ハーブ大作戦
ダグはでっかい麻袋を肩に担いで、子供たちを追い抜きながらドヤ顔。
「俺はもう10袋目だぞ!おまえら、俺を見習って——」
子供たちを振り返りながら、自慢げにパンパンになった袋を指で差す。だが、足元から注意が逸れたおかげで、根っこに躓いて積んであったハーブの山に顔面から突っ込んだ。
「うわっ、くっせぇ!……って、これタイムか!?目がシミる!!」
顔面真っ青で這い上がるダグ。目を擦りながら、鼻を押さえて悶絶している。
「ダグ兄ちゃん、タイムは香りが強いから別の袋にしろって言われたじゃん!」
「知るかよ、ここに積んだの俺じゃねーし!!」
アジト周辺では子供たちの元気な声が響く。
「ほら、そこの赤い実のやつは毒だからダメだぞー!」
「こっちの白い花は香りがいいやつ!」
「ルーニャお姉ちゃん、それ食べたらお腹壊すやつー!」
「俺が一番だーー!!」
「テットくん、また鼻水垂れてる!!ハーブがしょっぱくなるからやめてー!!」
「うるせー!!これぞ俺の必殺、ハーブ塩味だ!!」
そして、木の隅に子供たちが集まる。
「うわっ、このハーブ虫ついてる!!」
「虫!?どこどこ!?」
「ここここ!……って、あれ?動いた!動いた!!」
「きゃーーーー!!」
「逃げろーーー!!」
虫一匹で子供たちが総崩れ。転がりながら逃げる子、籠を盾にして戦う子、泣きながら走る子。
そして極めつけは……。
「ノル兄ちゃん見て!!私、ハーブで冠作った!!」
「俺はハーブでひげ!!」
「私はハーブでドレス!!」
「みんな緑の妖精みたいだね!!」
ノルが苦笑いで振り向くと、そこには全身ハーブまみれの子供軍団が。
「もう……ハーブ摘むより、完全に遊んでる方が忙しいじゃん……」
そして、圧巻はスカーレットだ。
「よし……いくわよ」
彼女が両手を広げると、森全体のハーブがざぁぁぁっと音を立てて浮き上がった。まるで緑の嵐。葉っぱが、茎が、花が、根っこごと、数百、数千束が一度に宙を舞う。
「うわぁぁぁぁ!!」
「団長すげぇぇぇ!!」
「草むしりの神だー!」
子供たちが目を輝かせて大歓声する。スカーレットは苦笑いしながら、浮遊するハーブの山をぐいぐいとアジト方向へ移動させていく。地下倉庫の入り口では、すでに麻袋が300袋以上並んでいた。
「はい次、次ー!袋いっぱいにして縛ってー!」
リリスが指揮棒代わりに枝を持って指示を飛ばす。
「ミナちゃん、それ詰めすぎ!袋が破れちゃうよ」
「テットくん、鼻水でハーブが湿っちゃうから拭いて!」
「もう一個袋ちょうだいー!」
子供たちは汗だくで走り回り、袋にハーブを詰めては縛り、縛っては積み上げる。
「あと50で400袋だよー!」
「もう手がハーブ臭くてヤバいー!」
「でも楽しいー!!」
倉庫の中は、すでに生ハーブの山で足の踏み場もない。
「これ……本当に全部売れるのかな……?」
カレンが、呆然と袋の山を眺めながら呟く。
「売れるわよ」
スカーレットが笑った。
「だって、不帰の森のハーブだもの。香りも効能も、他じゃ絶対真似できないわ」
「まあ、それもそっか……」
夕方、ハーブの香りが地下アジト全体を包んでいた。食堂の厨房では、今日摘みまくったハーブが山のように積まれている。
「よーし!今日はハーブ祭りね!!」
カレンが腕まくりして宣言。鍋の前に立つのは、珍しくノルとリリス。
「俺、スープ作るから!」
「私はハーブパンを焼くね」
子供たちがテーブルに鈴なり。
「ハーブパン!?食べたーい!!」
「スープ!スープも!!」
ノルが巨大な鍋に、摘みたてのローズマリーとタイムをドサドサと投入する。
「ねぇ……ちょっと、入れすぎじゃない?」
カレンが横目で心配そうに見る。
「大丈夫です!森の香りをたっぷり味わってもらいます!」
言いながら、火にかける。たちまち厨房が、まるで森の中にいるような香りに包まれていった。
「うわっ、すごい良い香り!!」
リリスは生地に刻んだミントとラベンダーを混ぜ込む。
「甘いハーブパンにしてみたよ。子供たち喜ぶかな?」
イグニスの炉を活用したオーブンから出てきたパンは、表面がこんがり、中からふわっとミントの香りが立ち上る。
「美味しそうだね!」
ノルが頷きながら、焼き立てパンを覗き込む。目が合うと、リリスも嬉しそうに微笑んだ。いつの間にか、後ろでその姿を見ていた子供たちが一斉に飛びついた。
「できたー!!」
「すごいいい香りー!!」
「美味しそう!!」
ノルのスープも完成。森の香りが凝縮された、黄金色のスープ。
「はい、みんな並んで!」
子供たちがスープ皿を両手で持って大行列。
「ノル兄ちゃんスープ美味しい!!」
「毎日これ飲みたい!!」
ガルムが一口飲んで、目を見開く。
「……おい、これマジでうまいぞ」
ダグもゴクゴク飲み干す。
「ノル、おまえ料理の才能あるんじゃないか……?」
カレンはハーブで作ったサラダをドーンとテーブルに置く。
「はいデザート代わりにハーブサラダ!ドレッシングもハーブ入り!」
子供たちが「えー!?草ー!?」と口々に騒ぐが、一口食べる。
「……うまい」
「草なのにうまい!!」
「もっと食べてみる!!」
その夜、テーブルに並んだハーブ料理を囲んで、アジトは森の香りと笑い声でいっぱいだった。
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