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心の声  作者: クレーヴ
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第8番「さっき」

授業が終わり帰りのホームルームも終わった。

私はいつものように早々とノートや筆入れを鞄に詰め込むと、いつもあかりと待ち合わせをする校門へと向かおうとした。

しかし、そんな私を引き止めるように呼ばれる声がした。

声の方に振り向くと窓際、1番後ろの自分の席で李河君がこっちに来いと言ってるかのように手をちょいちょいと動かしているのが分かった。

私はまだクラスメイトが沢山いる教室で自分なんかが呼ばれた事が何だか凄く恥ずかしくなり一瞬、行こうかどうか迷ってしまったが行かないのは人としてどうかと思いそそくさと彼のもとへと向かう。

彼の前に立つと彼は何か言おうとしたが言葉をためらい、話そうとした事とは違う事を話し始めたように見えた。


啓介「俺はここでいいんだけど場所、移動する?」


私を気遣ってくれたのだろう。

私はその優しさを素直に受け取りコクンと首をさげると彼は自分の荷物を手に持ち歩き出した。

その後を少し距離をおいて私も続いた。

あかりの事が少し気になったがB組は帰りの話が長いらしく、いつも私は10分ほど待たされる。

だから大丈夫だろうと、それ以上は特に気にはしなかった。


彼が向かった場所は図書室。

どちらかと言えば静かな場所が好きだし本も嫌いではない私にとって図書室は落ち着く場所の1つだった。

彼が偶然、この場所を選んだのか、それともこれも私を気遣ってくれたのか私が知るすべはない。

彼が席に座ると私は机を挟んだ彼の前の席に座った。

私が席に座ったのを確認し彼は話し始めた。


啓介「音白。 さっき俺の事、バカにしてただろ」


唐突すぎた。

あまりにいきなりだった彼の言葉に私は少しむせてしまい、2,3度咳き込んでしまったくらいだ。

そしてすぐに頭をフル回転させ、その言葉がいつなのかを考える。


"さっき"


図書室に来るまでの間?

彼に呼ばれて席に行った時?

それとも帰りの話や掃除の時?

私がまだ軽く咳き込みながら自分の今日の行動を探っていると彼が口を開き答えを教えてくれた。


啓介「さっきってのは数学の時間だよ」


数学の時間。

そう聞いたとき私には少し心当たりがあった。

彼が問題を答えられず…彼が言うには答えるつもりだったがそれは今はどうでもいい。

席に戻る彼と私の目が合ったとき私が考えていた事はさっきも言ったが


"解けなかったんだろう"


という、どちらかと言えばバカにしているような思いだ。

当たり前のように私の心の声は顔に出ていたらしい。

全くつくづく私の特徴はと少し落ち込んだ。

と、そんな事を考える前に謝らないとと思った。


私「あ、あれは……ご、ごめんなさい」

啓介「ハハ。 謝るって事はやっぱり顔に出てた通りか。 まぁそれは別にいいさ。 解けなかったのは確かだし」

私「やっぱり」

啓介「な! やっぱりはないだろ。 やっぱりは」

私「あ、あ、ごめん」


自分でもビックリするくらい自然に声に出ていた。

彼は数学の時間と同じような表情でしばらく、そっぽを向いてしまった。

しかしすぐに私の方をまた見ると顔もニヤニヤとした表情へと変わった。

そして彼は私がさっきよりも何倍もむせてしまう事を言うのだった。


啓介「って事でバカにした罰だ。 俺に勉強教えてくれよ」

私「ッ!」


彼のその言葉を聞き、私はしばらく咳が止まらなくなった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


初めて名前が出た話に主要人物、それぞれの説明を少しだけ、音白に関しては全く説明がなかったので追記しておきました。


ではまた次回も読んでいただけたら嬉しいです。


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