トランプ1枚がない!
「今日、僕はみんなでトランプゲームをした。不思議なことに1枚数が合わない。そう、1枚、トランプが無くなっているのだ。この夏の暑い時に、こんな事が起きるなんて気持ちが悪い事だ。」
「秋磨、何しているの?さっきから何度も呼んでいるのに、どうして降りて来ないの?ご飯よ。」
「母さんの呼ぶ声だ。そろそろ、この辺で日記を書くのはやめておこう。」
そう書いてから、
「今すぐ降りるから。」
素早く机の中にノートと鉛筆と消しゴムを入れて、急いで部屋から飛び出して行き、階段を降りて行きました。
「ごめん、ごめんなさい。」
「何してたの?さぁ、ご飯たべましょ。」
「母さん、もう食べてるの?」
「えっ?!あぁ、ちょっとつまみ食い。」
「最近、母さん、つまみ食い多くない?」
「そう?」
「おやつ食べてるか、何かつまんで食べてるか、だもん。僕がよく目にするお母さんの姿。太っちゃうよ。」
「あら、心配してくれてるの?ありがとね。いろいろとね、なんだかストレスがたまってくるとね、食べたくなるみたいなのよ。」
「ふーん。それはそうと、巴奈とお父さんは?」
「秋磨、意外とあっさりとしているのね。巴奈は塾、お父さんは会社からまだ帰ってないわよ。さぁ、お食事にしましょ。」
2人は椅子に座って、ゆっくり食べ始めました。
「秋磨、今日、お友達が何人か来ててトランプしてたでしょ?」
「う、うん。」
「騒がしかったけど、何か起きたの?」
「ちょっとね。あっ、母さん。」
「何?」
「この後、あのメンバー、友達と又、トランプゲームしていいかな?」
「家で?」
「うん。」
秋磨はテーブルに少し身を乗り出し、目が輝いていました。
お母さんは、家に来てもいいんだけど、みんなの帰りが遅くなるのではないかと心配しています。
「来てもいいんだけど、帰りが遅くなるんじゃないかしら。」
「大丈夫だって、みんな男子だもん。」
食事の時間は流れて行きました。妹の巴奈ちゃんとお父さんはまだ、帰って来ていません。
「ごちそうさま。」
急ぎながら早口で言い、素早くはしを置くと自分の部屋へ、2階へと上がって行きました。
「まず最初に、あいつに電話をかけようっと。」
「・・・あっ昭文、今から僕んちこない?」
「えっ?!今から?どうして?」
「トランプをするんだよ。」
「うーん、ま、いいけど。」
「じゃあ、8時に。」
「うん、わかった。」
「じゃあ。」
秋磨はこの調子でいくと、昼過ぎにトランプをやっていた5人みんなが集まってくれるような気がしました。
「あっ広樹、俺、秋磨。」
「どうしたんだよ、急に。」
「今から僕んちこない?」
「なんで?」
「トランプをするんだよ。」
「なんで?・・・あっ、あのトランプが1枚あるか、ないか、騒いでたからか?」
「まぁ、そうだけど。」
「いいよ、別に。」
「じゃあ、8時に。」
「ジュース頼むね。」
「わかったよ。」
「・・・崇くん、いらっしゃいますか?秋磨ですけど。」
「あっ、ちょっとまってね。」
「はい、代わりました。」
「崇、今からトランプ、家でするんだけど、僕んち来ない?」
「いくわ。」
「すんなりと決めたな。」
「最近、俺の人生、パッとしないんだよ。何か刺激がほしくてな。」
「ははは、じゃ8時に。」
「わかった。」
「最近はほとんどの人が自分の電話を持ってるから便利だなぁ。」
秋磨は独り言を言っています。
「公介?」
「あっ秋磨か?」
「突然なんだけど、今から僕んちでトランプゲームをするんだけど、来ない?」
「いいけど、もしかして今日した、あのメンバーでする予定?」
「ずばり、そうだよ。」
「何時から?」
「8時。」
「あぁ、少し遅れるかもしれない、犬の散歩してるんだ、2匹。」
「2匹?」
「大変だよ、1匹でかくて1匹小さいのよ。」
「待ってるから来て。」
「わかりましたよーん。」
「けっこう1度に何人かに電話すると、大変だなぁって思うなぁ。」
秋磨はなんだか、少し、ほっとした気分になりました。そして、ごろんと横になり、思いっきり背伸びをしました。
「あーっ眠たくなってきちゃった。」
そして、大きなあくびをしました。しばらくの間、軽く眠ってしまいました。
「秋磨、広樹くんがきてくださったわよ。」
「う、うん。」
目をこすりながら起きました。
「2階に上がって。」
部屋の入り口から大きな声で言いました。
「昭文君、来てくれたわよ。」
「2階に上がって。」
「崇君、来てくれたわよ。」
「2階へ。」
大きな声で言いました。
少し時間が経過しましたが、まだ公介君がやってきてくれません。
約20分が過ぎました。
「公介君、来て下さったわよ。」
「おばさん、犬2匹、玄関におかしてもらっていいですか?」
「…いいわよ。」
秋磨くんが下りて来ました。
「犬も連れて来たの?」
「このまま連れて帰ると、遅くなるからね。だから。」
「上がって。みんな来てるよ。母さん、犬、どこかにつないで。」
そう言うと、2人は2階に上がって行きました。
「それにしても、もう少しきれいにしたらいいのに。」
お母さんは犬を見て、ボソッと言ってしまいました。
「これでみんなそろったから、早速、トランプゲームをっと。」
「なんだか、ドキドキするね。」
崇くんが言いました。
「まず始めに、ばばぬきを。」
秋磨くんが配り、ゲームが始まりました。そして・・・
「あーっ!1枚、数が合わない!やっぱり、おかしい。」
「最初から1枚ないんじゃないの?」
広樹くんが言いました。
「始まる前に数えた時、ちゃんとあったんだよ。」
「そうだったら、おかしい。」
昭文くんが腕を組みながら言いました。
「よし、次は7ならべをすれば…」
秋磨くんは真面目な顔をして言いました。
「あーっ!ダイヤの8がない!トランプが1枚ない!」
みんなが声を合わせて言いました。
その時です、お父さんと妹の巴奈ちゃんとおじいさんが帰って来ました。
「ただいま。」
「お帰りなさい。」
「2階騒がしいね。」
お父さんが言うと、
「ええ、秋磨と秋磨のお友達とで、トランプで遊んでいるのよ。」
すると、おじいさんが顔色を変えて、2階へ走って上がって行きました。
「秋磨!」
「おじいさん、どうしたの?顔色変えて。」
「トランプ、ほれ1枚。」
おじいさんは財布の中から、ダイヤの8を出しました。
「あーっ!」
5人いっせいに声を出しました。
「なんで持ってるの?」
「おまじないなんじゃ。」
「えっ?!おまじない?」
「そうじゃ、ダイヤの8を財布に入れておくと、金運が良くなるって、巴奈が持っているおまじないの本に載っていたんじゃ。」
巴奈ちゃんは2階に上がっていて話を聞いていました。
「おじいちゃん、勝手に人の本を読まないでよ。」
「ははははは、ごめん、ごめん。」
「いつの間に取ったんだよー。」
「最初は、ほら、秋磨がトランプするとは知らずに1枚、抜いてしまったんじゃ。」
「朝、トランプする前は確かめずに、そのまましたからなぁ。じゃあ、今してたトランプは・・・
あーっ、軽く眠ってしまった時に・・・。」
「そうじゃ、1度はトランプ元に戻したんだけど、トランプ新しいのを買えば良いと思って、又、抜いてしまったんじゃ。ほら、新しいトランプ。」
おじいさんは買った新しいトランプを見せました。
「わぁ、このトランプと一緒じゃないの。」
秋磨はびっくりしました。今、使っているトランプと全く同じだったからです。
「みなさん、ジュースが入りましたよ。」
お母さんが持ってきてくれました。
「おお、ちょうど喉が乾いていたところじゃ。」
おじいさんが1番にジュースを取りました。
そして、何日か後に秋磨は日記に、
「トランプ、1枚足りない原因はおじいさんだとわかった。金運はアップしているのだろうか?それにしても又、同じトランプを買ってくるなんて、余計にややこしくなると思う。妹も、あのおまじないをしてみようって、言ってたから。」
おわり