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転生軍師リリスとノルの魔獣戦記(最弱ハンター、二度の覚醒を経て最強へと至る)  作者: たぬころまんじゅう


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鳥籠の雛

——鉄の鳥籠、地下実験室。




松明の火が、血の臭いと悲鳴を赤く照らす。両手を天井に向け、切れかかった縄を操り必死に繋ごうとする少女——レミ・ハーシェルがいた。縄は、天井から吊るされた鉄の板を支えている。




檻の中では、伯父がうずくまり、頭上には縄で支えられている無数の鉄の棘。




「ほらほら、レミちゃん♪もっと太く、もっと頑張らないと、伯父さんの頭がぐちゃぐちゃになっちゃうよ~?」




施設長ドレンの甘ったるい声。手にしたナイフが、レミの繕う縄を少しずつ削っていく。縄が切れかかるたび、檻が軋み、棘が伯父の頭に近づく。




「やめて……お願い……!」




レミの指先から汗が滲み、必死に縄を修復する。だが限界は近かった。ドレンが最後にナイフを振り下ろす。『ぱちん』という音と共に檻が落下。




無情にも棘が伯父の頭を貫き、血と脳漿が飛び散る。レミは絶叫し、床に崩れ落ちた。




ドレンは舌打ちしながら、記録板に書き込む。




「……完全に切ってしまうと急速な修復は不可能、か。兵器転用は無理でも、せめて足止め用くらいには……。教団の担当者を言いくるめて、せいぜい高く売りつけるとするか」




ドレンは書き終わると、レミを一瞥して視線を移す。




「さて、次は双子ちゃんの番だねぇ~」




隣の部屋。レーニャとルーニャ・コロン、双子の少女が仕切られた部屋に鎖で繋がれ、向き合って座らされている。レーニャの前に、鞭を持った兵士。




「始めようか♪」




鞭がレーニャの身体に振り下ろされる。




「きゃあああ!!」




レーニャの絶叫と同時に、ルーニャが頭を抱えて悶絶する。




「レーニャが……痛い……!!やめて……やめてぇ……!!」




レーニャが痛みを感じるたび、ルーニャは同じ悲鳴を上げる。




「妹に、酷いことしないで……! お願い……!」




ドレンは額の汗を拭いながら、独り言のように呟いた。




「双子同士の念話……これも微妙だけど、精神干渉系の実験材料とかなんとか適当に言って売り込めれば……」




ドレンは独り言ちながら、小さく溜め息をついた。




「他のガキどもに異能は無かったし、今回は全部弱い異能ばっかりだ……教団の担当者に顔を立ててもらわなきゃ、金にならんな……」




そのとき、重い扉が開いた。銀のフルプレートの大男を伴い、黒ローブの教会担当者が姿を現した。ドレンの顔がぱっと明るくなる。




「おやおや、早いお着きで!ちょうどテストが終わったところでして!」




担当者は無言で近づき、レミの縄の残骸、双子の傷、崩れ落ちた檻と伯父の死体を冷たく見下ろした。ドレンが必死に売り込む。




「糸の子は足止めや拘束に使えます!双子は精神干渉系として実験の――」




「データを見せてください」




ドレンから記録を受け取ると、しばらく読んでいた担当官は投げ捨てるようにしてドレンに記録を突き返した。




「話になりませんね」




「で、ですが、まだまだ使い道は——」




「私もこう見えて忙しいのです。失礼」




「そう、ですか……」




ドレンの粘りも虚しく、一言で、交渉は終わってしまった。ドレンの目が、逆恨みで血走り、兵に命じる。




「おい、こいつらは用済みだ。全員始末しろ」




兵士たちが剣を抜く。レミが震えながら顔を上げた瞬間、正門の方角で、警報の鐘がカンカンと響いた。ドレンが振り返り、教団の担当者も立ち止まる。




「いったい、何だ!?」




地下階段の上から、兵士の叫び声に続いて剣戟を交わす音が響いてきた。






時は少し遡る。




黒焔騎士団の五人は、闇に紛れて鉄の鳥籠へと迫る。西側の断崖絶壁は、月光に冷たく照らされていた。スカーレットが断崖の下で片手を掲げる。二本の“ロープ”が宙に浮かび上がり、闇を走った。かぎ状になってるロープの先端が、施設の鉄柵にかかる。ガチリ、と金属音が鳴った。




「行くわよ」




スカーレットが先に登り始める。次にノルがロープを掴んだ。その背には、小さなリリスがしがみついている。




「しっかり掴まっててよ、リリス!」




「……うん。落ちたら死ぬから、落ちないようにする」




「……!?また転生されても困るよ…?」




聞いてるスカーレットが思わず苦笑いする。




「あなたたちの会話って、いつもそんな感じなの?」




ノルも苦笑しながら、懸命に登る。冷たい風が頬を打った。眼下は、底の見えない闇。やがて三人は崖を登り切り施設の正面——東側の動きを待った。





吊り橋の手前、ゴツゴツとした岩陰に身を潜めたダグが、背中から弓を手に取る。月明かりに浮かぶ監視塔の兵士は、欠伸をしていた。ここから見ると兵士の姿は豆粒よりも小さい。さらに谷から吹き上げる風が難易度を跳ね上げていた。




「かなりの遠さね…。風も強いし…つり橋渡っとく?」




カレンの提案にダグは小さく笑って首を振る。




「カレンの姉貴、見くびってもらったら困る。ここで万が一見つかったら、敵に余裕が出来て対応する時間を与えちまう。それだと困るのは団長たちだ」




「それもそうね。じゃあ、頼んだよ。弓士さん」




ダグは頷くと、弓を構えた。構えながら風読みの異能を発動。ダグの視界には、風の軌道が視覚となって見えている。谷から吹き上げる風。上空には強い追い風。さらに集中を深める。風の軌道に加えて、矢の軌道がダグの視覚にぼんやりと浮かび上がった。もちろん、これは異能ではない。ダグのイメージに過ぎないが、幼いころから手にしてる弓の技術を風読みの異能に乗せることで、常人には不可能な、超精密射撃を可能にしたのだ。




ギリギリと弓を引き絞り、角度を微調整していく。風の流れを読みながらタイミングを待っていた。風の動きが変わるのを待ちながら、ふと昔のことが脳裏をよぎる。

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