クっ、いったい、どうなってる…どこにこんな力が!?」




満身の力を込めて受け止めたが、馬がもたなかった。馬の前脚が浮かび上がり、今度は踏ん張りが効かなくなったゼルの身体が馬ごと吹き飛ばされ、木に叩きつけられる。




「ゼルさまっ!」




「ゼルさまを守れっ!」




残った数人の兵士たちがゼルの元に駆け付ける姿を見たログが叫ぶ。




「ふたりとも今の内だ!奥へ!」




三人は不帰の森の奥——黒焔騎士団のアジトへ向かって、全力で駆けだした。




「ぐっ……!まだ、終わると思うな……!」




背後で、ゼルの怒号と蹄の音が響く。だが、不帰の森の魔獣の気配が帝国兵を怯ませた。不帰の森は、敵でもあり味方でもある。ノルは走りながら、血塗られた手を握りしめる。




殺した。




人間を。




エレナの仇を討つため、リリスを守るためだ。でも……この感覚は、消えない。






やがて、視界が開けた。巨大な岩壁に、隠し扉。ログが拳をリズミカルに岩に叩きつけると、扉が軋みながら開く。何かの暗号なのだろう。




「着いたぜ。黒焔騎士団の本拠だ」




中に入ると、予想外に広大だった。天井は高く、天然の鍾乳石が松明に照らされている。中央に巨大な空洞があり、壁には無数の通路が蜿蜒えんえんと続き、奥では鍛冶の音が響いていた。




「すごいな…秘密基地みたいだ」




ログが胸を張る。




「なっ、すげぇだろ?ここが黒焔要塞!なんつってな。昔の遺跡を団長たちが発見して再利用してるんだ。今は少人数だが、設計上は200人が収容できることになってるんだわ」




焚火が灯り、数人の男女がこちらを見ていた。




「ログ、おかえり」




「カレン姐さん、ただいま!」




剣を腰に提げた長身の女性が、ノルとリリスを見て興味深げに歩み寄って来る。赤銅色の髪が、左右に揺れている。




「その子たちは?」




「へへん、遂に見つけたぜ!異能者だよ」




「へぇー、この子たち二人ともかい?」




カレンの問いにリリスが進み出る。




「いえ、私じゃなくて彼です」




カレンはノルから視線を下げ、リリスを見ながらクスリと笑った。




「その歳で随分しっかりした応対じゃないか、シーツのお嬢さん」




「あ、いえ、これは……」




リリスは頰を赤らめ、慌ててノルの後ろに隠れる。シーツの裾をぎゅっと握りしめた。




「なるほど、じゃあ彼が異能者ってわけだ。ところで、彼らがここに入って来たってことは、どういうことかわかってるってことだよね?」




「え?あ、いっけね。そういや説明するの忘れてた」




「ったく、あんたはいつもどっか抜けてるんだから」




ログが頭を掻く。カレンがため息をつき、奥へ視線をやった。




「団長、来てますよ」




焚火の向こうから、カツンカツンと足音が響く。白いマントを羽織った女性が現れた。栗色の髪に、青い瞳。腰の剣には、黒い鞘に炎の彫刻が刻まれている。




「ログ、また抜けてるわね」




スカーレットは苦笑し、ノルとリリスに向き直る。




「私はスカーレット・ヴァレリア。この騎士団の団長よ。副団長のガルムは今、仕事で不在だけど、後で紹介するわ」




「ノル・スタークです」




「リリス・ローゼンです。よろしく」




ノルが少し緊張した面持ちで短剣を握り締めながら自己紹介する傍らで、シーツの裾を押さえながらリリスも挨拶した。




スカーレットは静かに頷き、焚火の炎を見つめながら口を開いた。




「まず、どうしてここへ辿り着いたのか。詳しく教えてもらえるかしら?」




ノルは俯き、掠れた声で語り始めた。エレナの笑顔が、血に染まる光景が、焼け落ちるカシルの街が目に浮かぶ。この凝縮された二日間で、余りにも多くのものを失ってしまった。言葉を選びながら、でも隠さず、すべてを吐き出す。リリスは横で補足し、自分の「転生」の部分だけを巧みに避けつつ、リト村の惨状を淡々と報告した。




二人の話が進むにつれ、スカーレットの表情が変わっていく。眉が寄り、唇が引き結ばれ、赤い瞳に悲しみと怒りが交互に灯る。最後まで一言も挟まず、ただ真剣に聞き続けた。話が終わり、洞窟内に重い沈黙が漂う。




スカーレットはゆっくりと息を吐き、まるで自分の中の何かを鎮めるように目を閉じた。




「……二人とも、本当に辛かったわね」




彼女はノルを見据え、静かに続けた。




「特にノル。あなたにとって酷なことをこれから言うけど、知っておかなくちゃいけない」




ノルはごくりと唾を飲み、手を握りしめた。




「……はい」




スカーレットは一度だけ深く息を吸い、覚悟を決めたように、ゆっくりと口を開いた。




「あなたは異能を発現させた。一昔前の帝国なら、その力を活かして軍や官吏として立派に働けたはずよ。


 けれど――」




スカーレットは小さく息を吐いた。




「今の皇帝、ルドール・ヴァルドリックが即位してから、すべてが変わった」




その名が出た瞬間、リリスの横顔が凍りつく。ノルはそれを、ちらりと横目で捉えた。指先がわずかに震えている。スカーレットは、気付いているのか気付いていないのか、淡々と続けた。

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