試作
厳しい意見大歓迎です
第一章 引っ越しの日
段ボールを抱えながら、ため息が漏れる。
僕――秋津佳は、狭い玄関を何往復もして、無理やり荷物を積み上げていた。
「……お兄ちゃん、そんなに詰めたら崩れちゃうよ」
後ろから声をかけてきたのは、妹の稔だ。
肩まで伸ばした黒髪を揺らしながら、両手に軽い荷物を持ってこちらを見ている。
僕がぶつぶつ文句を言うのを見透かしたように、少し困った笑みを浮かべていた。
「別にいいだろ。これが最後なんだから」
「最後だからって……そういうのはちゃんとしないと。お母さんにまた怒られるよ?」
言い返されて、返す言葉が詰まる。
確かに僕は雑だったし、何より母さんの小言が頭に浮かんで気まずくなる。
こういう時の稔は妙に落ち着いていて、僕よりも年上なんじゃないかと思うことさえある。
今日から、この家は三人家族じゃなくなる。
僕と稔と母さんだけの暮らしは終わりを迎え、新しい人間が三人加わる。
再婚、というやつだ。母さんは笑って「家族が増えるのよ」なんて言ったけれど、僕にとってはどうにも実感が湧かない。
玄関の方から声が聞こえた。
「佳くん、これ運んでくれるか?」
振り返れば、新しい義父、霜月弥生さんが大きな家具を抱えて立っていた。
その後ろには、二人の女の子が続いている。下の子は段ボールを抱えようとして弥生さんに制され、上の子は少し距離を取って無表情のまま玄関を覗いていた。
僕と稔は思わず視線を交わす。
今日から、この人たちが家族になるのか――そう思うと、心の奥でざわつくものがあった。