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いざ、USOの世界へ!

新作です。

他作品のネタを考えてたら、なぜかこの作品が……

とりあえず、GWを使って書いた作品という事で内容としては中編になります。

大体6万から10万文字程度を予定してます(幅広過ぎっ!?)

ドォォンッ!


大きな爆発音とともに、坑道を塞いでいた岩が砕け散る。


「やぁー、助かったよ。これ報酬な。」


男がミャアに、革袋を渡す。


ミャアはその場で中身を改め、約束通りの報酬300ゴルドが入っていることを確認すると、それを収納へと入れる。


「じゃぁ、後は勝手に採掘してもいいよね?」


ミャアはそう男に確認する。



「あぁ、約束だからな。その代わり、爆発物は控えてくれよ。」

男はそう笑いながら坑道へと姿を消す。


「許可も得たし、掘り尽くしますか。」

ミャアは、誰にともなくそう呟いて、つるはしを取り出し、採掘ポイントを探す。


小一時間ほどたって、ミャアの収納が数種類の鉱石で一杯になる。

まだ入らないこともないが、これ以上詰め込むと、街へ戻る前に魔力切れを起こしそうなので、渋々諦めたのだ。


ミャアは、収納からポータルブックを取り出し、拠点にしている街を呼び出す。

「行ける所増えたよねぇ……。」

ポータルブックは、登録した場所ならどこにでも一瞬で移動できる、この世界ではなくてはならない重要アイテムだ。

行動範囲が広くなれば、当然登録個所も増え、その内一冊では済まなくなるだろう。

1冊目の残りページが少ないのを見て、いつの間にか、自分がこの世界に馴染んでいるんだなぁと、感慨にふけるミャア。


「始めたばかりの頃はどうなるかって思ってたんだけどねぇ……。」

ミャアはそう呟きながら、ある町のページを開き、その街へ一瞬にして移動する。


グランベルク王国の首都アイン……通称始まりの街。

VRMMORPGである、アルティメットスキルオンラインに初めてログインした時に出るのがこの街だ。

ここでチュートリアルを経て、一人前の冒険者として旅立っていく……はずなのだが、意外と、この街を拠点にしている古参プレイヤーが多かったりする。


見慣れた街に戻ったミャアは、キョロキョロと落ち着きがなくうろうろしている、新人プレイヤーを見つけ、自分もああだったのかな?と、初めてログインした時緒の頃を思い出すのだった……。


◇ ◇ ◇


「みやちゃん、起きてる?」

そう言いながら、病室に入ってきたのは、お母さん。

手には、いつもとは違った袋を持っていた。


「うん、起きてるよ。……どうしたの?今日は早いよね?」

「えぇ、先生とお話があったから。」

母のその言葉に、美也子の顔が少しだけ陰る。

「そんな顔しないの。検査の結果は良好だから、来週には退院できるそうよ。」

「ホントっ!?嬉しいなぁ。」

美也子の表情が、一転して、ぱぁっと華やぐ。

それを見た母はクスリと笑って、手にしていたモノを渡す。


「はい、これ。先生もね、リハビリの一環としては悪くないっておっしゃってたわ。……でも、あまり長時間はダメよ?」


そう言って母が渡したものは、H(ヘッド)M(マウント)D(ディスプレイ)型のゲームコンソールだった。

世界初と言われるVRMMORPG・アルティメット・スキル・オンライン、通称「USO」をプレイするのに必須のコンソールだ。

今後、VRゲームは増えていくといわれているが、MMORPGは現在ではUSOが唯一のタイトルだ。


このゲームを美也子に薦めてきたのは、担当の看護師である恵子だった。


美也子は生まれつき身体が弱く、幼い頃から入退院を繰り返してきた。

その為、筋力の発達が思わしくなく、激しい運動が出来ないから「健康な体づくり」が出来なくて体力がない。

結果として、ウィルス等への免疫が弱く病気にかかりやすいという悪循環が生まれていた。


このまま、寝たきりの状態が続くと、神経が「歩き方」や「動き方」をうまく伝達できなくなる恐れがあるのだが、VRで自由に動き回ることによって、そのリスクが減るだろうといわれ、医師からも推奨されているって教えてくれたのだ。


そもそも、病弱とはいえ、なんとか人並みの生活を送っていた美也子が、半分寝たきりに近い今の状況になったのは4月の半ばの事、進級したばかりで、美也子の事を知らない生徒が多い状況下で、その事件は起きた。


美也子が病弱であり、他種のアレルギー疾患があることは、学校側も理解している。その為、体育の授業など、身体を激しく動かす授業は免除してもらい、給食の時は、彼女に合わせたメニューを出してもらっている。


それらの事は、学期初めに担任から他の生徒へ伝えられている筈だった。

しかし、今年の美也子の担任は、赴任したばかりの、やる気に満ち溢れた若い教師だった。

彼は、下手に説明して、美也子が孤立することは望ましくないと勝手に考え、彼自身の独断で、美也子の体質の事を他の生徒に告げることはなかった。


美也子はそのことに一抹の不安を覚えたが、担任が「大丈夫だ、任せておけ」と豪快に笑いながら言うので、それ以上の事を言うことが出来なかった。


しかし、そうなると他の生徒から見れば、美也子が特別扱いを受けているようにしか見えなくなるものだ。


例えば給食。

皆は同じものを分けて配膳するのに対し、美也子だけは、一人分を給食室から直接貰ってくる。

と言っても、他の生徒と大きく変わっているわけではない。

ただ、アレルギーに関する食材を抜いて、他の生徒より厳重に殺菌している、というだけで、一見他と変わる事はないように見える。


だが、思春期の年頃の生徒たちには、それが「特別扱い」「依怙贔屓」に見えたのだろう。

嫉妬にかられた生徒が、ある日その給食に悪戯を仕込んだ。


悪戯と言っても、大したことではない。自分の牛乳を美也子のモノとすり替えただけだ。

このことはクラスの大半が知っていて、皆見て見ぬ振りをしたり、すり替えに協力といった「積極的に関わった」者もいた。


実行した生徒に悪気はなかった。美也子が特別扱いされていたのが気に入らなかった、ただそれだけの事。

それに、やったことと言えば、自分が飲むはずだったものと、取り替えただけ。ただ()()()()()()があんな大ごとになるとは思わなかっただろう。


実際、相手が美也子でなければ、大したことにもならなかったはずだし、また、牛乳の封が切ってなければ、美也子も気づいたはずだ。実際すり替えた本人も、最初は封を切る前に行うはずだった。


しかし、すり替えた牛乳が封を切る前であったら、美也子が気づき、計画が破綻するかも、と考えた「積極的共犯者」が、封を切った後にすり替えさせることに決める。

後で、「間接キスだぁ!」とはやし立てて騒ぎを大きくすれば、美也子に対してダメージを与えられると考えたのだろう。


そして、その実行日、計画通り美也子が友人に呼ばれ、一瞬席を離れた瞬間に牛乳はすり替えられた。

勿論、美也子を呼んだ「友人」も計画の共犯者だった。

大した用でもない世間話をした後、席に戻った美也子は、喉を潤そうと、牛乳を一口飲む。


それを見た男子たちが盛大に冷やかし始めるが、美也子は何も言わず、ただ俯いて……そして倒れた。

当然、教室内は大騒ぎになり、救急車が学校へ来て、全校生徒が知ることになる大事件へと発展した。


美也子の身体にとって、牛乳に含まれるアレルゲン物質は特に有害だった。

だから、美也子だけは十分に加熱した豆乳が渡されている筈だった。

美也子だけ豆乳だという事は、他の生徒へは知らされえていない。見た目それほど変わらないのだから、無用な軋轢を生むようなことは知らせるべきではないだろう、という担任の独断によるものだった。

結局、この担任の独善的な考えに基づいた他の生徒に対する配慮によって、美也子が危険に晒されたのは間違いなのだが、当に担任は「自分の判断は、該当生徒を無用な孤立に追いやらないためのものであり、また、他の生徒がこんな子供じみた悪戯をするというのは想定外だった」などと、他者を思いやれに生徒だ、と言わんばかりに自己弁護をしていた。

また、他の生徒からしてみれば「知っていたらやらなかった」という言い分であり、双方共に「自分は悪くない」と言い張っていた。


どちらにしても、この『悪意なき悪戯』のせいで、美也子は長期の入院を余儀なくされ、それによる体力の低下は、一時期は日常生活を送るのを危ぶまれるほどだった。


美也子本人も、事件のショックとこの先の事を考え、半ば人生を諦めかけていた時だったので、看護師の恵子が話してくれたUSOの事は、大変魅力的な話だった。


だから、美也子は普段あまり言わない「わがまま」を母に言い、その待望の機器が、今、こうして手元へとやってきたのだ。


「これを使えば、自由に動けるんだよね?」

そういう美也子に、傍に付き添っていた恵子がクスリと笑う。

「だけど、調子に乗って時間忘れないでね。」

恵子がそういうと、機械の使い方を簡単に教えてくれる。


実は、この機械だけでプレイすることは出来ない。

USOをインストールし、アカウントを習得したうえで初期設定をしなければならないのだが、それらの事は、すべて恵子がやってくれたのだという。

「あとは、ログインしたら、自分のプレイにあわせたスキルを選ぶんだよ?……今からやるなら、夕食前までね。」

恵子はそう言ってHMDを渡してくれる。


「うん、わかった。」


美也子は嬉々としてHMDを装着し、ベッドに横になる。

ほどなくして、催眠誘導波により、美也子の意識は深い眠りにつく……意識が途絶える前に、母と恵子が何やら喋っていたようだったが、内容までは聞き取れなかった。



「……じゃぁ、明日また来ますので。」

「天塚さん……希望は捨てないでくださいね。きっと……。」

「……はい、私はまだ大丈夫です……。この娘が笑っている間は……。」

美也子の母は、そう言いながらゲーム世界に行った娘の髪を優しく撫でる。

その姿に、恵子は何も言えず、ただ立ち尽くすだけだった。


VRMMORPGの世界を題材にした様ある定番のスローライフを目指してます。

一応文庫本1冊程度で完結予定ですが、人気があれば、その先も続けるかもしれません。


ご意見、ご感想等お待ちしております。

良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。

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