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転生軍師リリスとノルの魔獣戦記(最弱ハンター、二度の覚醒を経て最強へと至る)  作者: たぬころまんじゅう


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少年と少女5

「私が目覚めた村も、似たような状況だった」


「え…?」


リリスは唇を噛み、視線を伏せた。


「ごめんなさい。混乱してて…うまく話せなくて」


ノルは目を見開き、肩を落とした。


「リリスがいた場所から一番近いのは——リトの村だ。……そうか。あそこも……」



さらに街中を進むと、通り沿いに住民たちの遺体が重なるようにして倒れていた。魔獣から逃げようとしたのだろう。思わず目を背けたくなるような凄惨な光景だ。何かが起こってるのは間違いなかった。街のメインストリートに近い場所には、エレナとよく行ってた酒場がある。その酒場も既に焼け跡になっていたが、ノルとリリスは血まみれの老ハンターを見つけ出した。


「大丈夫ですか?」


ノルが駆け寄ると、壁にもたれ、腹を裂かれた男は、息も絶え絶えに呟いた。


「……黒いマントの……野郎が……檻を……開けやがって……」


言葉を残すと、首ががくりと落ちる。血の泡が石畳に広がっていく。リリスはその光景を見て拳を握りしめた。


十二年。


私が消えた十二年の間に、帝国はここまで腐ったのか。吐き気を催すほどの嫌悪が胸を焦がす。


ノルは俯いたまま、唇を噛んでいる。ノルは両親を魔獣に襲われて失った。当日、幼いノルは熱を出して寝込んでいた。父親がたまたま隣町に仕事で行く用事のついでに、母親はノルを隣の家に預けて薬を買いに父親と出かけたのだ。その日、両親は帰って来なかった。


それ以来ノルは隣の家の家族——エレナと一緒に家族同様に育てられた。そのエレナもいない。もう誰もいない……。


――誰も。


二人が焼け崩れた広場へ出ると、背後から軽薄な声が降ってきた。


「あれぇ?おかしいなぁ。まだ生きてる人間がいるなんて。報告と違うじゃないか」


振り返ると、黒マントの裾を翻した男が、帝国軍の階級章を胸に、薄笑いを浮かべている。その背後から、バラバラと兵士たちが現れ、瞬く間に二人を囲んだ。


「おい、こいつらも始末しといてよ」


ノルはリリスを背に庇い、短剣を抜く。刻印が疼く。今なら戦えるはずだ。だが、リリスの小さな手がノルの袖を掴んだ。


「ノル、逃げよう」


「え?俺、今なら――」


「あなたの異能を彼らに見せちゃダメ」


「でも…」


「ずっと、考えてた。帝国は、もう私が知ってる国じゃない。…何か、嫌な予感がする。お願い、ノル」


一瞬、ノルはリリスの瞳を覗き「わかった」と短く答えた。歯を食いしばり、リリスを横抱きに抱える。次の瞬間、地面を蹴った。足に力を込め、ノルの体が矢のように疾走する。


クラウスは目を細め、舌打ちした。あの速さ……まさか、異能者か?頭をよぎるのは、軍上層部から出た指令——異能者は見つけ次第、抹殺。


「逃がすわけないだろ。追え、ぼさっとするな!」


兵士たちが慌てて馬を走らせるが、ノルの足は風を切る。勝手知ったる街中の隘路を利用し、抜けながら瓦礫を飛び越え、森への坂道を駆け下り、木々の間を縫うように消えていく。


「何やってんだよ!?役立たずどもが!」


彼は額に青筋を立て、副官を睨んだ。


「ゼル!お前が直接追え!生けどりとかはしなくていいぞ、死体を持ってこい!」


副官ゼル・ボーマンは無言で頷き、黒い外套を翻して馬を飛ばした。部下十数騎が、蹄の音を轟かせて森へ突入する。



——森の中。ゼルたちの馬が枝を薙ぎ払い、進む。突然、横合いから黒い影が襲いかかった。牙を剥き、唸りを上げて馬上の兵に飛びかかる。


「だ、ダークウルフだ!」


慌てふためく兵士たちを尻目にゼルは突進する。


「邪魔だ」


ゼルは馬上で身を翻し、腰の長剣を一閃する。白い軌跡が空を切り、ダークウルフの巨体が真っ二つに裂けた。血しぶきが木の幹を染め、断末魔の咆哮が森に響く。ゼルは冷たく吐き捨てた。


「魔獣ごときが」


部下たちが息を呑む。


「さ、さすが副官殿、一撃で……」


ゼルは剣を鞘に戻し、馬を走らせる。


「追うぞ。奴らはまだ近いはずだ」


さらに奥。ノルはリリスを抱えたまま、息を殺して木陰に身を潜めていた。馬の嘶きが近づいてくる。このままじゃ、もうすぐ見つかってしまう。どうする?ノルが判断に迷っていたそのとき、背後から小さな声が聞こえてきた。


「おい。おまえら、追われてんだろ?」


振り返ると、煤けた少年が立っていた。歳はノルと同じくらいだろうか。額に傷跡、腰に剣を差している。


「どうして、それを……?」


「シーっ」


少年は人差し指を唇に当て、ニヤリと笑う。


「俺はログ。黒焔騎士団の一員だ。助けてやるから、俺が飛び出したら向こうに逃げろ」


「どうして——」


「どうして、助けてくれるんだ、なんて野暮なことを聞くなよ?困ってる奴がいたら助ける、それでいいじゃねぇか?これ、ガルムさんの受け売りだけどな?」


「…ありがとう」


ログはニカっと笑って頷くと、木陰から飛び出し、ゼルたちの正面に立った。


「おーい、おまえら!どっち見てんだよ?」


ゼルの馬が急停止する。


「小僧が。生かして帰すな、斬れ!」


だが、ログは舌を出して森の奥へ走り出す。ゼルたちは馬を旋回させ、少年を追って反対方向へ駆け去っていく。


今だ!ノルはリリスを抱えたまま木々を蹴り、逆方向へ疾走した。背後で馬の嘶きが遠ざかっていく。ログの指差した方向へ、息を潜めて進んだ。木々が密集する道は獣道すらなく、根っこや岩を踏み越えるたび、足音が湿った土に吸い込まれる。やがて、背後から軽やかな足音が聞こえてきた。


先ほどの少年——ログが息を弾ませて追いついた。


「よお、追っ手は撒いたぜ」


「さっきは助かったよ。ありがとう」


「なに、困ったときはお互いさまってな!気にすんな。おまえら、行き先も無いんだろ?」


ノルは沈痛な面持ちでログの言葉に頷く。このたった一日二日で、何もかも失ってしまった。


「それに、おまえ異能者だよな?」


「どうしてわかるの?」


「やっぱり!その歳でその身のこなし、よっぽどの訓練でも受けてない限りはな。俺について来いよ。黒焔騎士団のアジトへ案内してやる」


「その、黒焔騎士団というのは……?」


リリスがノルの腕の中で眉を寄せると、ログはニヤリと笑った。


「帝国のはぐれ者と異能者の寄り集まりさ。アジトはエルドリア州の西『不帰の森』ってな」


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