#027
そう言って腰を屈めたアルフレッドは俺の腰に手を回し
「いいケツするじゃないか。これなら一緒に旅をする仲間にするって言い出したジョンの心配もわかるってもんよ」
と笑いかけた。
やれやれ、調子のいい男だ。俺は自分のケツを手でパンパンと叩き
「遠慮しておく」
と言い捨てた。
その返事も気に入ったのか、アルフレッドは更に調子に乗る。
「なんだい、なんで遠慮してんのさ! 仲間のよしみでさ、ちょっとだけサービスしてあげようと思ったのにさ、この変態が! ジョンのバーカバーカ」
と言って俺の尻を触ってくる。
「ばーか、馬鹿言うな。奴隷には主人の命令は絶対なんだ。俺がお前らの仲間になることは無いよ」
と言ってアルフレッドの尻から手を離した。すると、アルフレッドは「なんでだよ」と更に怒る。
「なんでって、お前が俺を口説くからだよ。俺はさ、お前と旅をするのさえ嫌だよ。お前の事をただ単に仲間としてやっていくだけってのはな。まあ、ジョンはそれでいいかもしれないけど、アルフレッドには合わんよ。俺の尻と尻は特別製なんだから」
俺が不貞腐れながら言うと、アルフレッドは「ちぇっ、つまんないの」と拗ねたような言い方で、少し寂しそうな声色で
「やっぱりお前の尻はいいおケツだぜ? ジョンよりも立派なもんよ。ただなんつうか、な……」
と言った。やはり、女心は分からん。
「ただなんつうか、俺の女心にもちょっとわかるところがあってな、だから他の女に取られるのは悔しいんだよ」
「なんでだよ、好きな女くらい自分で抱かなきゃ男じゃないぞ」
友達には優しくしたいとは思うが、他の女を抱く趣味はない。
「それがだな、もう他の女がジョンの事を狙っているようでな、このままだといつかお前の尻だけじゃなく、俺の尻まで奪われるぞ、ジョン? そしたら、あの女、お前の事を絶対殺しにくるからな。俺はそういう女より、かわいい女に好かれるんだ、わかるだろ」
そう言われて顔を逸らす。確かにアルフレッドは顔がいいので、そういうおつきの者に囲まれたら、そのおつきの者を全員殺しにかかるだろう。
俺だって嫌だ。
だが、だからと言ってアルフレッドのそのおつきの者達と付き合いを深めてやる義理もない。
どうにかして、この嫌な場所から抜け出してやりたい。
せめてアルフレッドが、俺のケツに飽きるまで。
そんな理不尽な願いを俺が抱いていると、コンコンとドアがノックされた。
「おう、なんだ今いいとこなんだぜ?」
と返事をすると、
「失礼しますけど、ちょっといいかしら?」
と声が聞こえてきた。
俺の部屋のドアをノックとは、礼儀がなっていないやつだな。
「なんだい」
と返事をすると、
「私のメイドを取らない?」
と言ってきた。メイドとは、無論、アリスの事だ。
「なんでだよ。アリスは今奴隷の身の上だよ。お前ん家のメイドじゃないだろ」
俺が苦言を呈していると、
「確かに私の家のメイドじゃないね、てゆうか、私の家も奴隷関係の小さな貴族なんだけどね」
そんな言い訳染みたことを始めた。
「おいおい、じゃあなんで俺んとこに来たんだよ」
「理由は二つ。一つは私があんたの事を気に入ったから。そしてもう一つは、あんた、貴族の子供のくせに従者も連れないでフラフラしているでしょ。そんな無能な従者を寄越されても困るから、自分のところのメイドに育て上げてしまおうと思ってね」
「………………」
馬鹿じゃねえのかこいつ。メイドを奴隷コースに変更するだとか、訳の分からんことを言ってくる。
たしかに従者はいる。一人はアリス付きの女騎士だが、アリスは元来のお転婆お嬢様なのだ。
なんせ最初の頃から、家のメイドのことをずっと見ていたらしい。その頃から思ったのだが、アリスはあまり頭が良くないみたいだ。
家のメイドは料理はともかく、学力はスラリとしており、剣術などもなかなかのものだったが、学力ではアルフレッドには遅れをとった。
そのぶん、学力などはアルフレッドに僅差で勝っていたが。
俺はそのことをアリスに話したのだが、
「あら、そんなことまでわかってたの? 私は最初からあんたの事気に入っていたわよ、だってあんたの荷物持ちしかさせてもらえないんだもん」
と言われ、俺は何も言い返せなかった。
「まあ、本当にあんたのことを気に入ったってことだから、気にしなくていいわよ。その代わり、お願いがあるの」
「お願いって?」
「私をあんたのメイドにしてくれない? これでもそこそこ腕が立つ方だからそれなりに使えると思うし……」
「断る」
「……即答するじゃない! 流石に断れないわよ! だって私の周りには女ばっかりだし……!!」
アリスはプンプンとしながら拗ねている。
確かにアリスくらいの年頃で俺の奴隷として傍に置かれたら、その人生は過酷だろう。
が、こればかりは俺の価値観が許さない。
いくらアリスが優秀だといっても、俺はまだ9歳だ。この扱いはちょっと酷すぎます。
「なに言っているんだ。逆にアリスみたいな、将来有望そうな子と一緒に働けるってことは、俺にとってはありがたいことなんだぞ。まあ、アリスは一応まだ8歳なんだから、あまり無茶はさせられないけどな」
そうフォローすると、アリスは少し顔を柔らかくし、少しだけ笑った。
「ふふ、そうね」
そう微笑んだ後、俺が「じゃあ、俺は俺の部屋に戻るから」と言った。




