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借金まみれの伯爵令息は、金貨袋を掲げたお姫様を夢見る  作者: 喜楽直人
第七章 夢の始まりは悪夢の終わり
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7-2.侍女は敬愛する主の心を推察する


7-2.



 内緒にすると約束したはずの情報を、アリーが勝手に奥様へ持ち込んだことで決まったお見合いだった。


 ラート家が候補探しに苦慮していても、名前さえ上がらなかった相手――それがライハルト・グリードという青年の立ち位置だった。


 グリード伯爵家の借金の額より、借金を作った理由が問題視されてきた。

 詐欺に騙される迂闊な男が父親だという事実、詐欺に遭った時の対処の拙さも最低最悪の悪手だったという。

 本人がどれだけ勤勉で真面目な性格だとされていても、義理父となる男がそれでは結婚生活に暗雲が立ち込めていると見るのが当然だ。


 多分アレッサンドラが自分から見合いについて両親へ相談できなかったのも、自分で調べてみて糞のような両親について知ったせいなのではないかとアリーは推測していた。


 それでも、夢想することを止められなかった。

 それが初恋というものなのだろう。



 だから、二週間前のお見合い自体がアレッサンドラにとっては驚天動地の出来事だったことは想像に難くない。


 両親へ話を持ち込むことすら躊躇い思い悩んでいたアレッサンドラには、何も知らせないまま見合い会場まで連れて行って、突然顔合わせさせてしまうことになった。


 父であるルチアーノが、アレッサンドラの気持ちをそこで判断したいのだと言ったからだ。


「アレッサンドラが望んだからこの見合いが成されたのだと知れば、実際にその初恋の相手と顔を合せてみた時に『何か違う』と思っても言い出せなくなってしまいかねない。私が勝手に組んだと思わせたいのだ」

 確かにライハルト側の事情を調べてみれば、見合いを組む時点で、成約時にはあちらの条件を飲む可能性を提示しなければならない。


 そして、「実際の支払いは婚約が成立しなければされることはないが、初恋の相手に自分が望んで夢を見させておいて、それを拒否するような真似をアレッサンドラにできると思えない」というのがルチアーノの談で、それに母であるフランチェスカも賛同したからだ。


 ――まぁ実際には、初恋の相手と吃驚お見合いをして、驚き慌てる愛娘の顔が見てみたかっただけではないかとアリーとしては邪推していたのだが。


 当日現れたライハルトの対応は好ましかったし、何よりいきなりの対面に普段冷静な主がみせた動揺する姿は、主に対して心からお仕えするアリーの立場からしても、とても嬉しく微笑ましいものだった。


 ルチアーノもフランチェスカも納得したのだろう。

 元々下調べをして納得できたからこその見合いの席だ。役に立たない実父に代わり実質的に後見人的な役割を務めてきたブラン伯爵とも直接会話をしたらしい。

 幼い頃のアレッサンドラと今はフレードリヒが通っている訓練所はブラン伯爵が開いているものではあるが、訓練にきていた教官からの紹介であり、親交があるというほどの物はなかった。

 前騎士団長であるブラン伯爵は、この国では知らぬ者がいないというほどの傑出した存在であり引退した今も王族から一目置かれている。


 そんなブラン伯爵がライハルトに対して太鼓判を押し、親友が遺していった孫であるライハルト・グリードに突然開かれた未来への可能性を聞かされて涙するほど喜んだという。

 それだけの逸材だ。


 アレッサンドラが初恋の記憶との違いに幻滅でもしなければ、成立して当たり前というお見合いだったのだ。


 しかしあまりに突然、スムーズに婚約が成立してしまったからこそ、アレッサンドラの中で、実際に婚約を結んだ今となってもどこか夢心地で、信じ切れていないままなのかもしれない。





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― 新着の感想 ―
[良い点] まだ安心できないなぁ……もう一荒れあるのかな……
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