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1-1.始まりの呪い

『金持ち公爵令嬢と貧乏な王子様』ご愛顧感謝記念です。

ライハルト視点の長編です。

先にあちらを読んでからの方が楽しめると思いますが

こちらを先に読んでも大丈夫だと思います(多分w


1-1. 




「本当にお前は、お前の曾祖父(ひいじい)さんによく似た顔をしている」


 ライハルトの人生最初の記憶は、父から言われたこの言葉だ。

 そして、この言葉にはセットになっているもう一つ言葉がある。


「お前ならきっと、曾祖父ウィリハルトが作った借金を穴埋めしてくれる裕福な結婚相手に恵まれる」


 この二つの言葉は、その言葉の意味をライハルトが理解するようになる前からずっと、折に触れて父エリハルト・グリードがライハルトに向けて何度も話し掛けていたものだ。


 この二つの言葉は母以外の誰かの耳に入る度に、強い口調で否定された。

 特に、まだ存命していたライハルトの祖父ロイハルトの耳に届いた時などは、父が震えあがるほどの勢いで叱られていた。

 「子供に馬鹿な言葉を教え込むな」そう憤慨する祖父に、父は「軽い冗談ですよ」と及び腰で弁明しては足早に去っていった。


 父が去っていく背中を祖父は毎回眉を顰めて見送った後、「ライハルト。あいつの言葉は程度の低い悪質なものだ。忘れてしまえ」と切り捨てて、ライハルトに向かって、「今、グリード伯爵家が背負っている借金は、正しい領地経営をしていればいつか返し切れるものだ。正しい領地経営ができるようになる為に今はしっかり学べ」と教え諭し、その大きな手で頭を撫でてくれるのだった。


 祖父の大きな手はがっしりとしていて優しくて、ライハルトはその大好きな祖父の手で撫でられるのが、大好きだった。


 当時のライハルトは幼かったので、父の言葉の意味を理解し切れていなかった。だから「あぁまた父が言ってるな。祖父に見つからないといいけど」と思うだけになっていった。

 グリード伯爵として尊敬していて、「自分もいつか」と目指す理想像は祖父ロイハルトであったが、決してライハルトは父の事を嫌ってはいない。父が祖父や祖母から叱られている姿を見たいと思うこともなかった。だから父がどんなことをライハルトに向けて言っていたとしても、他の誰かに聞かれて祖父の耳に入らなければいいなとばかり思っていた。


 その頃は借金はあっても領地経営は上手く回っていたようで、祖父に同行していると、すれ違う民は皆、足を止め被っていた帽子を取って感謝の言葉と共に祖父へと頭を下げたり、遠くから手を振ってくれていた。

 「祖父の代になってから見違えるように正しく平定された」「ロイハルト・グリード伯爵様には感謝している」と領民から幾度も感謝の声を掛けられた。

 それを受けて祖父が嬉しそうに手をあげて応える姿を見上げては、いつかライハルト自身がグリード伯爵の爵位を継いだ時は、祖父の様に領民から笑顔を向けられる存在でありたいと興奮した。

 背筋を伸ばして領地を治める祖父は、幼心にもとても恰好が良かった。


 それからのライハルトはより一層、勉学に努めた。

 家庭教師を屋敷に呼ぶ余裕はなかったが、勉強を教えてくれる祖母は厳しくも優しくライハルトに礼儀作法やこの国の歴史について教えてくれた。





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