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紛争???

「うーん、久しぶりっ!」


ミャアがUSOにログインしたのは、あれから3日後の事だった。


例の騒動が気になっていたが、検査とか、その時に使った薬が合わなかったりとか、お見舞い、という名にかこつけての示談交渉とかが重なって、ログインする時間が取れなかったのだ。


検査とか、薬の副作用の辛さは、それなりに慣れている美也子だったが、お見舞いという名の面会は正直煩わしく、神経をすり減らせるものだった。


今秋の入院に関して、美也子自身は特に隔意があるわけではなかった。

確かに、心無い悪戯には思うところはあるが、それでも本人に「ごめんなさい」と一言謝ってもらえればそれでよかった。


だけど、お見舞い、と称して来院するのは、弁護士とか保険屋さんとか、そんな大人の男の人ばかりだ。

ただでさえ男の人は苦手なのに……。


淡々と事務的に……少し小馬鹿にしたように、威圧的に話す大人の人たちに対して、どう反応すればいいか、美也子にはわからず、いつも話の途中で気分が悪くなる。

最近では、顔を見るだけで、眩暈や腹痛が起きるようになった。


最悪だったのは昨日の事。

お見舞いに来たのは、珍しく担任の教師だった。

彼は病室に入るなり、明るい声で、クラスの事とか授業の事、先日あった球技大会の事などを一方的にしゃべっていった。


そして、最後に……

「天塚もなぁ、もう少し自分から友達を作る努力をした方がいいぞ。今回の事も、小西だって、田口だって悪気があったわけじゃないんだ。みんな天塚と友達なりたかっただけだと思うぞ。天塚は賢いから、同級生の事がバカに見えるのかもしれないけど、そういう態度は良くないと先生は思うんだ。時には、自分から頭を下げるという事を覚えた方がいい。みんな待ってるからな。」

そう言って担任は席を立つ。


……ハァ、何言ってるのかな?


正直、美也子は、担任の言っていることが理解できなかった。美也子の感想は「何言ってんの?こいつ」の一言に尽きた。

一緒に居た母親も同じ事を思っていたのか、病室の外で、担任と怒鳴り合っていた。

外に出たのは美也子への配慮だと思うけど……丸聞こえだよ?


担任の言い分を鵜吞みにすれば、今回の事件は、美也子の態度が悪かったから起きたこと、だから素直に美也子がみんなに謝れば、皆快く許してくれる、という事らしい。


……なんなの、それ?


「……腹立つわ。……美也子、あの先生、担任から外すように校長先生に言っておくわね。」

母親は激おこだった。


「うん……。」

美也子は他に何も答えられなかった。

ただ……、担任のいう「みんな」に、親友だと思っていた敦子も入っている、という事実が悲しかった。

敦子は小学校からの友人で、美也子は数少ない友人の中でも、敦子の事を親友だと思っていたのに……。


「おかぁさん……少し休むね。」

美也子は一言だけそう言って、頭から布団をかぶり、外界からの情報をシャットダウンするのだった。


そんな、色々なショックを振り切って……と言うか、現実逃避の意味合いが強かったのだが……USOにログインした美也子。



「……えっと、何が起きてるのかな?かな?」

街中のプレイヤーが忙しそうに走り回っている。


「あ、ミャアちゃん、久しぶり。リアル忙しかった?」

先日、ミリハウアと一緒に居たプレイヤーが、ミャアの姿を見かけて声をかけてくれる。

確か彼もクラフターとの事で、今度時間を取って、生産について教えてくれるって言ってたけど……。


「えっ、その……忙しいというか……。それより、なにかのイベントですか?」

「あー、そっかぁ。ミャアちゃんが知らないのも仕方がないよなぁ、戦争だよ戦争。」

「えっ?戦争???」

ミャアはびっくりして思わず聞き返す


「あぁ、前衛と後衛、物理派と魔法派の意地と主張をかけた戦いさ。そして俺達は両陣営に必要物資を届けるので大忙しってわけだ。これが「戦争需要」ってやつかねぇ。」


クラフターの男は、そう言って笑いながら、街の外へと駆けていく。

みゃあは呆気に取られてその男の背中をぽかんと見送るだけだった。



……さて、どうしようか?

ミャアは少しだけ途方に暮れる。

先日、ミリハウアに教えてもらって、スキルが行動以外で覚えれることを知った……知ってしまった。

だったらスキル取るしかないよね?


ミャア……と言うか美也子……が調べたところによると、スキルの所持に限度はない。ただ、装備できるスキル数に限界があるというというだけだ。だから、やろうと思えば、理論上は全スキルを覚えることだって不可能ではない。

実際には、スキルが育ってから、初めてその存在を表す「派生スキル」とかもあるし、スキルの相性制限の関係で、取得できなくなるスキルもあるので、すべてを覚える、というのは実質不可能なのだが。


ミリハウアは、ミャアが取得したスキルを見て呆れていたようだったが、ミャアだって考えなしにスキルを取っていたわけではない。

前述のように、やろうと思えばすべてのスキルがとれる、という情報があったため、後は優先度の問題だと思ったからだ。


例えば、剣の心得を取って、戦術、解析を取ったとして、次に必要になるのは剣や鎧といった装備になる。

しかし、NPCが売っている一番安い「銅の剣」でも1000Goldもするのだ。

剣が無ければ、訓練も出来ない。訓練が出来なければスキルも上がらない。

つまり、剣を手に入れることが必要になるのだ。

逆に言えば、剣を手に入れるまでは、剣の心得を始めとしたスキルは一切不要という訳だ。


魔法も同じで、魔法を発動させるためには、杖やワンド、指輪といった「媒介」と秘薬などの「触媒」が必要となる。

レベルが上がり、色々なスキルを覚えていったり装備が整えば、それらが必要なくなることもあるが、それはまだまだ遠い先の話だ。


つまり、剣……物理にしろ、魔法にしろお金が必要だ、という事に変わりはないのである。


……そう考えれば、ガウルンさんの「格闘」と「裸族」は経済的なのね。


何といっても装備が必要ないからお金もかからない。


……だからといって、覚える気はないけどね。


「裸族」なんて覚えた日には、羞恥でUSOをやめる未来しか思い浮かばない。


唯一の経済的なスキルを放棄したのなら、やることはひとつしかない。

つまり……


「買えないなら作っちゃえ!」


である。


剣や鎧、縦を作るための鍛冶は覚えているし、その材料を得るために必要な精製や採掘もOK。だから、それ以外のものを作成するために、非金属を扱うための心得と、素材を採集するためのスキルを覚えたのだ。

SPが足りなかったせいで、「大工」と「合成」が取れなかったのが残念だ。今から思えば、魔法と付与術ヲ後回しにすればよかったのかもしれないけど……今更だよね。


この「始まりの街」を回れば、大抵の基本的な初期スキルを覚えることが出来ることは教えてもらった。

しかし、教えてもらうにはお金が500Gold必要である。


幸いにも、鉱石を売ったお金があるので、多少懐事情は良いのだが、それでもミャアの所持金は670Gold。

スキルを覚えるにも、まずは先立つものが必要だという事だ。


「はぁ……なにからすればいいのかなぁ?」


そう呟きながら、通いなれた坑道までの道をとぼとぼと歩いていくミャアだった。


因みに、始まりの街に多数いるNPCのお使いクエストをいくつかこなせば、一通りの装備が買えるだけのGoldが溜まるという事をミャアは知らなかった。



◇◇ ~ある古参プレイヤー達 その6~ ◇◇


「何で私達、こんなことしてるのかしらね?」

ファイアーボールを打ちながらミリハウアが叫ぶ。

「何でだろうなっ!」

そのファイアーボールを盾ではじきながらレオンハルトが答える。

「ぐぇっ!」

弾き飛ばした先にいたプレイヤーが、炎に包まれて大ダメージを負って倒れるが、レオンハルトは、気にせずに前へと突っ込む。


「この辺りで手打ちといかないか?」

「そうしたいのはやまやまなんだけど……後ろの子達がね……。」

レオンハルトの剣を、身体の前に張り巡らした魔力障壁で受け止めながらミリハウアが答える。

「だろうなぁ……こっちも同じだし……。」


状況は、すでに収拾がつかないところまで来ていて、どうすれば収まるのか、頭を悩ますリーダーたちだった。










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