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#004

「は? 他にどんな用事があるんだよ」

「決まってるじゃない」


アリスは悪戯っ子のように笑うと、一枚の封筒を俺とアイビスに渡した。


「パーティー名を告げてみなさい」


アリスがそう命じてくる。


紙には確かにパーティー名が記されている。


「お前……そんな大事な役をたった一日で済ませようってのかよ」


パーティー名が記されたものを、いちいち確認するなんていう労力のいる作業は御免だ。


パーティーそのものについてはアリスが自ら手配してくれていることだし任せるしかないが。


「文句ならタロウが考えてみなさいな」

「んな無茶な」

「どうせ数日は猶予があるんだろうに」

「俺はそんなフワフワしてるわけじゃないんだがな」


パーティーを解禁した以上、次はいつやるのかということくらい俺にも分かっている。その機会を待つことに思いを馳せてる真っ最中だ。


「とにかく! すぐ分かるように書いておいたから、これに名を記入しておきなさい。明日の大会では私がサポートしてあげるから」

「サポートって……具体的にどうやるんだよ」

「パーティー会場を指定して、そこで冒険者を斡旋して……ねえ? どうかしら? できる?」

「できる。やってやれないことはない」


そう答えるとアリスは「そう、よかった」と満足気に微笑んだ。


なんか前にも同じことがあったような……。


「あら、なにかしら?」

「いえ、なんでもないです」


アリスが興味深げに聞いてくるのを適当にごまかして――


俺は紙をくしゃくしゃに丸めて紐で括った。


「よし。お前にサポートしてもらうことが決定した。頼りにしてるぞアリス」


細々したことはこいつに任せておけばいいだろう。


丸投げしてしまったことで手持ち無沙汰になった俺は、まだメモリーに視線を落としたままでいたアイビスと目を合わせた。


まあそんな時間はないか。


「ほら、いつまでもページを繰っているんじゃない。仕事に集中しなさい」

「すまんすまん。じゃ、ちょっと出掛けてくるよ」


アリスの仕事が終わったら、今日の仕事も頑張らないと。


やるべきことは多い。


全部を自分がやる必要もない、手分けもしていかないと。


やることはまだまだいっぱい。


俺は「とりあえず」と前置きしつつ、メモリーを一ページ丸ごと引っぺがした。


「じゃあ行ってくるわ」

「いってらっしゃいませ。……と、その前に」


家のドアをガチャリと開けて挨拶するアリスだが、俺がそそくさと踵を返した直後にその動きを止める。


「え、ちょい待ち。まだなんかあんのか?」


家にはルナもいるし、別に急を要する話でもないと思ったが。


「いえ、その、ですね……ご主人様にしていただいたご報告なのですけれど」

「報告?」

「はい。明日からのご活躍を、ですね」

「お、おう」


妙に歯切れの悪い言い方だな。


まあその報告について特に他意があるわけではないが。


が。


「……俺はどうせ留守番になるんだからな、そこまで大袈裟にするほどのもんじゃないだろ」

「もちろんですよ。あ、明日はご主人様はしばらくお休みになられますか。ならばルナとゆっくりお会いしに行きましょう」


いつになくテンションの高いアリスに案内されていった先は、市場……というか、市場というよりも雑貨屋と言ったほうが適切な店だった。


「なんでも、ご主人様に作ってくださった装備の展示を行う予定があるとか」

「そりゃ知ってるさ」


装備品と聞いて何を思い浮かべるかはお察しになっている。


「品揃えは豊富で、値段も手頃なものが揃うと聞きます」

「俺にそんな商機があると思うか?」


大体、装備品といえばパーティーに求められるのは攻撃力と防御力だから。俺が欲しているような逸品は不必要だ。


「でもご主人様がお出かけの間に、品質をチェックしておくのは大変でしょうし」


アリスは店員と話している俺をちらりと見つつ、そう解説した。


「ま、そりゃそうだがよ」


質もそうだが、チェックがめんどくさい。


どうせ俺以外に使い続けられる奴はいないし、じっくり吟味するのは時間の無駄だろう。


「そもそも、そんな都合よく武器屋が売ってるのか?」

「町から遠く離れた南西区には、武器屋や防具屋、それと武具屋がたくさん並んでいるのだそうです」

「へえ」


そりゃあ確かに効率的だ。


店頭に並んでいる武器にこっそり手が触れてしまったということもないしな。


「ただ、ここでも一番奥まったところにありますから……ご主人様のご希望がおられなかったら、かなり時間をロスしてしまうと思いますが……」

「どんだけ人気のないところに住んでるんだよ、この町は」


しかし、そうか。武器屋とか防具屋か。


武器屋や防具屋が軒を連ねていること自体はなんらおかしな話ではない。


ただ、そこまで行くのに時間を要するなら、俺にとっても都合がいい。


「そこで提案なのですが、以前パーティーを組んでいた時にご注文を受け続けていた、『大剣フィギュア』なるアイテムを製造する工房はありませんか? あれば紹介させていただきたいのですが」


アリスがそう口にした時、ちょうど職人のおっさんが向こうからこっちへ歩いてきた。


「あんちゃんじゃねぇか。どうした?」

「いやな、ちょっと作ってもらいたいものがあるんだよ」

「見せてみな。どんな装備でも、オレが打ち直すぜ」


おっさんは快く俺とアリスにフィギュアを手渡し、それからアリスにも渡す。


「あの、ご主人様。よければどちらに投稿なさるか、ご意見いただけませんか?」

「そりゃフィギュアだろ」

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