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#017

地上のモンスターを倒し始めておよそ4時間が経過していた。

途中で俺は大部屋で休む事にしたのだが、アイビスが『休まなくても良い』と言い、ここで休む事になった。

初日なのにここまでの乱戦だったので、正直俺も疲れている。

『影空間に潜って休む』と言ったのも、1人でゆっくり休めと言っていたのを忘れてしまったからだ。


モンスターを倒し終え、安全地帯を確保した俺達は、野営の準備を始める為に一度キャンプ地へと戻った。

日は既に沈み、森の中は月の光が淡く辺りを照らしている。

俺達は再びテントの中に入り、アイビスはベッドの側に行って寝転ぶ。

アイビスはテントの外側に設置したランタンに向かって、先程のモンスターとの戦いの様子と戦闘の解説を始めだした。

戦いの説明と言っても、モンスターの解説ではなくスキルの解説だ。

俺の『無限バスルーム』内にはアイビスの新しいスキルの『モンスターテイマー』があり、今はそのスキルについて解説している最中だという。

とは言っても流石に専門的過ぎるため、アイビスが理解しているモンスター分布、強さ、弱点しか載っておらず、あまり詳しくないそうだ。

それはともかく、俺の『モンスターテイマー』の解説が終わると同時に、

「ご主人、交代ですニャ!」

とソフィアの声が聞こえてきた。

俺とアイビスのテントの外側に設置したランタンを、グレイブを持ったアリスが担いで戻って来る。

「まだ体力には余裕があるが、大丈夫なのか?」

「休めばすぐに動くにゃ!」

「…………わかった」

アリスの頼もしい言葉を聞き、俺はテントを出る。

空は満月だが、森の中は暗い。流石にランタンは背負って来ない様だ。

俺は『三日月クレセントムーン』の柄を杖の先端に握り、魔力を纏わせない様に気をつけながら森の中を進んで行く。

周囲を警戒しながら歩いて行くが、『女神の勇者』の能力のおかげで獣道の類は見当たらない。

蛇行して森の中を進んで行くと、やがて木々が疎らになってきた。

更に進む事、しばし。

ふと前方に泉がある事に気付き、俺は足を止めた。

覗き込んでみると、湧き水なのかその水は光を放っている。それは神秘的な美しさがあり、幻想的でもあった。

「きれい……」

隣に座っていたアイビスも泉に近付き、顔を近付けていた。

水面に映る自分の顔を見て、王女は頬を赤く染め、恥ずかしそうに視線を逸らす。

俺はアイビスに手招きして泉から離れるよう指示を出すと、アイビスはコクンと頷いた。

「ジョン、どう?」

「きれいな水だなぁ……」

光の女神の祝福を受けた身とは言え、流石に泉の中にまで近付いて確認する勇気はなかった。

近付いて見てみると、水の色は薄いピンク色。ほとんど透明だ。

なるほど、光の女神の祝福を受けた身だからなのか、こうして水に触れて分かった。

薄ピンクな事は、明かりとして使うならば決して問題にならないのだ。

「ねぇタロウ。あなた、何か他に言う事ない?」

「……特に無いな。まぁ、警戒は続けろよ」

「う~ん、分かった」

アイビスも俺と同意見か。


しばらく泉の水を見ていたアイビスだったが、ふと顔を上げて俺の方を振り返った。

「ねぇ、この水は光の女神様に捧げるものじゃないの?」

「……どういう事だ?」

「この泉を光の女神が認めたって事。……これ、祝福の儀式みたいなものじゃないかしら」

そう言って泉の中を泳ぎ出す。

「……祝福の儀式?」

「みたいじゃない? 光の女神はあなたの女神様の仲間なんでしょ?」

「そういやそうだったか……」

言われて思い出したが、そう言えば女神は祝福の儀式を行う様な事は絶対に言わない。

俺は祝福の儀式等やった事は無いが、それだけ彼女は女神を信頼しているのだろう。

「水のお姉様が言ってたわ。光のお姉様も祝福を求めてたんだって」

「祝福ってなんだろうな」

「さぁ? ジョンに分かる訳ないでしょ」

そう言ってアイビスは再び水中に潜って行った。

流石に俺もそれに付いて行こうとする訳にはいかない。

手持ち無沙汰になった俺は、水を覗き込んでみた。


「お、光の女神の祝福か……」

深みのあるピンク色の液体が、泉から立ち上っている。近付いて詳細を見てみると、それは水晶の様な丸い水晶だった。

なるほど、光の女神の祝福と言われているのだから水晶の様な神秘的な水晶なのも道理か。

こんな水中に入る事が出来たのだから、祝福持ちには違いない。

俺が水晶の周りを軽く触っていると、『魔力喰い』が問い掛けて来た。俺は水晶を覗き込んで返事する。

「俺の祝福?」

すると水晶の上部分が弾け、向こう側が見える様になった。

そして泉の中を覗き込んだ俺の目に飛び込んで来たのは、水中で揺らめく女神の笑顔だった。

「…………」

「どうしたの?」

「いや……すごい光景だなと」

「そうよね。私も初めて見たけど」

「そういや、この世界の人は泉の中に入れないんだったな」

深い地底には、水晶で出来たような祭壇があり、それに向かい合うように光の女神の祝福を授かった者が順番に入れ替わっていた。

祭壇に近付くと、女神の姿が見えた。美しい水色の髪をした女神だ。その姿を見ただけで俺は自然と身体がびくびくと震えるのを感じた。

そんな幻想的な光景だと言うのにアイビスは全く怯える様子は無かった。

「ジョンに女神の祝福があるのって、光の女神の祝福があるせいなのかしらね? だから女神の祝福を受けた人は入れないとか?」

「どうなんだろうな? 勇者だからこそ出来る事かも知れない。俺も水晶に触ってみてから、女神の祝福が感じられるような気がするぞ」

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