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心の声  作者: クレーヴ
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第4番「李河 啓介」

1年D組。 出席番号2番。 

李河 啓介(いがわ けいすけ)


友達は多いが1人でいる事が好きらしく休憩時間は寝てたり昼休みはすぐにいなくなる事が多い男子である。

身長は170〜180の間くらい体型は普通。

スラッとした体格だ。

髪はどことなく茶色く見えるが地毛と言っていたような記憶があったようなないような。

まさかこんな所にいるとは。


私「…け、啓介君」

啓介「え? 音白が喋った? で、何で名前? まぁ別にそこはどうでもいいけど、その顔」


ビックリしたせいだろう。

自分でも気づかないうちに声が出ていた。

名前で呼んだのは私が人の事を名前で呼ぶ人間というわけではなく…。

苗字が何て読むか忘れてしまい分からないからだ。

関わる事があれば聞くことが出来るが私の場合、関わったとしても聞くことは出来ないかもしれない。

そして顔の事だがやっぱり私は顔に出ていたらしい。


"何でそんな所に?"


という心の声が。


啓介「何でここにいるかは何となく。 ただそれだけ。 ていうか俺、いい場所ないかなって毎日、昼には色んな場所に行ってんだよね」

私「…」

啓介「音白、お前その顔、バカにしてるのか?」

私「そ、そ、そんな事」


私が今、思っていたことは単純に


"へ〜"


という変哲もない率直な感想。

確かに無関心ともとれるその思いはバカにしたような顔として表れてしまったのかもしれない。

そして私はまた声に出てしまった。

何となく否定しなければ傷つけてしまうという罪悪感からだろうか。

私がそんな事を思っていると彼は木から降りてきた。


啓介「説明するよりは自分で感じた方が早い。 ほら、音白登ってみろよ」

私「…」


今の顔は自分でも分かる。


"嫌"


私がよくするであろう顔の1つだ。

しかしそんな私の顔を見た彼は笑いながら何処かへ走っていった。


私(何だったんだろう)


そう思い、また木の影に腰をおろそうとしたが休む暇はなかった。

さっき走っていったその人物がはしごを担いで戻ってきたのだ。

戻ってきた彼は何も言わずにはしごを木に立てかけて、さぁという手振りを見せた。

その顔は私の顔を見てニヤニヤしていた。

少しムカムカとしたがNOとも言えないし逃げられそうもないので仕方なく私ははしごを登った。

登ってみると意外に眺めがよく心地よい風も吹き案外、悪くは無かった。

ハッと気づき顔を隠そうとしたが時すでに遅し、私に続けて登ってきていた彼は私の顔を見てよりいっそうニヤニヤとしていた。

私はその顔を見て表情を変えてみた。


"嫌"


という顔に。

しかしその顔を見ることなくこの男は1人で話し始めた。


啓介「案外、悪くはないだろ? 今までで1番いい場所かも知れないな。 ここは」

私「…ほ、ほかには?」

啓介「他にか? 校庭とかプールとか……あ! トイレなんかも試しに行ったときもあるな」

私「ト、トイレ」

啓介「あそこは駄目だな(笑) 臭いが気になって」

私「あ、当たり前…じゃん」

啓介「だな」


不思議な感じだ。

心で思うのではなく声になっている。

2人だけというせいだろうか?

私が話さなければ会話は続かないし、それ以前に何も話さなかったら私自身が何だか気まずい。

そういえば、あかりと話すのも2人きりだし。

まぁあかりは自分から話題をどんどん提供してくれるんだが。

そんな事をぼんやりと考えていた私はバランスを崩してしまった。

体が木から落ちていくのが分かった。

前を見ていたはずなのに目には木の隙間から空が見える。

高さは4,5mくらいだろうか?

落ちたら痛いかな?もしかしたら死んじゃうかな?

一瞬の出来事のはずなのに色々と考える事が出来た気がする。

私の体は宙に浮かんでいた。

それは決して飛んでいるわけではなく右手をつかまれていたからだ。

落ちていく私を李河君は間一髪でつかまえてくれたおかげで私は落ちずにすんだ。

再び木の上に戻る事が出来た私は早くなっている呼吸と今の出来事で高鳴っている胸に手を当て気持ちを落ち着かせていた。

そしてお礼を言おうとしたが声が出ない。

日頃から声を出すのは得意ではないうえに呼吸がまだ荒いせいもあるだろう。

しかし顔には出ているらしく、そんな私の顔を見て彼は言った。


啓介「何だよ。 さっきまで普通に喋れてたじゃん。 お礼の言葉は?」


笑いながら言うのだった。

それ聞き私は少し慌てながら声を振り絞った。 

まだ少し震える声を。


私「あ、ありがとう」

啓介「ああ。 気をつけろよ」


それを聞き彼はまた遠くを気持ち良さそうに眺め始めるのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


啓介という人物は自分でも不思議な空気のキャラクターになったな〜って感じです(笑


それではまた次回も読んでいただけたら嬉しいです。

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