06 ロキモンド邸
イスリー領民たちが宮殿と呼ぶレゴール・ロキモンドの館。豪奢な調度で飾られたその接見室には、第七魔装旅団の団員たち、そしてレゴールとエスランの親子が会していた。それに緋色の少女、ユノーも加わっている。
「で、これを私にどうしろというのかね?」
レゴール・ロキモンドは両の手で太鼓腹を撫でつつ不機嫌な唸り声をあげた。
仔細は息子のエスランから聞き及んでいたのだろう。ユノーが歴史的な遺物であることが判った時点で、レゴールはこれが厄介物だと悟ったらしい。
バツーの文化財法では重要な宝物が出た場合、必ず所定の機関の調査が入ることになっている。特に歴史的価値が高いと判断されれば国が買い上げることになる。しかし文化財の買い上げに国が支払う額は二束三文であると聞く。
それよりもレゴールが心配したのは、中央から役人や学者やお偉方が入れ代わり立ち代わり辺境へやってくるだろうということだった。こんなものが出たと知ったら遺跡に対して本格的な調査も入るだろう。
レゴールはロキモンド家に代々伝わる『緋色の宝玉』の正体がてっきり華炎石のことだと考えており、こっそり換金する気満々であった。まさか息子が本当に『学術的価値のある遺物の採取』をしてくるとは夢にも思っていなかったのである。
調査機関はレゴールにも聞きとりを行うだろう。長期間放置していた領地になぜ度重なる調査隊を出したのか、今までにどういう経緯があったのか、根掘り葉掘り問うだろう。動機についてもつぶさに聞かれるだろう。調査隊の中には帰らぬ者もいたという。隠しておきたいことも多々ある。加えて今回、息子のエスランを含む第七魔装旅団の探索隊が、肝心の遺跡を滅茶苦茶に破壊してしまっている。それが明るみになった場合、その責任がレゴールに巡ってくるのは明白だ。
まったく嬉しくない。『緋色の宝玉』の大発見は公にできない。よしんば誰かの口から漏れたとしても、少なくともこの発見にロキモンドが関わっていた事実は闇に葬り去って無関係を装いたい。これまでダントゥーガ一帯が『魔物の名産地』として悪名高くまた周辺に迷惑をかけまくったのはそもそもロキモンドがその管理を怠っていたせいだなどと言えるわけがない。ダントゥーガ遺跡の石扉を再封印して魔物発生の元凶を絶ってしまったジューフリスに対しては、却って余計なことをしてくれた、と内心憤りすら感じるレゴールであった。
「ですから、このお屋敷に置いてやってください」ジューフリスはユノーの片腕を取ってひらひらと振った。「力仕事得意です」とニッコリほほ笑む。
レゴールは薬草の中で最も苦いといわれる生のガガギ苔を大量に呑み込んだような渋面になった。こんな目立つモノを屋敷に置いておいたらどこから噂が広まるかわからない。
「しかし……動かし続けるには魔法が必要だというではないか。我が家には魔法士などおらん」
「では魔法士もお雇いになれば」
「そんな余裕ないわ」
民間で魔法士を雇うには厳しい規定がある。辺境伯といえど例外はない。第七魔装旅団の上部機関である統括省あるいは国防省は魔法士のことをがっちりと囲い込んでいる。民間が雇用することじたいは不可能ではないが、さまざまな条件があり、むろん探られたくないハラ――結局そこに行きつく。
ジューフリスもむろん承知であって、話しの流れに乗っただけだった。魔法士の雇用を本気で勧めているわけではない。
すると何を思ったかふと息子のエスランが鼻筋を掻き掻き、「私にいい考えがある」と呟いた。
「ジューフリス、私の専属魔装師にならんか」
「えーと、それはつまり……」
彼女はこれ以上ないという間抜け顔をする。
「ええい。これくらい察しろというのだ」エスランが面倒臭げに、「このエスラン・ロキモンドの嫁……にならんか、ということだ!」
「え……」
「ええーっ!」
その場の一同は仰天した。最も驚いたのは父親のレゴールだろう。
「お前は……何を言っておるのだ……」
さすがのレゴールもこれには呆れて天井を見つめた。
「よ、嫁なら雇用ではないからな。ち、父上の案じているような面倒ごとはあるまいかと……」
ジューフリスがあまりの唐突さに驚いて黙っていると、エスランは続けた。
「お前は将来の辺境伯夫人。どうだ? 好きな魔法の研究をしながら一生遊んで暮らせるぞ。悪い話ではないと思うのだがな……」
「お断りです」
当然ながら即答である。
それを聞いて旅団の面々はめいめいに頷いた。
エスラン本人はガックリと肩を落とした。
「それよりも」とジューフリスはまるで今の話を無かったことにするかのような勢いで、「この子には価値があるんですよ。ほら、資料にもあるのでしょ? 『それを真に所有せんとする者は、宝玉との契約が必要である。さすれば宝玉が宝玉たる真の価値が与えられる』って」
辺境伯はさらに難しい顔になって、
「エスラン……お前喋ったのか」
「は、いけませんでしたか?」
エスランは戸惑いぎみに父親の仏頂面を伺ってオロオロしはじめた。
「で?」と辺境伯。
「で、とは?」
妙な間のあとで、恐る恐るジューフリスが問い返す。
「聞くだけは聞いてやろうというのだ。その『真の価値』とやらは何なのだ?」
「え……と……それは……ですね……」
ジューフリスは言葉に詰まった。緋色の宝玉、ユノーの真の価値。それは、圧倒的な戦闘力である。ユノーがその気になれば、国家の軍隊だって相手にすることが可能だ。しかしレゴールの本心がなんとなく見えているジューフリスには、それを主張するといっそう抵抗されそうな予感がしている。
ジューフリスはジューフリスで、これはかなり厄介な事態だと焦っていた。できればこのまま真の重大さが腑に落ちていないロキモンドのもとにさりげなくユノーを置いて帰りたい。連れ帰っていろいろいじくりまわしたいのは山々であるが、統括省が黙っているわけがない。
マルトハルコやドルファスに仕えたという『紅の四戦騎』に関する情報はすでに伝説化、形骸化しており機密でも何でもないから、大多数の者がその逸話を知っている。緋色の少女と聞けば、勘の良い者はすぐにピンとくるだろう。そして、その話がどこかから国防軍あたりに漏れただけで、下手をすると内乱にまで発展しかねない。ユノーはそれほど危険なものなのだ。いわば国家滅亡級の軍事兵器。そんなものを中央へ持ち込んだりしたら、力の均衡を大きく揺るがすことになる。いずれジューフリスの手にはとても負いきれない力である。
ジューフリスが魔力をたっぷり充填してしまったせいで、高効率な魔力循環機構をそなえたユノーは少なくともあと三十日、ことによるとその倍くらい稼働し続ける可能性がある。たとえ隠しおおせたとしても、そんなに長い期間ユノーを中央に置いておくのは危険だ。まさか稼働中は遺跡に戻せないし、いちばんよいのは、事情を知っているエスランにこっそり事後を託してここで平穏に過ごさせ、活動停止後に元の遺跡に戻して再封印することだ。
するとそれまで様子を見ていたユノーがぽつりと口にした。
「私のご主人はジュー、あなたです」
「ほらコレもそう言っておる」
「ユノー……」ジューフリスはユノーの両肩に手をかけて、「あたしがあんたを中央なんかに連れていったらまたなにかと問題が……」
「問題?」
レゴールの目がきらりと光った。
「問題……あ、あるわけないじゃないですか! ない。問題はないです。まあ……しばらく経てば魔法は抜けますし。観賞用におひとつ、いかがですか? ほら、美しいでしょ動く宝石」
とユノーの肩を後ろから掴み、辺境伯の前に押し出す。
「気持ち悪いわ」
美術品としても、ユノーはレゴールの琴線に触れないようである。
つまるところロキモンドは中央の目の届かないところで私腹を肥やしつつ、のうのうとやっていたいだけの小心者なのだ。彼は彼で、持ち前の鼻でユノーが相当きな臭いものであることを嗅ぎ取っている。たとえわずかな期間にせよ、自分のところで火種を抱え込むのは迷惑千万。そんなものを自宅に隠し持っていることがもし国防軍にでもばれたら、いったい何が起きるかわからない。
「いっそ砕いて売ってしまうのはどうだ」
それにはジューフリスが猛反対。
「とんでもない! 売ったって二束三文よ。中身はどこにでもあるただの石なんだから」
「そ、そうなのか……表面のマルトハルコとやらだけ取り出すわけには」
「いかないわね。そもそもこの子、たぶん砕けないわ。いまのどんな技術をもってしても」
「んな馬鹿な」とレゴール。
「わたしのご主人はジューフリス様です」
「ほらコレもそう言っておる」
結局は堂々巡りである。
ユノーはジューフリスに向かって切実に訴える。
「いずれにしても、わたしこんな太った醜い男に傅く気はありません」
「おいこの無礼なデク人形を今すぐ粉々にしてしまえ」
「それはわたしに対する戦闘宣言でしょうか。わかりました、受けて立ちましょう」と、ユノーはレゴールをきっ、と睨みつけると、剣を鞘からスラリと抜く。「ええと確か……こういう場面で使用すると効果覿面だという言葉を習ったことがあります」
「は?」
意味がわからずレゴールがしばし固まっているとユノーは、
「たしか……ああそうです、思い出しました!」
足をすうっと引いて剣を構えるユノー。
その構えは独特なものだった。
細身の刀を水平に構え、頭の後ろまで柄を引いてピタリと止める。とても戦いに適した構えとは思われないが、微塵の隙もない。刀身がギラリと不穏な光を帯びる。
「やれるもんなら、やってみな……」
「まてまてまてまて」とレゴールが慌てて遮る。
「やめやめやめやめ」とジューフリスもとりなす。「お、落ち着いてユノー」
「わたしは落ち着いています」
構えを崩さないユノーは、そのままの姿勢でロキモンドに視線を据えたまま威嚇し続ける。
「そうでなければとうにこの男の首と胴は離れてます」
ジューフリスは力づくでユノーの腕を下ろそうとするが、びくともしない。
「物騒なことは言わない。やめなさい。この人に戦意はないってば」
「そうですか……」と、主の命にしたがって、ユノーはやっと構えを解いた。
「もう……よくそんな言い回しを知っているわね。あんたの前のご主人てもっとおカタい人じゃなかったの?」
「前のご主人の……ご友人に教わりました」
「あっそう」
「でもわたしの前のご主人もカタくはなかったです。どちらかというと柔らかかったかも……」
「そりゃそうでしょうよ。あんた史上最高強度なんだから」
「おっと。前のご主人に関することは口外してはいけないことになっています」
ジューフリスはじっとりした目線をユノーに送る。
寸劇めいたあれこれが一段落すると、辺境伯レゴール・ロキモンドはひとつ咳払いをしてから、断固として宣言した。
「とにかく、この人形は第七魔装旅団でどうにかしろ」
団長のマルケロが、皆と顔を見合わせて肩をすくめ、「ふぅ」とひと息。
◇
「やれやれ。今回はとんでもない出費だったわい」
何とか無理矢理にカタをつけたレゴールが肩の荷を下ろしたように呟いた。
「あははー」
旅団の面々はもう失笑しか出ない。
すると何を思ったかエスランがまたも口を開いて、
「出費ついでに父上……」
「なんだ」
「ダントゥーガをどうにかしましょう」
と父親が真向から反対しそうなことをまた言い出した。
「なんだと?」
「元々当家の領地ではないですか。きちんと祭祀を行えばまた民が住めるようになるのです」
「フン、もう遅いわ。あんな化け物だらけの樹海地帯、誰がいるものか」
「元は当家が管理を怠ったせいですよ。根源は絶ったのですから、あとは現存の魔物を退治すれば、それ以上は増えません」
「知らん知らん」
「なら、私に下さいませ」
「お前に? ダントゥーガを?」レゴールは目をぱちくりとさせて、「無駄だ」という。
「領地が増えるのですよ?」
「金がかかりすぎる」
「当家の美術品をいくつか売ればよいのでは」
「お前……生意気になりおったな」
「私が生涯をかけて立派な領地にしてみせますよ」
「ずいぶん野心的だのう。大丈夫か? 遺跡探索で頭でも打ったのではないか?」
「本気です」
と見ればエスランの目にはつい数日前まではなかった情熱の炎のような輝きがある。
しばし見つめ合う親と子――。
やがてレゴールが口を開いた。
「まあ、お前がそこまで言うなら、多少のことは考えてやらんでもない……が」
「あ、ありがとうございます!」
レゴールにしても、今回のことで息子のエスランが多少使いものに値する働きを見せたことは嬉しい結果だった。それに魔物が増えなくなったダントゥーガ一帯をこのまま放置しておけば、早晩探検家どもが勝手に入り込んで遺跡を発見しないとも限らない。それよりは自分の管理下に置いておくほうが賢明であろう。
◇
マルケロは二人の様子を微笑ましげにニヤニヤ笑って見ていたが、
「では、そろそろ我らは行くとしよう」
と真顔に戻り、立ち上がった。
「辺境伯どの。どうもお世話になりました」
頭を下げるマルケロに対してレゴールが、
「うむ。お主も息災でおれよ」と不愛想に言い放った。
屋敷の門まで見送りにきたエスランに対し、ノヤックがその肩をぽんぽん叩いて、「頑張れよ、エスラン!」と激励する。「あのごうつくオヤジを超えろよ」
するとエスランは迷惑そうにその手を振り払って、
「旅の武装集団に激励など受ける筋合いはない」と、あくまでも迎合しようとはしない。「それに私は父上を尊敬している」
「あっそう」
ノヤックもそれ以上は何をも言わず、踵を返した。
港の団船へと戻る途中のことである。
「ようジューフリス」とノヤックが振り返って、「まさかあのボンボンに結婚の申し込みをされるとはなぁ……」
「変な話を蒸し返さないでってば」
ジューフリスは心から嫌そうに顔をゆがめた。
だがノヤックはその口を閉じようとしない。
「そういやボッツ、あんときおめえかなり動揺してたよなァ?」
「してないです」
ボッツはきわめて冷静な態度を装っていたが、声が上ずっている。
意外にもそこにカウネも乗っかってきた。
「あいつ最初はジューに不満タラタラだったじゃないのさ」
「みんな、もうやめてってば!」
ジューフリスは足を速めてスタスタ先へ歩いていってしまった。
「カウネ、知ってたのか」
先を行くジューフリスの背中を見つめてマルケロが言う。
「もちろんよ」
「あいつ、最初はカウネがいいと言っていたぞ」
マルケロが言うと、それを聞いていたノヤックはケハハと妙な笑いをして、頭の後ろで手を組み、
「節操のねえやつだなあ……女ならだれでもいいのか」
するとカウネと、先を行くジューフリスもくるりと振り向いて、同時に、
「ちょっとそれどういう意味!」
と声をそろえた。
「そ、そういう意味じゃねえよ……」
両者から睨まれてノヤックは小さくなる。
マルケロが取り繕うように言う。
「エスランは強い女が好きなのだ。彼には彼なりの重圧があるのだろう。その不安を払拭してくれるような頼りになる女を無意識に望んでいるのさ」
「真面目にやってりゃそのうち良縁があるだろうよ」ノヤックが言う。
「そうして縁は繋がっていくのね」
ジューフリスが感慨深げに言った。
「ジューフリス、何を考えてる」
マルケロの問いにジューフリスは、
「今回は団長の縁から繋がったわけでしょ。それが無ければ……」
と、ユノーに視線を送った。
ユノーは先ほどから黙って後ろを歩いていたが、その様子に何かを感じてジューフリスが問う。
「どうしたの、ユノー」
「わたしは邪魔者……ですか」
「そんなことないない。うん。ないよ!」
慌てて取り繕ったジューフリスであるが、接見室で彼女のことを互いになすりつけ合った場面には彼女もいた。ジューフリスは明らかに認識不足だった。まさかマルトハルコの人形がこんなに繊細で人間的な自我を所有しているとは思わなかった。
「ならばなぜジューはわたしをあのような劣悪な環境下に放置していこうとしたのですか」
ユノーが問う。
「劣悪……あんたにとって良い環境が何なのかはともかくさ、なんというか、そうだ、歴史的遺産を勝手にもらっちゃった感じ? 維持管理が大変っていうか……持て余す、ってわかる?」
「馬鹿にしないでください、それくらいわかります」
「ごめん……」
すると、すまなそうに縮こまるジューフリスに対して、ユノーが突然閃いたように指を立てた。
「ならば、わたしは正体を隠し、イスリーで雇いいれたジューの付き人、ということにしましょう。これからはジューのお側で仕えることにします。身の周りのお世話とか。いわゆる小間使いです」
「な……」
それまで低調を保っていたユノーの言葉がわずかに熱をおびはじめる。
「その正体は誰にもあかさず。日陰の身に……ふふふ」
ノヤックが、「何かおかしいこと言ってねえかこのイカレ人形は」と言うのを全く無視してユノーが振り返る。
「そうだ、少しお時間をください。いったん戻ってハシオさんに側付き用人の極意を伺ってまいります!」
「あー、いいからいいから」
ジューフリスは懸命になって止めた。
「おい赤いの!」
ノヤックの呼びかけに、今にも館に戻ろうとする姿勢で固まったままのユノーが答える。
「なんですか石潰し」
「おい。ジューフリスてめえ……」
「あ、あたしは何も吹き込んでないよ?」
「ちきしょうムカつくバカ娘が二倍に増えやがった……」
「何が言いたいのですか」とユノーは苛立つ。
「ジューフリスにくっついて行きたきゃまずその真っ赤っかなツラをどうにかしろ」
「これ、そんなにだめですかね……」
言ったノヤックでなくジューフリスに確認する。
ジューフリスは気を使って、
「だめじゃない。全然だめじゃないよ。でも、うん、ふつうの人と比べるとちょーっと奇抜な感じはするかなぁ……」
するとユノーが、なぜだかボッツの方をまじまじと見つめている。
「な、なんだよ……」
「わたし、思いついてしまいました」
「何を?」
「ふふふふふ」
「何よ気味の悪い笑い方して」とジューフリスも疑問を投げかける。
「内緒です」
「さあお前ら。急いで船に戻るぞ。目指すは中央、わが街よ! うははは」
マルケロの言葉に全員がうなづく。
「お腹減ったぁ」
「結局最後まで茶の一杯も出なかったな」とノヤック。
「もう気にするなよ」マルケロがなだめる。
「してねえよ」
「船に戻ったらすぐ食事にしよう」
「それもいいが、俺ぁ中央のメシが恋しいぜ」
「そう。塩豆はもう食べ飽きたです」とジューフリス。
「そうだよ団長。中央に帰ったらうまいもん食わせろや」
「団長、おごってください」
「な、何だよみんな藪から棒に……」
ワイワイと団長にたかり始める団員たち。
「まあ、今回はお前らにもいろいろ迷惑をかけたからな。仕方ない。特別に奢ってやる。何が食いたいんだ?」
ジューフリスがしたり顔で、
「……決まってるでしょう」
と口角を上げる。
するとノヤックが横から、
「ロキロキ鳥な!」
(第一話 緋色の宝玉・完)