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反転

ログインした場所は、前回、半分やけになって建てたMyハウスの中だった。

「必要に迫られてたとはいえ……偶然って怖いわね。」

ミャアは、自分の運の良さに少しだけ呆れていた。


ミャアが家を建てた場所は、ミャアが、これからのUSO生活を始める上で最高の条件に位置する場所だった。

薬草などの採集ポイントが多く、伐採に困らない森の中。しかもすぐ近くが山間で、鉱石の採掘ポイントもある。

クラフターにとっては、家のすぐそばで素材が手に入るという最高条件の場所だ。

惜しむらくは溶鉱炉がないため、鉱石を生成できないってところだろうか?


他にも、立地条件として、森の中というのは身を護るのに適している。

というのも、森の中というのはトラップを掛けやすく、しかも、トラップを隠蔽しやすいという特徴があるからだ。


ミャアは、家の周りを一回りし、どこにどういうトラップを仕掛けるのがいいか確認すると、さっそく家に籠ってトラップの作成を始めた。


夜が更ける頃には、一通りのトラップが完成し、家の周りにしかけることが出来た。

一番大きなトラップは、近くの広場だ。大きな落とし穴と爆裂薬のコンボトラップ。

追いかけられたとしても、ここまで逃げ込むことが出来れば、トラップで反撃することが出来る。

後は定期的に爆裂薬を補充するだけでいい。

明日から、空いた時間は爆裂薬の作成に専念しよう。

そう考えながらログアウトする。


戻ってきた美也子は、HMDを外すと、明日は何をしようか?と考えながら眠りにつくのだった。



ドキドキドキドキ……。


心臓が激しく動き、息苦しい。


鼓動が相手に聞こえるのではないかと、気が気でならないが、何とか落ち貸せながら、一歩、また一歩と近づいていく。


相手はまだ、ミャアの接近に気がついていない。


相手はプレイヤーだ。装備から見て、後衛の魔術師だろう。


ミャアを見つけて、いきなり襲い掛かってきたプレイヤーのパーティ。


追いかけてきた剣士二人を、何とか巻いて、斥候役の一人を罠で捕らえることに成功した。


そしてぐるっと大回りをしながら、後衛で控えていた、目の前のプレイヤーに対し、潜伏しながら近づいて行っている。


ミャアの種族特性として、気配を探ること、そして気配を消すこと対して大幅なボーナスがついている。

そして、この数日で大幅にレベルが上がった『気配遮断』『潜伏』『隠蔽』『潜行』などのスキルによって、対抗スキルを持たないプレイヤーならすぐ背後まで近づかれても気づけない、という知識はあっても、実際に行うのは、これが初めての事だ。


エネミーよりHPが低いプレイヤー……しかも物理抵抗に弱い魔術師であれば、潜伏して背後からの奇襲であれば一撃で屠ることが出来る……はず。

そんな事を思い出しながら、ナイフの射程まで、あと一歩という所まで近づく。


……よし、ここでっ!


ミャアがナイフを振りかぶる。


「おい、警戒しろっ!奴に気付かれたっ!」


目標を見つけられず戻ってきた戦士プレイヤーの声に、魔術師の身体が動く。


……しまった。

そう思うが、もう遅い。ミャアはすでに攻撃モーションに入っているのだ。


結果として、ほんの少し躱されたことで、ミャアの攻撃は成功ならず、相手のHPの4/5を削るだけに留まる。


「な、なんだぁっ!」

「グっ……いつの間に……。」


攻撃が失敗し、その場に姿を現すことになったミャアは、あらかじめ用意していた小瓶を投げつけ、その爆風に紛れて姿を消す。


相手に目視されている状態ではスキルの『潜伏』は使用できない。

その点では、系統外魔法の「透明化」の方が役に立つのだが、魔法では、その場から動けない、時間制限がある、などのデメリットもあるため、どっちが優れている、とは言えなかったりする。


どちらにしても、目くら足を兼ねた煙幕弾と、爆裂薬、状態異常ポーションのコンボによって、HPの大半が削られていた魔術師はその場で死亡。戦士も半分ほどHPが削られている。


……今なら殺れるかも?


ミャアはさらに爆薬を投げつけ、ぐるりと回って戦士の背後につく。

戦士はまあを見つけることが出来ずにいる。

ミャアはそっと忍び寄り、覚えたばかりのスキルを発動する。

「バックスタッブ」……背後からの奇襲攻撃技の一つである。

ナイフ関連のスキルだけでなく、潜伏や隠蔽などのスキルレベルにも依存する攻撃手段で、『暗器」スキルを持った獣人のミャアにとっては非常に相性の良いスキルだというのは、ミャアも最近知った。


「ぐふっ!」


背後から斬りつけられた戦士だったが、それでもなお、数ポイントのHPを残している。

ポーションを取り出そうとする仕草を見て、ミャアは飛び掛かり、その手を払う。


「くそガァッ!」


怒り狂う戦士から飛び退き、間合いを開けるミャア。


その姿を捉え、一気に間合いを詰めるべく飛び掛かってくる戦士。

その行動に迷いはなく、このタイミングでは、ミャアが逃げ出す前に間合いが詰められ、同時に手にした斧が振り下ろされることだろう。

そして、貧弱な装備のミャアでは、振り下ろされる斧の一撃には耐えられない。


戦士もそのことは理解しているらしく、ミャアに向かってニヤリと笑う。

それに対して、ミャアはにっこりと微笑み返す……勝利を確信したものの笑みだ。

その事を不思議に思う間もなく、戦士の身体が沈みこむ。


落とし穴だ。

爆炎に紛れて、ミャアがあらかじめ掘っておいたものである。


「さよなら。」

ミャアはそんな言葉と共に小瓶を一つ投げ入れる。


「どぉぉぉぉぉーーーーーーんっ!!」


小瓶の大きさの割に大きな爆音が響き渡り、戦士は絶命する。


その後、爆音を聞きつけて戻ってきたもう一人の戦士を、同じようにトラップと爆弾のコンボで屠り、罠で捕らえた斥候役のシーフ系プレイヤーにとどめを刺す。

絶命させる前に「襲ってくるなら容赦しない」という一言を残して。


そして、相手を全滅させたら、戦利品剥ぎ取りタイムである。

「……んー、やっぱ、私って舐められてる?」

相手プレイヤーは、かなり所持品を持ちこんでいた。

予備の装備に、ドロップレアのアイテムなどなど。

露店でたたき売りしても、全部で3~4Mにはなるだろう。

そして……。

「あらら……運がいいのか悪いのか……。」

戦士の一人が装備していたロングソード。

ボスからのレアドロップ品で、プレイヤー間で20~30Mで取引されている希少品。

所有者も保険はかけているのだろうけど、PK戦に限り、装備品は保険を掛けていても5%の確率でロスト(奪われる)仕様になっている。

勿論、失ったとしても、賭けてある保険金は戻ってくるのだが、手に入りにくいレアアイテムは、お金では中々購えなかったりするものだ。


「……なんかねぇ、USO初めて1ヶ月経ってないのに、レアアイテムに、そこそこ詳しくなってるってどうなの?」

そんな事を呟きながら、覆ってきたプレイヤー達の持ち物を身ぐるみ剥いでからその場を立ち去る。



「はぁ……。またあなたですか?」

「そう、つれなくしないでくれよ。」

家の近くで、バッタリと会ったプレイヤー。バッタリ会ったと言うか、彼は家の近くで待ち伏せていたようだ。

「はぁ、……お話はここで?それとも中に入りますか?」

ミャアは諦めたようにそう告げる。

「また改装したみたいだし、中に入れてくれよ。」

「……あなたに見せる為に改装したわけじゃないんですけどねぇ。……どうぞ。」

一時的に家に招き入れるインスタントキーを、彼に発行してから家の中に入る。


元々「豪華なログハウス」だった家は、今はオープンテラス付きの工房へと様変わりしていた。

ハウジングについていろいろ教えてくれたのは、目の前の椅子に座っている彼である。

ミャアは、ハーブティを二人分用意すると、一つを彼の前に置き、もう一つを持って、彼の対面に座る。


「それで、なんの用なの?」

「あぁ、ミャアちゃんにお願いがあるんだ。」

彼はそう言って、ミャアの目の前に一振りの剣を見せるのだった。

突然現れたプレイヤーの正体は???

次回明らかにします(=・=)



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