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転生軍師リリスとノルの魔獣戦記(最弱ハンター、二度の覚醒を経て最強へと至る)  作者: たぬころまんじゅう


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人の枷

——不帰の森。


エルドリア州と、グリムワルド州に跨る広大な大森林。魔獣の巣窟として恐れられ、付近の住民すら近寄らない禁忌の領域だ。そんな場所に、人々が暮らす隠れ里があるとは……。


重なり合う木の葉が陽の光を遮るように枝を伸ばし、風が吹くたびに光が揺れる。しばらく歩きながら互いに自己紹介を終えると、道中、ログは小声で語り始めた。


「カシルの街に帝国兵どもがいただろ。俺が聞いた情報ではカシルの地下に、鉱脈が眠ってるそうだ。何の鉱脈かは知らねえが、帝国が目をつけたのは確かだ」


「鉱脈……」


リリスが感じていた違和感の正体だった。魔獣討伐もしなくなった帝国が、なぜ、突然辺境の地に帝国兵を派遣したのか。住民を強制的に移住させるため…?いや、そんな理由なら街を焼いたり住民を殺したりする理由は無い。それなら…、ログに尋ねようとリリスが顔を上げた時、ノルが先に反応していた。


「もしかして……帝国にとっては住民が邪魔で、別の場所に街を作って移住させたがっていたってこと?」


「それなら全然良かったさ。だけど、街を作るのに数年はかかるし、金も莫大にかかる。ケチった帝国は、エルドリア領主に丸投げしたんだ。だけど、領主にだって金はない。そこで出た代替案が――」


ログは吐き捨てるように言った。


「魔獣の襲撃に見せかけて、住民を皆殺しにするってことだ。帝国は喜んで乗ったよ。檻に入れた魔獣を解き放ち、街を焼き払ったんだ」


ノルの拳が震え、リリスは唇を噛んだ。


「エルドリア領主に、帝国……民は、ただの家畜扱いなの?」


森の空気が、重く淀む。突然、茂みが激しく揺れた。


「やはりガキだな。痕跡を残し過ぎだ」


ゼル・ボーマンが馬を止め、冷笑する。黒い外套の裲裆が風に揺らめき、背後の部下たちが剣を抜いた。


全部で十数騎。馬の嘶きが森に響く。ログが舌打ちした。


「ちくしょう、嗅ぎつけられたか」


ノルはリリスを背に庇い、短剣を握る。こうなれば、戦うしかない。


「ログ、俺が――」


「任せろ。俺だって異能者だ」


ログの目が鋭く光った。筋肉が膨張し、地面を蹴る。戦闘系における異能発現者のほとんどは、身体強化だ。だが、その速さと力は、常人の域を遥かに超える。ゼルが馬を駆けさせる。


「小僧ども、まとめて始末してやる!」


ゼルの長剣が弧を描いた。ログは強化された脚で跳躍し、剣撃をかわす。拳が兵の兜を砕き、馬から引きずり下ろす。


ノルはリリスを木陰に押しやり、彼女に教えられたことを思い出しながら小さく呟いた。


「血鬼解放」


刻印が青白く燃え始める。赤黒いオーラが全身を包み込んでいく。帝国兵の一人が馬を飛ばし、槍を突き出す。


ノルは地面を蹴り、槍の穂先に短剣を合わせた。接触と同時に弾く。金属と金属が衝突し、火花を散らす。帝国兵の槍は、短剣から伝わる衝撃で穂先が打ち上げられて大きくしなった。反動で兵を馬から引きずり下ろし、喉元に刃を突き立てる。血が噴き出し、兵の瞳が、驚愕に染まった。


「ぐっ……あ……」


体が痙攣し、地面に崩れ落ちる。人だ。魔獣じゃない。人間を……人を、殺した。ノルの手が震える。短剣から滴る血が、地面に赤い花を咲かせる。


吐き気が喉を這い上がった。


俺は……人を……。


「ノル!集中して!」


リリスの声が、耳を打つ。横合いから、もう一人の兵が剣を振り下ろした。ノルは反射的に身を翻し、短剣を兵の胸に突き刺す。


「が、はっ……!」


兵が血を吐き、倒れる。温かい血がノルの手に飛び散った。また……殺した。


ログが叫ぶ。


「ノル、生き残るためだ!今はそれだけを考えろ!」


ログは強化された拳で兵を薙ぎ払う。ノルは馬上で指示を出す指揮官らしき男に向かって、飛び込みざまに斬り上げた。ゼルはノルの短剣に合わせて受ける。凄まじい衝撃が少年の短剣を通じてビリビリと伝わって来る。


このガキ、なんて膂力だ!斬り上げ、薙ぎ、突き、持ち手を変えて着地するまでにさらに三連撃を叩きこむ。最後はゼルが渾身で振り抜き、ノルを吹き飛ばした。衝突した衝撃で大木がへし折られ、衝撃音が森の中を駆け抜ける。樹上に居た鳥たちが、一斉に飛び立った。


「ノル!!」


悲鳴にも似たリリスの叫びに応えるように、大木にめり込んだノルの手がピクリと反応した。衝撃によって裂かれた皮膚が、急速に修復されていくのを感じる。ダメージが、修復されてく‥‥‥?飛びかけた意識下で、ノルは、自らの異能の力の一端を感じていた。と、同時に、体力が急速に消費されていく。


「まだ動くか、しぶといな…とどめを刺してやる」


ゼルが剣を横に構えたまま突進した。


「ノル!!」


リリスが思わず叫ぶと、呼応するかのようにノルの身体から赤黒いオーラが放出される。


「うおおおおおおおっ!」


めり込んだ身体を、ノルは、大木から一気に引き剥がした。バキバキと音を立てながら、木の破片がノルの身体から落ちていく。握り直した短剣に赤黒いオーラが集束され螺旋状に小さな渦を巻き始めると、ノルはそれをゼルに向かって一気に解き放った。赤黒い衝撃波がゼルの視界に広がっていく。ゼルは剣を上段に構え衝撃波に向かって振り下ろした。衝撃波と接触した瞬間、ギャリギャリと金属が削れるような音を立てながらゼルの剣は火花を散らす。

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