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ポーション作り

ゴリゴリゴリ……

ゴリゴリゴリ……

ゴリゴリゴリ……。

………。


「……ふぅ、ちょっと休憩。」


薬草を擂り潰す作業をいったん止めて、ミャアは大きく伸びをする。


今ミャアがやっているのはポーションの作成だった。


ポーションの作成には「調合」のスキルが必要になる。

しかし、調合のスキルで出来るのは「劣化ポーション」と「ノーマルポーション」だけ。

それ以上の効果のあるポーションを作成するには「錬金術」のスキルが必要になる。


金策に悩みながら鉱石を掘っていたミャアに「調合持っているならポーション作れば?」と教えてくれたのは、いつかの土下座クラフターだった。


彼が言うには、現在の紛争のおかげでポーション類の供給が追い付いてなく、作れば作っただけ売れるというのだ。しかも、通常時に倍の値段で。


それを聞いたミャアは早速ポーションの作成に取り掛かった。


街を出て、「採集」スキルで薬草を集め、それを使って「調合」スキルでポーションを作る。

最初は、採集を終える度に街へ戻って「調合」をしていたのだが、今では「携帯調合セット」を買って、採集した現地で、こうやってポーション作りをしている。


お陰で、現在ミャアの目の前には100本を超えるポーションの瓶が小山を作っていた。


「そろそろ売りに行かないとね。」

ミャアはそう言って、作りかけのポーションを作成し終えると、ポーションの瓶を収納へとしまい込んで行く。


劣化ポーションの、通常時の販売価格は30Gold、買取価格は5Gold。

ノーマルポーションになると、NPCの販売価格が80Gold、買取価格が20Goldだ。

NPCの買取価格は変わらないけど、街で直接プレイヤーと取引すれば、劣化ポーションで30〜50Gold、ノーマルポーションだと100〜150Goldで買ってもらえる。


この眼の前のノーマルポーション100本を、そのままNPCに売ると2000Goldにしかならない上、買い取り限界に達してしまい1日〜2日はポーションを買い取ってもらえなくなるが、プレイヤー相手なら、100Goldで売っても10000Goldの売り上げになる。


機材や、素材等でお金がかかるミャアにとっては、馬鹿にできない売上だった。


実際、ポーションの売上のお陰で、携帯用の調合セット、携帯熔鉱炉、携帯紡績機、携帯裁縫セット、携帯細工道具、携帯木工セット等を買い揃えることができたのだ。


まぁ、その御蔭でポーションの売上がかなりあったにも関わらず、現在の所持金は113Goldしかないのだが。


「でも、お外でこうやって作業できるからプライスレスだよね。」

ミャアは誰にともなく言い訳を口にしてみる。


実際、携帯セットのお陰で街に戻ることなくその場で作業出来るから、収納に余裕ができるし効率が凄く上がったのは確かだ。

数日前までは、持てるだけの薬草を採集して街に戻り、最寄りの施設にある設備を使ってポーションを作成。

それで出来るのが、ノーマルポーション換算で約15〜20本。

それからまた外に出て……と繰り返していると、1日で50本程度作成するのが限界だったのだ。

街と森の往復が、地味に時間を食っている。


それが、携帯セットのお陰で半日もかからずに今までの倍。しかも、多種の形態セットを揃えたおかげで、採集に必要な道具も、壊れたらその場で修理もしくは作成出来るため、ポーションを売りに行く以外に街に戻らなくても良くなったのは、効率を語るうえで非常に大きな要素となっている。


「そろそろ、ポーション以外のものを作ってみようかな?」


ポーションの作成は薬草から直接調合する、調合スキルを使うやり方と、薬品を組み合わせて合成する錬金術を使ったやりかたがある。


調合スキルでは、対応する薬草を調合するだけなので、薬草さえあれば手軽に作れるのが特徴だ。

但し、この付近で採れる薬草の種類では、ノーマルポーションまでしか作れない。


対して、錬金術の合成・調薬スキルなら、ポーションと他の素材を合わせて様々な薬品を作ることが出来る。

例えば劣化ポーションをかけ合わせてノーマルポーションが出来るといった具合に。


そして、錬金術で作成したポーションのほうが効果は高いことが判明している……正確には「効果が高くなる」だけど。


例えばポーション。

これはNPCの店売り品は、劣化ポーションの場合、一律回復量が一定で、8ポイント、ノーマルポーションは一律20ポイント回復する。

それに対し、今のミャアのスキルでなら、調合で作成したものは劣化ポーションで5〜12ポイント、ノーマルポーションだと15〜25ポイントの回復量がある。


これが錬金術作成だと、ノーマルポーションの回復量が18〜35ポイントの回復量になるのだ。

差が大きいのは、まだ錬金術のスキル熟練度が低いため安定してないってことらしい。

ちなみに錬金術では劣化ポーションを作ることは出来ない……というか、ポーションの作成素材に劣化ポーションが必要になる。


ミャアが別のものを作成しようと考えたのは、錬金術の合成・調薬スキルが全然上がらないからだった。


現在、一番高いのは、採掘のLv7、次に精製のLv5に続いて、調合、採集がLv4、生産の心得(金属)がLv3で、合成、調薬は共にLv2である。

あれだけポーションを作ってもLv2ならもっと他のを作る必要があるのでは?とミャアが考えるのも無理なかった。


実は、スキルの熟練度ポイントは、少し複雑な計算がされていて、取得スキルの種類が少ないほど、成長が早い仕組みになっている。

例えばミャアのスキルが生産の心得・金属と採掘だけだった場合、採掘によって得られる熟練度のポイントの8割が採掘に、残りが生産の心得に割り振られる。

これが、関連性が高い類似スキルがあった場合、それぞれに割り振られるため、取得スキル数が多いほど、熟練度の上がりが遅くなる仕組みになっている。


簡単に言えば、採掘だけしか持っていない場合、採掘を3回成功させればレベルが上がるのに、採集と伐採も持っていると10回は成功させないと上がらない、と言った感じだ。


古参プレイヤーは、はっきりとしたことはわからなくても、体感でそれを知っているため、スキル取得を慎重に行い、またそれらのことを周りに伝えている。


ミリハウアがミャアのスキルの取り方を見て「バカ」と言ったのはこういう背景があるからだ。


無闇矢鱈とスキルを取得した弊害……、しかしミャアはそんな仕様になっているとは気が付いていない。


それでも体感としてスキルが上がらないことは感じているため、どうにかしなければ、と少し焦りを覚えるのだった。


◇◇ ~ある古参プレイヤー達 その7~ ◇◇


「レオン、そろそろ終わらせたいんだけど?」

「あぁ、俺もそう思う。」

「これ以上長引かせても、カイルたちが喜ぶだけだしね。」

「あぁ、実際俺等の中にも被害者が増え始めてる。」

「なら決まりね。1週間後、代表同士のデュエルで決着。互いに遺恨は残さないこと。OK?」

「OKだ。」

ミリハウアは、その答えを聞くと障壁を消す。

同時にレオンハルトも剣を収める。


そして、お互いに「1週間後に」と言葉をかわして背を向けるのだった。



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