お使いクエスト
ある偉い人が言いました。
「買えないなら作ればいいじゃない」
と。
「……そうだよねぇ、従姉のお姉ちゃんもコンビニのお弁当高いから自炊してるって言ってたもんね。」
街中をまわって、ミャアは「エプロンドレス」(400Gold)と「お護りアミュレット」(2100Gold→300Gld)を手に入れたため、防御力が+4になった。
……にもかかわらず、リベンジに行った先で、またもやウサギに瞬殺されたのだ。
といっても、今回はウサギに一撃を入れることが出来たため、前回よりは成長した……と思いたい。
「……やっぱり『革のドレス』の方がよかったのかな?……でも可愛くないんだよね。」
同じ値段の『革のドレス』だったら防御力が+7なので、+1の「エプロンドレス」よりはダメージを軽減できたかもしれない。
だけど、ミャアはエプロンドレスの可愛さに負けてしまった……と言うか、同じお金を出すなら可愛い格好をしたい!という誘惑に抗えなかったのだ。
しかし、実のところ、皮のドレスでもエプロンドレスでも、根本的には関係がなかった。今回の事でわかったことは「ウサギを倒す攻撃力がない」という事だったからだ。
攻撃力が無いから、倒せない。だから、皮のドレスを纏っていても、倒れるまでの時間が長い、というだけで根本的な解決には至らない。
鍛冶屋のおじさんに貰った皮剥ぎナイフは、厳密に言えば解体道具であり、武器として使うことは出来なかった。
正確に言えば、使えなくはないのだが、何らかのマイナス補正があるのか、全然当たらないのだ。素手で殴った方がよく当たるぐらいに。
そして、街中で見かけた武器は安いナイフで300Gold。
普通の一般的なロングソードで1000Gold。
対してこちらの所為金は0Gold
2回目のウサギにやられて100Gold失って、宿屋で10日分で100Gold支払ったら、無一文になってしまいました。
「嬢ちゃん、仕事捜してるのかい?」
無一文でとぼとぼと歩いているミャアにそう声を掛けてくるNPC。
「あ、はい、お仕事捜してますっ!」
そう答えると、ぴこんっとアラートが鳴り、クエストウィンドウが開かれた。
「あー、コレが「くえすと」ってものなのね。」
「ワシはナイフ収集家じゃ!ナイフを10本集めて持ってくるのじゃ~!」
ミャアの言葉が聞こえてないのか、NPCは一方的にしゃべって口を閉ざしてしまう。
「はぁ……どうしよ?」
お金が無いから、受けたはずのクエストなのに、クエストを終了させるにはナイフが10本必要。
お店で買うとナイフは1本300Gold、10本で3000Gold。
「詰んでますわ‘~。」
とぼとぼと歩いていると、鍛冶屋の近く迄来ていた。
すると中から親方らしき男の怒鳴り声が聞こえてくる。
「べらんめぇっ!インゴットなかったら掘ってきて精製すればいいだけの事だろうがっ!」
その直後に。鍛冶屋から飛び出してきた男とぶつかりそうになるが、ミャアはかろうじて躱す。
「なんだてめえはっ!」
後から顔を出した親方と目が合い、出合頭にそう怒鳴られた。
「弟子入りかぁ?悪いが、今はインゴットがねぇ。インゴットを持ってきたら、鍛冶のイロハぐらいは教えてやる。」
親方はそう言って中へ閉じこもってしまった。
同時に、ぴこんっとアラートが鳴り、クエストウィンドウが開いた。
「はぁ、成程ねぇ。」
インゴットを持ってきて、鍛冶の仕方を覚えて、それでナイフを作って納品すればいいって事ですかぁ。」
そうすると、今度はインゴットの入手だが、ミャアには心当たりがあった。
「あ、やっぱりここだぁ。」
街外れの一角、鉱山へと通じる道の入り口で、つるはしを持って怒鳴る親方の姿があった。
親方はミャアの姿を認めると話しかけてくる。
「何だ、嬢ちゃんまた来たのかい?」
「はい、掘っていいですか?」
「つるはしはあるのか?無ければ1本50Goldで売るぜ?」
「あるから大丈夫です。」
ミャアはにっこりと微笑んでそう告げる。
「そうかい?じゃぁ、適当に掘りな。だけどあんま奥へ行くんじゃないぜ?」
「はぁーい」
ミャアは軽く返事をして坑道の中へ入っていった。
「さて、と。確か、壁に向かってつるはしを振ればいいんだっけ?」
このつるはしは、ここまでに来る途中、ぶつかった人が落としていったものだ。
拾っているうちにその人はどこかへ行ってしまった。
USOでは落ちているものは拾っても何の問題もないと聞いている。
落とした人が悪くて、拾った者には何ら罪がなく、拾得物を売ろうが壊そうが拾得者の自由。むしろ、新人に拾わせるためにわざと捨てるものもいるという……と、ネットの攻略ページには書いてあった。
つまり、意図的にせよ偶然にせよ、落としたモノを拾った時点で、これはミャアのモノなのだからミャアが気にすることは無いのだが……。
それでも……と躊躇ってしまうのが、美也子という女の子の性格でもあった。
でも今は、つるはしが必要なわけで、いまだけありがたく借りておこう、とミヤコはつるはしを振るった。
……1時間後。
「えっと……どうしよう?」
掘り出した鉱石の前で、ミャアはオロオロしていた。
ちょっとだけ借りていたつもりのつるはしが壊れて消えてしまったのだ。
ミャアは知らない事だが、つるはしには耐久度とは別にチャージという項目があり、鉱石を掘るたびに、このチャージが減っていく。そしてチャージがゼロになれば消滅するという消耗品なのだ。
中には特殊なエンチャントがかかっていて、24時間放置すれば、またチャージが全快する、といったものもあるが、そこまではミャアは知らない。
「はぁ、買って返すしかないですね。」
ミャアは掘った鉱石を収納に入れると、行動の入り口まで戻る。
「嬢ちゃん、どうだった?」
「はぁ、これだけ掘れました。」
声を掛けてきた親方に、ミャアは鉱石を見せる。
「おぉ、凄いじゃないか。どうする精製してみるか?」
親方の言葉に、ミャアは悩んだ末に首を横に振る。
「いえ、今回は買い取ってもらえますか?」
「いいぜ、ちょっと待ってな。」
そう言って親方は鉱石を受け取り、奥へ引っ込む。
そして革袋を手に戻ってくる。
「全部で150Goldだ。確認してくれ。」
ミャアは革袋の中身を取り出して金額を確認し、その内100Goldだけ革袋に戻してしまう。
そして残りの50Goldを親方に差し出してつるはしと交換してもらい、再び坑道へ戻るのだった。
つるはしが壊れるまで鉱石を掘り、親方に鉱石を売って、そのお金でつるはしを買ってまた掘るという作業を、時間を忘れて続けていたミャアだったが、そろそろ落ちなくてはならない時間だという事をアラームに告げられ、今掘った分を売って終わりにしようと思ったその時だった。
入り口付近で、ぶつかってつるはしを落とした人を見つける。
つるはしを捜しに来たのだろうか?
それなら謝らなければっ!とミャアは走って彼の下へと行く。
「す、すみません、私とぶつかった人ですよねっ!」
「あっ、えっ、えっと……」
「ゴメンナサイっ!あのつるはし壊しちゃいましたっ!」
そう言って頭を下げるミャア。
「あっ、えっと、……イヤ……いいんだ。つるはしならいくらでもあるから。あ、そうだ。よかったらもっとあげるよ。」
「あ、いえ、でも今は……。」
「いいからいいから。」
男はミャアの言葉も聞きもせずに無理やりトレードウィンドウを開けてつるはしを10本押し付けてくる。
しかし、今のミャアの収納は、鉱石で限界積載量を超えているので、つるはしを受け取る余裕はない。
だから自然とトレードは失敗に終わる。
「な、なんだよっ!いらないってかっ!」
「いえ、その……そう言う訳じゃなくてですね……その……。」
「どうせお前も、俺みたいなやつはキモイっ、そんな奴から物は受け取れないっ!ていいたいんだろっ!新人は黙って施しを受けてればいいんだよっ!」
男はキレてその場につるはしをぶちまけ、去って行った。
「あれ……なんで……。」
ミャアの瞳から涙が溢れている。
そんなつもりはなかったのに……。
ただ謝りたかっただけなのに……。
ミャアは、よろよろしながら親方に鉱石を全部売り、先程の所に戻って、地面にぶちまけられたつるはしを全部拾う。
何本かはだれかに拾われてしまったようだが、それでも13本のつるはしを手に入れたミャアは、拾い残しがないかを確認した後、そのままログアウトするのだった。
◇◇ ~ある古参プレイヤー達 その2~ ◇◇
「お前は馬鹿かっ!」
隊長と呼ばれた剣士が、一人のプレイヤーを怒鳴りつけている。
「あー、つい、ちょっと……。」
正座している短剣使いがきまり悪そうな顔をしている。
「お前の過去に何があったかは聞かん。たぶんここにいる奴らはみんな多かれ少なかれ、同じ体験をしてるだろう。だがなっ!だからといってミャアちゃんを泣かせていいって事があるかっ!」
「えっ、まじっ?泣いてたのっ!?」
短剣使いがオロオロし始める。
「最新情報が入りましたっ!事件当時、ミャアちゃんは積載量限界まで鉱石を持っていたことが判明。その状況ではトレードなんて受けることが出来る筈がありません。というか、新人がトレードシステムを理解している確率は20%以下であります!ミャアちゃんは『ごめんなさい』と呟いてログアウトいたしました。次回ログインするかどうかは不明。今までの症例から見て50%以下の可能性大!!」
「有罪!」
「有罪!」
「有罪!」
最新情報を聞き終えた、取り囲んでいるプレイヤーたちが「有罪判決」を突きつける。
「ま、待ってくれっ!そんなつもりじゃなかったんだぁぁぁぁぁ……。」
短剣男の悲鳴が響き渡る。
USOの世界は今日も平和だった。
最近はスマホアプリばかりで、面白いって言えるネトゲが少ないですよね。
そう言う意味では昔のネトゲの方が面白かった気がします。
作者もたまに昔のアカウントに課金して、1か月だけ復帰、というのを繰り返したりしてますが、タイトルによっては課金額が高すぎるのが……特に海の……(==;
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