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スキルの習得

「えっ、ミャアちゃんスキル取ってないのっ!」


ミリハウアが驚き大声を上げる。


みると、レオンハルトもガウルンも、「マジかっ!」という目でミャアを見ていた。


「あのね、他人のスキルに口出しするのはマナー違反って事になってるけど、敢えて聞くわね。なんでスキル取らないの?」


「何でって……スキルって、何か行動しなきゃ得られないんでしょ?」


「はぁ?」


何か徹底的なすれ違いが起きている。

そう感じたミャアは、少ない語彙をすべて投入して、何とか自分の現状や今までの事を話す。


「マジかぁ……って言うか、そんな状況でスキル四つある方が凄ぇ。」

話を聞き終えたガウルンがそう呟く。


ミリハウアも、まずはそこからかぁ、とスキルについての説明をしてくれる。


「あのね、ミャアちゃん。スキルの習得方法は3つあるの。一つはミャアちゃんがやってた事。だけどね、やってたからわかると思うけど、それは、あまりにも効率が悪く、普通はそんなことしないのよ。副次的に得られてラッキー程度のものね。」


……なるほど。確かに、こんな苦行みたいな事、みんなやってるのか、ゲーマーってすごいなぁ、って思ってたけど……誰もやって無かったのね。


自分のやり方が間違っていたことを理解すると、ミャアは続きを促す。


「次にスキルポイント……SPを使って習得する方法。普通、最初はこれを選ぶのよ。」


ステータスウィンドウの「SP」のボタンを押せば、現在習得できるスキルの一覧が表示され、それを選ぶことによってスキルが習得できるらしい。

初期の状態でスキルポイントは10ポイント。基本スキルは1ポイントで習得できるから、初期段階で最大10スキルを得ることが出来る。

装備できるスキル数も10なので、まず最初にスキルを選んで自分のキャラの方向性を決めるのが一般的なんだそうだ。


「方向性?」

「そう、自分が何をやりたいかって決めるのよ。例えば私は魔法使いだから、基礎魔法・属性魔法・魔力操作・必要魔力軽減・魔法効果増大といった、魔法に関するスキルで固めているわ。逆に、あっちの筋肉バカは身体強化形で固めているはずよ。」

ミリハウアは市う言ってガウルンを指す。


「バカたぁなんだっ!男は筋肉、筋肉こそ正義っ!」

聞いてみると、ガウルンは、格闘・身体強化・戦術・解析・筋肉強化・裸族といった格闘向けのスキルを取っているそうなのだが……。

「裸族?」

ミャアはポッと捕飛を赤らめながら、ついそう呟いてしまった。


「おうよっ!筋肉があれば服なんていらねぇ!」

「……ミャアちゃん、アイツはただのヘンタイだから言うコト聞いちゃダメよ。」


なんでも「裸族」というスキルは身に着けているものが少なければ少ないほど、身体強化の効果が大きくなるというものらしい。

男性は極小面積のブーメランパンツ1枚、女性は、これまた極小面積の超マイクロビキニ姿が、一番効率が良く、その恰好でスキルレベルが最大になれば、300%の身体強化が得られるという。

そしてこの効果は他の強化と増幅するので、身体強化や筋肉強化などと合わせると、素手でドラゴンと殴り合うことも可能になるのだとか。


因みに、さすがに裸族のスキル持つ女性を見たことは無いらしい。


後、二人の話、およびレオンハルトによると、物理攻撃にしても、魔法攻撃にしても、武器や魔法単体のスキル習得ではほとんど効果がないらしい。

物理で言えば、扱う武器のスキルに加えて、戦術、解析の二つのスキルがないとほとんど効果がないらしいし、魔法にしても基本魔法以外に、属性魔法か、精霊魔法、神聖魔法を選んだうえ、魔力操作と魔力感知が無ければ、これまた使い物にならないという。


「だからね、物理派のテンプレは「剣(武器)の心得」「戦術」「解析」の三つがワンセット。これにほとんどの人が「命中力アップ」「ダメージアップ」の二つを付けるんだよね。当たらなきゃ意味ないし、ヤッパリダメージが大きくないと意味ないしね。後は各プレイヤーのスタイルにもよるけど、防御として「回避力アップ」か「物理抵抗力アップ」それに「魔法抵抗力アップ」を付けるかな。後は前衛だから被弾率が高いから装備を充実させるとなると、「鎧装備」がないと話にならない。重鎧は機動力が落ちるから、それを補う「重量軽減」とか「機動力アップ」といったスキルが必要だしね、他の系統のスキルを取る余裕がないんだよ。」


「そうね、魔法にも同じことが言えるわ。基本である「魔法の心得」に、「魔力操作」「魔力感知」は必須よ。これに自分の目指す魔法の方向性を選ぶの。属性魔法なら「火」「風」「水」「土」「光」「闇」の六つ。中級になれば他に「氷」「雷」「空」「特殊」なんかが加わるわね。他には精霊の力を借りる「精霊魔法」神の奇跡を願う『神聖魔法」などもあるわ。セットできる数にも限りはあるし、相克の関係もあるから、全属性を使おうというのは基本的に無理筋よ。これらのメイン魔法に加えて、火力を増す「魔力ブースト」や起動を早くする「詠唱軽減」や「無詠唱」というのがあって、さらには、必要魔力を少なくする「詠唱魔力軽減」なんてのもあるわ。他にも魔力身体強化や、付与術なんてのもあるわね。まぁ「付与術」は生産にも使われるから、カテゴリーとしては微妙なんだけどね。」


「生産系は生産系で、多種に渡るからなぁ。結局のところ一人で全部ってのは厳しいって話だ。」

ガウルンが最後にそう言って締めくくる。


つまり、剣と魔法を一緒に使ったり、生産系と戦闘系を両立するのは難しいって事らしい。


「あれ?でもレオンハルトさんのパラディンって……」

確か神聖魔法と光魔法を使うって言ってたはず……。


「あぁ、流石に苦労したけどね。」

レオンハルトさんによれば、まず武器として「剣士の心得」と「槍士の心得」を選んだという。両方使えるのが騎士への条件なんだそうだ。

それに加えて「戦術」「解析」「命中力アップ」「鎧装備」「盾装備」の物理系スキルに加え「魔法の心得」「神聖魔法」「光魔法」を習得したという。

「鎧の重さは根性で、ダメージに少なさは手数と武器の性能で何とか凌いだんだよ。魔法は、回復に使うぐらいなら他のサポートスキルがなくても何とかなるからね。」


レオンハルトが言うには、中級スキルが得られるぐらいになると、基本スキルの統廃合が行われ、スキル欄に余裕が出来るという。

もっとも、他に有用なスキルが増える為、結局は変わらないという事らしいが。


スキルの統廃合で有名なのは「水」と「氷」を共に上限まで持っていくと、両方の資質を備えた「氷雪」が現れる。同じように「風」と「雷」で「風雷」『火』と「土」で「金剛」などがある。さらには全属性を備えた「属性魔法」なんてものもあるらしいが、条件が厳しすぎて、そのスキルを持っているものは、未だに一人もいないらしい。


話がずれたが、とにかく、中級になって、剣と槍が使える「騎士の心得」のスキルを取り、さらには『神聖騎士(パラディン)』の称号の効果によって、ようやくスキル欄に余裕が出来てダメージアップや身体強化などが使えるようになったという。

因みに『神聖騎士(パラディン)』の称号を持っていると、『神聖騎士装備』に限り、重量などのペナルティが無くなるというものらしく、そのおかげで、「鎧装備」や「重量軽減」などのスキルが必要なくなったらしい。

また「神聖騎士魔法の心得」という光と神聖魔法が統合されたスキル生成されるのも、称号の効果らしく、これひとつで、魔法系のスキルは賄えるという。


「他の習得方法は、NPCからお金を払って教えてもらうって事だけど……って、ミャアちゃん何してるの?」


「え、スキルの習得?」


「ねぇ、話聞いてた?どういう方向性で行くかが大事って言ったよね?」


「うん、だから、コレ。」

ミャアは得たばかりのスキルをミリハウアに見せる。



習得スキル:生産の心得(金属・初級)・採掘 ・精製 ・鍛冶 ・細工・生産の心得(非金属・初級)・錬金術師の心得・魔法の心得・付与術・裁縫・伐採・紡績・採集・調合


スキルポイント:0


装備スキル:生産の心得(金属・初級)・生産の心得(非金属・初級)・錬金術師の心得・魔法の心得・採掘 ・精製 ・鍛冶 ・紡績・採集・調合



「あ、あんたねぇっ!クラフターにでもなるつもりっ!?それでも無節操すぎるわよっ。さっきも言ったでしょ、何でもかんでも一人じゃできないって。それにウサギ退治はどうするのよっ!」


ミリハウアはつい怒鳴ってしまう。

ミャアのスキルは全て生産系、しかも、目についたもの片っ端から取ったとしか思えなかったからだ。


USOでは、プレイヤーのスタイルは大きく分けて3つの系統に分かれる。

一つは、レオンハルトやガウルンのような前衛系の戦闘職。扱う武器や、スキル構成によってスタイルは分かれるが、基本的には物理系の必要な武器火力や防御を中心としたスキル構成になる。


もう一つは、ミリハウアのような後衛系の魔法使い。

こちらも、やはり魔法系の火力アップや、MPの軽減など、魔法使いに特化したスキル構成になる。

レオンハルトのように、武器も魔法も、というスタイルもあるが、効率が悪いため、大抵は「物理寄り」「魔法寄り」と言ったように、どちらかに偏る。


そして、非戦闘系としてのクラフター。

彼らは、戦闘職としてのスキルを一切取らず、生産に特化したスキル構成になる。

これは戦闘系のスキルを取らない、というより、必要スキル数が多くて取れないといった方が正しい。

なので、生産系でも、金属を扱う「ブラックスミス」、非金属の中でも木材を扱う「カーペンター」、革や布素材を扱う「テイラー」など、扱う素材ごとで分かれているのが一般的だ。


というより、どのスタイルを取るにしても、スキルの数が多すぎて分けざるを得ないのだ。


だから、ミャアのような、何も考えずにスキルを取るのは、スキルポイントの無駄使いともいえる。

また、取得スキルの内容やレベルによっては、様々な制限やペナルティーを受けることもある。


例えば、属性魔法の火と水を同時に取得すると、得られるスキル経験値が1/2になるとか、「裸族」のスキルと取ると、装備に制限がかかるとかなどなど。

必ずしもマイナスばかりではなく、相乗効果でプラスになる組み合わせもあるのだが、大抵の場合、考えて取らないとマイナスになることの方が多いのだ。


……そうならないために私たちがいるっていうのに。

ミリハウアは、もっとしっかりと話すべきだったと少しだけ後悔する。


「まぁ、いいわ。「魔法の心得」があるから、『魔法使研究所」に行って、どれか属性魔法を教えてもらいましょ?」

幸いにも、ミャアが覚えたスキルは全部で14個。初心者救済特典の限界まで、あと一つ余裕がある。風か火の魔法を覚えれば、ウサギぐらいなら何とでもなる筈だ。


「オイ、ちょっと待てよ。」

さぁ、行きましょ、とミャアの手を取ったところで、ガウルンが止める。

「なによ?」

「なにって、勝手に決めんなよ。嬢ちゃんは獣人だ。獣人と言えば、近接戦闘型だろ?お前さんみたいなイリーガルと一緒にしたら可哀想だぜ。」

ガウルンの物言いにミリハウアがキレる。


「はぁ?何バカなこと言ってるのよっ!獣人の特性である、夜目や鷹の目は、離れたところからのターゲティングに一番マッチしてるのよ。遠距離からの攻撃魔法と相性がいいのに、イリーガルなんて心外だわっ!」


「バカなこと言ってるのはそっちだろっ!大体遠距離攻撃が出来るのだって、俺らが前に出て盾になってやってるからだろうがよっ!俺らがいなけりゃ、後衛なんてただの役立たずじゃねえかっ!」


ガウルンの言い方にミリハウアはさらにキレるが、キレたのはミリハウアだけではなかった。


「オイオイ、ガウルンさんよぉ。そりゃぁいい過ぎじゃないか?確かに俺らは、前衛に守ってもらってるよ。だけどな、前衛が受けた傷を回復してるのは俺らなんだぜ?逆い言えば、俺らがいなけりゃ、前衛なんて盾にもならねぇ。」

傍で黙って聞いてた神官風の男が、そうガウルンに言い返す。


「はぁ?ヒーラーなんて、後ろの安全なところで、ちょこちょこヒールかけているだけで、一人前にドロップの恩恵にあずかろうとしているだけの癖に、ナマいうんじゃねぇよ。」

神官風の男に、ガウルンの後ろにいた斧使いが割り込んでくる。


「あー、お前らみたいな脳筋には言ってもわからないだろうが、ヒーラーの役割ってのは……。」

「誰が脳筋だぁ、ゴルァっ!」

「……あのぉ……バッファーも重要だと……ねぇ、聞いてますぅ?」

「大体魔法使いの方が脳筋だろうがっ!敵味方関係なく巻き込むような魔法使いやがってっ!」

「あらぁ?あれぐらい避けてもらわないとぉ?敵さんは華麗に避けてましたよねぇ?プー、クスクス……。」

「味方撒き込んどいてよけられるたぁ、すげぇ魔法使いさんだなぁ?討伐数の半分は味方ですってかぁ?」

「あのぉ……バッファーも……聞いてくださいよぉ……。」



……カオスだった。

それまで和気藹々と世間話をしていた、この広場一帯が、前衛派と後衛派に分かれて論争し始め、もはや収拾がつかなくなっている。


……えっと、どうすればいいのかな?

突然始まった論争に、ミャアは着いて行けず、ぼーっと眺めている。ここで頼るべき人が、論争の中心にいるため、頼ることも出来ない。


……あ、時間だ。


システムウィンドウからアラームが鳴る。

リアルでの検査時間だ。

「あの……堕ちますね。」

誰も聞いてないだろうと思いながら、そう発言してミャアはログアウトするのだった。


◇◇ ~ある古参プレイヤー達 その5~ ◇◇


「こうなったら戦争よ!」


「「「「「「おぉーーーーーっ!」」」」」


「返り討ちにしてやるぜっ!」


「「「「「「おぉーーーーーっ!」」」」」


「あのぉ……バッファーというのはですねぇ……ぐすん、誰か聞いてよぉ……。」




それぞれのロールの事を理解し合うのが大事ですね。

なのに、なぜアタッカーばかり……(><)



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