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スキルが生えた!?

かつん、かつん、かつん……。


「はぁ……。」


鉱石を掘りながらミャアはため息をつく。


……そろそろ時間かな?


ミャアは掘りかけの鉱石を拾い集め、行動の入り口へと向かう。


周りをキョロキョロ見舞わし、誰も居ないことを確認して、NPCの親方に声を掛ける。


「嬢ちゃん、今日も精製かい?」


「えぇ、お願いします。」


ミャアがそう答えると、親方は背後の小屋のカギを渡してくれる。


この小屋は、鍵を受け取ったプレイヤー専用になっていて、同じタイミングで他のプレイヤーがカギを受け取っても、別々の場所へと転送されるようになっているから、制限時間の1時間は、邪魔が入ることは無い。

この「邪魔が入らない」時間を確保するためだけに、わざわざ精製をしているという面もあった。

先日の「つるはし事件」(とミャアは呼んでいる)の後、例の彼とは何度か出会う機会があった。

彼にはちゃんと謝りたいと思っていたので、ミャアとしては会う事に問題はなかったのだが……。

彼は、ミャアを見かけるなり、勢いよくジャンピング土下座をやってのけたのだ。


元より、リアルでもコミュ障だと自覚しているミャアである。

こんな大衆の面前で、多くの衆目を浴びる中でそんな事されてしまったら、ミャアとしてはどんな反応をしていいか分からない。

結局、数秒ほどオロオロして……そのままログアウトしてしまった。


その対応が良くない事は、ミャアにもよくわかっている。分かっているけど……どうしようもないじゃないっ!とミャアは誰にともなしにそう呟く。


それから、ミャアがログインして暫くすると、どこからともなく彼が現れ、同じようにジャンピング土下座を披露してくるので、ミャアは自然と避けるようになったのも無理はないだろう。

それだけなら、まだよかった。最近は、何故か、他の人までも同じようにジャンピング土下座する人が増えたのだ。


結局、街中にいてはそんなのが多いため、街外れのこの坑道で、こっそりと鉱石を掘っては生成してインゴットにする、という繰り返しをしている。



「はぁ……。よしっ!ガンバろっ!」

みゃぁは大きく息をついてから、気合を入れなおす。折角の時間、無駄にしたくないもんね。


そして設置してある炉に向かって、鉱石を放り込む。

後はタイミングを見て取り出すだけ。


タイミングよく引き出せれば、放り込んだ鉱石の質と量に応じたインゴットが出来上がる。

失敗しても、その欠片を次の鉱石と一緒に放り込めば、若干ながら成功率が上がるので、完全に無駄にはならない。


三日前から始めたこの精製。当初は殆どが失敗で、持ち込んだ鉱石全部使ってインゴット1個が出来るかどうか?という所だったけど、今では7割方成功するようになった。


炉に放り込んだ鉱石を取り出してインゴットが出来ているのを確認したところで、ぴこんっとアラートが鳴りシステムメッセージが出てきた。


『精製の熟練度が一定数に達しました。これによりスキル「鍛冶師」が派生しました。』


「おぁっ!新しいスキルだよっ!」


みゃぁは喜んで、さっそく、とスキルウィンドウを拡げると、習得スキル欄に「鍛冶師」があるのを確認して、小さくガッツポーズを作る。


正薦めてくれた恵子さんには悪いけど、USOをやめようと思ったこともあった。

自由度が高すぎて、何をやっていいか分からず、途方に暮れていた所に、例の土下座集団の件があって、正直、疲れていたのだ。

たかがゲームで、何でこんな思いしなきゃならないの?ゲームって楽しく遊ぶものでしょ?

そんな想いを恵子さんにぶつけてみた……と言うか、愚痴を漏らしたこともある。


「アハハ。そうね、ゲームといっても、MMOはその他大勢と一緒にプレイするからね。そこにいるのは、心の無いNPCじゃなくて、美也子ちゃんと同じ、血の通った人間だよ。それぞれの想いがあり、考えがあり主張がある。だから当然分かり合えることも合えば、ぶつかることもある。どうしても理解し合えない人だっている。ゲームといっても、相手が人間である以上、リアルの世界と一緒だよ。だから、美也子ちゃんの心にケアに丁度いいんじゃないかな?」


美也子が今入院している直接の原因は、クラスメイトの浅慮且つ心無い悪戯の結果だ。

表面上、何でもないように取り繕っているが、半面、美也子の心は、本人にも気づかない心の奥底で、非常に傷ついていた。

それが生来の引っ込み思案で人づきあいが苦手という性格に多大な影響を与え、人間不信になっている、というのを恵子はカウンセラーから聞かされており、その事を懸念していたのだ。


多数のプレイヤーが存在するゲーム内でコミュニケーションを取り、人間不信を取り除くケアに役立てる、という主張は、カウンセラーからの同意を得ることが出来、美也子にUSOを与えるのに役立ったのは皮肉が効いているとも言えなくはなかった。


本来であれば、入院患者にゲームをやらせる……しかも長時間にわたる様なものを、許可することは論外ではあった。

しかし、美也子の現状を鑑みた特殊な事情に加え、リハビリや心療のサポートになる可能性という()()があれば許可しないわけにはいかなかった。

恵子としても、それだけ無理を通した以上、2~3日で美也子に2~3日で止めてもらっては困るのだ。


「だからね、美也子ちゃんも、ムリしない程度に、話を聞く努力をしてもいいんじゃないかしら?直接は無理でも、誰かに間に入ってもらう、とかね。」


「うん……頑張って……みる。」


美也子は恵子にそう答えたものの、中々切っ掛けがつかめずに、こうして逃げ回っていたのだが、そんな折、鉱石を掘っている最中にアラートが出て、「採掘」のスキルを得た事を知った。

そのスキルをセットしてから鉱石を掘る効率が上がり、ここで初めて、ミャアはスキルの恩恵、というものを知ったのだった。


「行動を起こせば、その行動に見合ったスキルを得ることが出来る。そのスキルをセットして行動すれば、効率が良くなりスキルも育つ……か。中々奥深いんだね。」


ミャアはそんな事を呟きながら、鍛冶師のスキルをセットしてステータスを確認する。


キャラ名:ミャア 

種族: 獣人(リンクススロープ)

種族特性: 夜目・気配探知・気配消去・隠蔽・敏捷度ボーナス

所持金:420Gold

習得スキル:生産の心得(金属・初級)・採掘 ・精製 ・鍛冶 

スキルポイント:10

装備スキル:生産の心得(金属・初級)・採掘 ・精製 ・鍛冶 


装備

頭:

首:

身体上:エプロンドレス

身体下:------

腕:

手:革のグローブ

脚:

足:革のブーツ

インナー:可愛い下着

他:

右手装備:ガーゴイルつるはし

左手装備:------

アクセサリー:体力増強の指輪 お護りアミュレット


HP:40(+35)

MP:55

攻撃力:5(+15)

防御力:3(+8)

魔法攻撃力:2

魔法抵抗:1


称号

【ウサギに敗れし者】【採掘師】


このUSOでは、力とか体力といったパラメーターはマスクされていてプレイヤーには分からないけど、毎日の採掘作業で、力とかは上がっていることは間違いない。

多分それがHPとか攻撃力に反映されているのだと思う。


……これは、ウサギへのリベンジが近づいているのではっ!?


これからつるはしを振るう時、そこにウサギがいると思ってやってみよう、とミャアは密かに思うのだった。


鉱石の残りを全てインゴットに代えてから小屋の外に出る。


親方に鍵を返し、坑道の外に出ると……。


「うっ!」

思わず声が漏れる。

そこには30人以上のプレイヤーが土下座して待ち受けていたのだ。

「あ、えぅ……アッ……」

焦ったミャアはシステムウインドウからログアウトのボタンを呼び出す。


「ちょっと待って、ミャアちゃん。話がしたいのよっ。」

ログアウトボタンを押そうとしたところで女の人の声がミャアを呼び止める。

ミャアがそちらを向くと、ミャアと同じネコ耳のお姉さんがニコニコと立っていた。


ミャアが一歩踏み出そうとしたのを見て、お姉さんは安心した様に、ほっと息をつく……が、その眼の前でミャアが消えてしまった。……ログアウトしたのだ。


ネコミミのお姉さん……ミリハウアは、握手しようと差し出した右手の行き場を無くして、茫然と突っ立っていた……。



◇◇ ~ある古参プレイヤー達 その3~ ◇◇


「アンタら、バカなのっ!バカでしょっ!って言うか、レオンがいながら何やってるのよっ!」

ネコミミ女性の怒声が辺り一帯に響き渡る。

「い、いや……我々の誠意を見せようとだなぁ……。」

そう言って剣士……レオンハルトがネコ耳の女性……ミリハウアに説明という名の言い訳を始める。


「……という訳で、タウロだけだと逃げられて話にもならないから……。」

「だから、大勢で詰め寄ってたってわけ?……アンタらアホでしょ?」

ミリハウアは、レオンの話を「アホ」の一言で切って捨てる。

「いーい?素人の女の子が、見知らぬオッサンどもに詰め寄られたら、怖いって思うに決まってるでしょうがっ!」


「そうなのか?」

「俺に聞くなよ。」

「女の子ってそうなんだぁ……」

「だから俺に聞くなって。」

「オッサンって、俺まだ24……。」

「センさん24歳?充分オッサンだよ。俺まだ17.」

「17って、おい、カロン、今日って平日だよな?学校はどうした?」

「それ聞く?聞いちゃう?」


ザワザワザワ……。


ミリハウアの発言に、その場にいた者達のざわめきが広がっていく。

そんなざわめきを無視してレオンハルトは、ミリハウアに反論をする。

「いや、詰め寄ってたわけじゃなくて、話を聞いてもらうために、まずは謝罪の気持ちを表そうと……。」

「はぁ……」

そんなレオンハルトに、ミリハウアはため息で応える。

「あのね、謝罪の気持とか関係無いの。あなた達想像してみて。初めて行った土地で、いきなり見知らぬガチムチの男達に囲まれたらどうする?」


「「「「「「逃げるっ!」」」」」」


「今のミャアちゃんの心境が、まさしくそれなのよ。分かった?」


「「「「「「サー!イエッサー!!」」」」」」


何故か直立で声をそろえるプレイヤー達。


「はぁ……次は私が直接声を掛けるから、あなた達は手をださないように。」


「「「「「「イエッサー・マム!!!」」」」」」


この妙にノリのいい連中を見ながら、何とか誤解を解かなきゃね、とため息をつくミリハウアだった。




生産……楽しいですよね。

ひたすら掘る、ひたすら切る、ひたすら縫う……

同じことの繰り返し、単純作業に繰り返し……ただそれだけで時間が過ぎていきます。

生産……いいですよね……。



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