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【閑話】私の幼馴染み・1

3話ほど、ソニア・ハーバル子爵令嬢のお話が続きます。

読まなくても大丈夫だと思います。




【閑話】私の幼馴染み・1

 



「あら。ライったら今日もいないのね」


 愛しい幼馴染みに会いに来たのに、彼の姿は今日もまた、いつもの席にいなかった。鞄も上着もない。彼は今日も休むのだろうか。


 私の好きな濃い金色の髪を無造作に後ろで一つに纏めているその人の姿を探して周囲を見回したけれど、やはり今日も彼は学園に来ていないらしい。


「どうしちゃったのかしら」

 まさかあの真面目を絵にかいたような愛しい幼馴染みに限って、髪が上手く纏まらないという理由で学校をお休みすることもないだろう。

 つい自分の考えた馬鹿なネタに、自分で笑ってしまった。


 幼馴染みのライは、授業は真面目に受けるし、服装に乱れが出ることもない。

 けれども自身がどう見えるかについては無頓着なトコのある彼は、髪を纏める事にも無造作すぎて、ほつれた髪がひと筋、頬に掛かっていることもよくある。

 ソニアはそれを耳に掛けてあげるのが好きだった。


「自分でするから」

 恥ずかしそうに宝石みたいな水色の瞳を逸らしながら顔を逸らす、その照れた仕草も、だいすきだ。

 


「あらぁ? 特別な幼馴染みなのに、グリード様が休まれている理由をご存じないのですね。不思議ねぇ」


 嫌味な女が近づいてきて嫌味を言ってくる。

 ライと同じクラスだからと鼻に掛けてばかりいる。ホントに失礼で嫌な人だ。

 私の顔を見つける度にわざわざ席を立ってまで近寄ってきては嫌味を言っていく。

 本当に、厭な女だ。

 同じ子爵家の癖に妙に偉そうな態度で、最近では顔をみかけるだけで憂鬱な気持ちになる。


「ごきげんよう、イラナ・ディーヴ様。ライは今、寮生活をしているんですもの。幾ら幼馴染みの私でも、男子寮にいるライのことを完全に把握なんてできないわ。……授業が始まりますから、失礼しますね」

 軽く頭を下げただけで、ディーヴ子爵令嬢の返事も聞かずに歩き出す。


 ライと同じクラスにいるというだけで、まるで私よりもライに詳しいかのような態度を取るこの子爵令嬢が、私は大嫌いだった。

 このイラナ・ディーヴは確かに頭がいい。学園での学力考査が終わる度に廊下に貼りだされる、成績上位者三十名一覧でも常連だ。上位貴族がひしめく中で、下位貴族しかも令嬢でありながら二十位前後をキープし続けている。

 だけど、ライはいつも十位以内だ。彼女よりずっと上の成績でクラス長にもライが選ばれた。哀れでならない。

「働いてばかりいるグリード様に負けるのが納得できない」と、毎回ひとりで騒いでいる姿は有名で、自称ライのライバルなのだそうだ。

 まぁライは全然相手にしてないみたいだけど。

 いつも笑って「高額商品である私が、意識が高いだけの令嬢に簡単に抜かれる成績で許される訳がありませんから」と冗句で躱している。ざまぁみろって思う。


「ふん、何が“幼馴染みの私”、よ。グリード様がお休みになられている理由も知らされていない癖に」

 後ろから憎まれ口が聞こえるけれど、気にしない。

 ライは格好いいから。私が妬まれるのは仕方がない。当然の事なのだ。


 あぁ。でもまだお休みだなんて一体ライはどうしたんだろう。

 やっぱり病気なのだろうか。

 呼んでくれるなら、一晩中でも看病してあげるんだけど。キャー。

 

 多分これが領地にいる時なら、グリードの小母様も小父様も、私がライの傍にいることを許して下さる。ううん、望んで下さるのに。


 だって、幼い頃からずっと言われてきた。


「ソニア嬢のような愛らしい娘がいてくれたら良かったのに」

「ソニア嬢がライのお嫁さんだったらなぁ」

「いっそ、ライのお嫁さんになってしまわないかい?」



 そう。私はグリード伯爵夫妻から望まれているのだ!






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