第14番「同じだけど違う」
気になった方がいるのか分かりませんが音白が何故、A〜C舎にいるのかは、あかりを見送ったと思ってください。
その後、校庭だと考え来た道を戻ろうとしたんですね。
何も考えられなくなった…。
香夏子たちはもう見える所にはいないのに私は固まったまま動かなかったみたいだ。
そんな私の肩をポンポンと彼は叩いていたらしい。
啓介「〜い。 お〜い。 音白? 聞こえてるか?」
どれくらいの時間、私は固まっていたのだろう。
多分、数秒なんだろうが何時間も経過したようにさえ感じた。
すぐ後ろにいるはずの彼の声が何だか、もの凄く遠くから聞こえた気がする。
その声が耳に届き私は我に返って、やっと彼と顔があった。
啓介「大丈夫か? ボーッとしてたけど」
心配そうな彼の表情を見て慌てて顔を上下に動かす。
啓介「そっか」
それを確認した彼はまたにっこりと微笑んでくれたんだ。
その顔に少しだけ救われた。
いや、それよりも色々と救われていたのを思い出す。
私「あ、あの…あ、あ、ありがどう」
啓介「ハハ。 ありがどうって?」
最悪だ。
どうして私はいつも立て続けに不運な事が重なるのだろう。
そりゃ笑われるに決まっている。
恥ずかしくて身を隠したくなった。
私「ありがとう」
啓介「いや、その意味だよ」
一瞬だけ理解できなかったが、すぐに分かった。
彼は言葉を馬鹿にしたわけではなく"ありがとう"の意味を聞いてきたのだと。
私「た、助けてくれて」
啓介「何かしたっけかな? 俺。 ハハ」
彼は助けたつもりはなかったらしい。
彼から見たら私は普通に話していただけだと思ったんだろうか?
いや、でもさっきの香夏子との会話。
"何かさ"
何となく聞いた分では助けてくれたようにも感じたんだけれど…。
そもそも彼は私と香夏子たちの事は知っているのだろうか?
お昼休みに入るとすぐに何処かへ行ってしまう彼。
初めて話したあの日も少し知っているような感じはしたけれど…。
そんな事を確認するわけにもいかなく本当の真意を追求する事も出来ない私は彼に違う事を聞いた。
私「よ、用事って?」
啓介「あ、あ〜…音白さ屋上って何処から行けるか知ってる?」
一瞬の間があったが、それを深くは考えなかった。
考える暇がなかっただけかもしれない。
彼に聞かれたことを考えてしまったから。
私は手を彼に見えるように少しだけ動かした。
それ確認した彼は歩き出した私の後ろをついてきてくれた。
A〜C組の校舎を一旦出る。
私達は生徒達の普段、生活するそれぞれの教室以外の教室、例えば図書室、職員室、音楽室等の教室がある中心の校舎横へと歩いていく。
説明すると校門を入ると校庭がある。
校庭を真っ直ぐ進み、ちょっとした石段を登ると左側にあかりのA〜Cの校舎があり右側に私たちD〜Fの校舎がある。
その2つの校舎の間に広々とした中庭があるのだ。
ちなみに校庭に入ったすぐ左側にはプールがあり右の方には第2体育館がある。
中庭の奥と言う説明で通じるだろうか?
そこに先ほど説明した図書室などがある建物が私やあかりたちの校舎を繋いで建っている。
A〜C舎からD〜F舎に行くにはここを通り向かうという事だ。
言うなれば2つの校舎を移動するための橋の役割も持った校舎だ。
漢字で表すと空から見た場合、凹の字を逆さにした校舎と言うと分かりやすいのかもしれない。
そしてそのさらに上に第2よりもはるかに広い第1体育館が建っているわけだ。
説明はこれくらいでいいだろう。
その2つの校舎を繋ぐ建物にも左右それぞれに出入り口があり、それぞれの入り口、横。
そこに屋上へと続く梯子がかかっている。
私は屋上には行った事はないが何故知っているかと言うと、この学校の作りはほぼ頭に入っている。
悲しいものだが移動する場所が分からないとき聞く人もいないわけで、こうした事は最低限、覚えておいて損はないのだ。
梯子の前まで来て、ここと言う様に指を指す。
彼はありがとうと一言、言うとそれをのぼりだした。
まだ手をのばせば彼の足に触れる高さ。
そんな所までのぼった彼が下でのぼっていくのをぼんやりと眺めていた私を見下ろす。
同じだった。
木に立てかけた梯子をのぼらせた、あの時と同じ。
彼は、さぁと言わんばかりの素振りを見せた。
そんな事、見なかったフリをしてスタコラと歩いて行く事も出来たけど…。
私の心は1度目とは違ったから、今度は嫌な顔せず後に続いたんだ。
"うん"
って思いながら。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
校舎の説明、結構頑張ったつもりなんですが分かりにくかったら是非とも図の方で見てみてください(>_<;)
これも微妙に自分の母校を真似ています(笑
ではまた次回も読んでいただけたら嬉しいです。