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転生軍師リリスとノルの魔獣戦記(最弱ハンター、二度の覚醒を経て最強へと至る)  作者: たぬころまんじゅう


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廃鉱山の死闘

横穴、縦穴、どこからともなく現れるワーム。避け、避け、避けながら、二人は何度も剣を叩き込むが、ことごとく跳ね返される。次の瞬間。ワームが体を丸め、高速回転を始めた。巨大な黒いドリルと化し、轟音と共に突っ込んでくる。


「ノル、タイミングを合わせるぞ!」


「了解!」


「うおおおおおおっ!!」


二人の剣が、完全に同期して振り下ろされる。


ガギィィィィィィィン!!


回転が一瞬だけ鈍る。そこへ、ガルムの右拳が炸裂した。


ドゴオオオオオオッ!!


衝撃でワームの体が横に跳ね、壁に激突。しかし、同時にパキンとノルの剣が、根元から真っ二つに折れた。ヒビが限界を超え、刃が粉々に砕け散る。


「……っ!」


ノルが呆然と折れた剣先と柄を交互に見つめる。その隙に、ログが動いた。ワームの胴体に開いた小さな孔――黄緑の煙が漏れている場所へ、剣を突き立てる。ズブリと剣先がワームの体内に沈んだ。明確な手応え。


だが、次の瞬間。ブシュアアアアアアアア!と孔から強酸の液体が噴射し、ログの剣先が一瞬で溶けた。


「え、嘘ぉぉ!?」


酸の煙が勢いよく尻から口へ向かって流れていく。


「……まずい!」


ガルムのナックルが、反射的にワームの頭を横薙ぎに叩く。殴られた衝撃で向きを変えられたワームの巨大な口がぱっくり開き、喉の奥が緑色に膨らむ。


「……!」


ドバアアアアアアアアアアアアア!!


大量の強酸性の緑液が、滝のように吐き出される。坑道の床が一瞬で溶け、岩が泡立ち、激しく白い煙が立ち込めた。


だが、その一連の流れをガルムは見ていた。口が膨らむ瞬間、喉の奥にぶら下がる緑色の袋がぴくぴくと震えていた。この袋から強酸液が出るのは間違いない。だが、奴自身は何故溶けない‥‥‥?考えるガルムの視界に手から滴り落ちるワームの粘液が入った。粘液が滴り落ちた地面だけは全く溶けていない。


「……そうか!」


目を見開く。


「口の中は、この粘液で守られてるんだ!ということは……、酸を溜めてる袋を潰せば、奴の体内で逆流する!」


ガルムの口角が上がる。ワームが再び体を捻り、頭を振り上げた。


「ノル!こっちに来い!ここでじっと立て!」


「え!?」


ガルムは巨体でワームの頭を鷲掴み、強引に下へ引き寄せた。グバァッ!とワームの口が無理やり開かれ、ノルの頭の上に透明な粘液がドロドロと垂れ落ちる。


「うわああああっ!?な、何するんですか!?」


「黙って立ってろ!それがお前を守る鎧になる!」


「よ、鎧!?」


粘液がノルの肩、腕、髪までをびっしょりと覆っていく。確かに、肌に触れても熱くも痛くもない。


「カレン!ノルに剣を貸してやれ!」


カレンは呆然としながらも、自分の剣を抜いて投げた。ノルの剣は折れ、ログの剣は溶けている。二人とも、既に武器を失っていた。


「ノル、最後のチャンスだ、それを使え!」


ノルは、粘液まみれになったカレンの剣を、落とさないようにしっかりと掴む。


「よし!口の中だ!緑の袋をぶった斬れ!」


ガルムの両腕がワームの上下の顎を鷲掴み、力任せにこじ開ける。


グバアアアアアッ!!


口が全開に開かれ、強酸の飛沫が飛び散るが、床に落ちた粘液がそれを中和して煙を上げる。


「今だ、行けえええええっ!!」


ノルは一歩踏み込み、一直線に口内へ飛び込んだ。


ズバァァァァァッ!!


肉を裂く音が響く。緑の袋が真っ二つに裂かれ、中から強酸がドロドロと溢れ出した。飛沫がノルの体にかかるが、粘液のおかげで皮膚は焼けない。切断面から強酸がとめどなく逆流し、ワームの体内を焼き尽くしていった。


「ぐおおおおおおおおおおおっ!!」


ワームが絶叫のような振動を上げ、全身を痙攣させた。ノルは剣を体内に突き立て、勢いよく外へ跳び出す。次の瞬間。


ドパァァァァァァァァァァァン!!


身体が膨らんだワームの胴体が内側から爆発した。黒い外殻が吹き飛び、肉片と酸液が坑道中に飛び散る。最後まで残った頭部に向かって、ガルムの拳が振り下ろされた。


頭部が粉々に砕け散り、巨大な死体がズウンと床に崩れ落ちた。酸の煙がゆっくりと晴れていく。


「……やった、のか?」


ログが、溶けかけた剣の柄を握りしめたまま呟く。ガルムは巨体を縮め、元の姿に戻ると、大きく息を吐いた。


「ああ……終わった」


カレンが、震える声で言った。


「……もう、虫系はいやぁ……」


坑道の奥で、崩れた肉塊がまだぴくぴくと痙攣していた。


酸の煙が薄れていく中、ノルは全身粘液まみれで立ち尽くしていた。頭のてっぺんから足の先まで、ドロドロの透明な液体でべっとりと濡れ、異臭を放っている。


「……はぁ、最悪……」


ゲンナリした声で呟くと、ガルムがノルの肩をべちゃべちゃと叩いた。


「……悪くなかったぞ、ノル」


ガルムが笑いながら称える。ノルは完全に引きつった苦笑いで粘液を振り落としながら、崩れたワームの死体に近づいた。肉片と外殻の山の中、何かが黒く光っている。


「……あれ?」


屈んでそれを抱え上げる。両手でなんとか抱えることが出来るほどの、漆黒の結晶だった。表面は鏡のように滑らかで、ランプの火を浴びると、深い紫の光がゆらゆらと揺れている。


「これって……」


ガルムが目を見開いた。


「……おい、まさか」


結晶を覗き込んで、息を呑む。


「クロム結晶だ……!デカい!こんなデカいのは俺も初めて見るな!」


「なんだ、鉄鉱石じゃねぇのかよ……」


ログが疲れ果てた声で愚痴ると、ガルムは首を激しく振った。


「バカヤロウ、こいつは鉄なんかより百倍は価値があるもんだぞ!」


ガルムは興奮を抑えきれず、結晶をノルの手からそっと奪い取って見上げる。


「硬度と粘りが鉄とは比べ物にならねぇ。折れにくく、錆びにも強い。お前らの新しい武器の材料には、これ以上ねぇってくらいピッタリだ」


「……つまり?」


ノルが訊くと、ガルムはにやりと笑った。


「どういう原理か知らんが、こいつが鉄を食い続けて、長年の間に体の中で精製したんだろうよ。ワームが宝の山を抱えて死んだってわけだな」


その後、四人は残りの坑道を隅から隅まで探した。だが結局、鉄鉱石はどこにも残っていなかった。壁にあった鉱脈は綺麗に削り取られ、床に落ちていた欠片すら、ワームの胃袋に消えていた。


「……全部、食われちまったか」


ガルムが苦笑いする。


「まあいい。こいつひとつで、新しい武器は十分揃えられるってもんだ」


ノルは折れた剣の柄を見つめ、静かに頷いた。


「……新しい剣、か」


粘液がぽたぽたと床に落ちる。クロム結晶は、闇の中で静かに光を放っていた。


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