第26番「真実と嘘」
帰りのホームルーム。
財布がなくなった事は先生へと伝わり、クラスでは緊急の話し合いが始まろうとしていた。
押足「え~佐藤の財布がなくなったそうだが…心当たりのあるものはいるか?」
教壇に立ち、教室を見渡しながら話し始めるが心当たりがあるものは誰もいない。
つまり名乗るものは誰もいなかった。
押足「ん~佐藤の話だと授業前まではバッグの中にあったそうだ。 疑うつもりはないが盗んだ奴を見た人、もしくは本人がいるなら今から配る紙に記入しろ」
お決まりではあるが、よくある言葉を並べた先生は、私を含めた1番前の席に小さな紙を配り始めた。
私はどうせこんな事をしても見つかるはずがないと、そんなお決まりの事を考えていた。
かくいう私だって…。
笑っていた香夏子たち…もしかしたらの可能性はあるが書くつもりはない。
記入をしたかは別として各々が渡された紙を再度、先生へと届ける。
すべての紙を見終えた先生は、少しだけためらい口を開いたんだ。
押足「え~数枚だが…音白」
自分の名前を呼ばれたことで背筋が伸びる。
押足「お前の名前が書かれてあった」
そういい終わると同時に後ろの方でも声がする。
ネネ「そういえば~ネッシー、午後の授業、遅刻しなかったっけ?」
久美「言われて見れば~あっやし~」
言っている人物がネネたちであるのは関係なく、嘘ではない事実にクラスメートをざわめきだす。
私はというと暑さで出る汗ではない…冷や汗だろうか?
頬を流れているのがわかったが、拭うことさえせず席に座っている。
そしてやっぱり私の理解した事が予想から確信へと変わろうとしていた。
押足「確かにな~しかしあの時、音白は茂木と話してたと言ったが?」
香夏子「は?」
不思議そうな表情をする香夏子と同時に私も先生が言った言葉で驚いた。
なぜなら、あの時、私は昨日と同じように黙っていた。
香夏子と話していたなんて一言も言っていないのだから。
ネネ「せ、せんせ~何言ってるの? あの時、ネッシー何も言わなかったじゃん」
その通りだ。
私は何も言っていない。
押足「ん? お前こそ、あの時、音白は珍しく話したじゃないか?」
香夏子「ちょっと何言ってんのよ。 それより私、ちゃんと最初から授業いたっつーの。 ね~?」
ネネ「そうそう」
久美「いたいた」
その嘘のやり取りで私は確信した。
やはりこれは私をはめる為に仕組まれた事だと言うことを。
今日が香夏子1人だったのは授業のアリバイを作るためだろう。
授業の出席の返事はネネか久美がおそらく返事を。
1番後ろの席、きっとばれないだろうし、あの3人をそこまで注意してみる人もいない。
押足「ん? 確かに出席の時に茂木は返事してたな…となると音白? どうなんだ?」
よく分からないが私は嘘を言ってない。
しかし私の事を証明してくれる人はいない。
そして香夏子たちは嘘を言っている。
そしてその嘘を証明してくれる人もいる。
何だかそう考えると悲しくなり涙が出そうになった。
どうする事も出来ない。
"私は香夏子と話してた。 私は財布なんてとってない"
心ではそう思っている。
しかし声で言おうが心で思おうが、こんな事はただの嘘の言葉にしか聞こえないのであろう。
もう下を向いていることしか出来なかった。
押足「音白はこう言ってるが…ん~先生、頭がこんがらがってきたぞ」
また先生がおかしな事を言っているが気にもしなかった。
だけど…。
「ちょっといいっすか?」
誰よりも…。
誰よりも耳に届く声が聞こえたんだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
実際、出席っているかどうかの確認ってあんまりしませんよね。
返事すればOKみたいな。
そして執筆の方、忙しくて全然進んでおりません(汗
終盤だと言うのにスローペースで申し訳ありません、頑張ります。
ではまた次回も読んでいただけたら嬉しいです。