表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失日回想  作者: あいえる
1/8

新生



 真っ白な天井。


 目を覚ました時、最初に感じたのはなんだったのか。


 震える身体。じんわりと痛む頭。どこかぽっかりと空いた心。


 何故こんなところに居るのだろう。不思議と恐怖はない。


 何もない空間。自分が寝ている台座だけが、唯一の違い。


 大きな扉に閉ざされた、大きな空間。埃が舞うことも無い清潔なまでの床に、汚れ一つ無い真っ白な衣服。


 どうするべきかなど知るはずもない。


 だが、足は勝手に扉へと向かい動き出す。


 人一人では到底開けられないであろう巨大な扉。頭の中では『開けられないのにな』と思うものの、足が勝手に動くのだから仕方ない。


「ふんっ」


 小さく可愛らしい声が響くだけで、全くもって扉は微動だにしない。


 ぺたん、と扉を背にして座る。先程まで自分が寝ていたのであろう台座をぼーっと見つめて、虚無の時間が流れる。


 私は誰。ここはどこ。誰かいないの。そんな考えがくるくると二、三周したところで、ようやっと変化が。


 ごごごごごっ……!!


「うぇ? あっ、ちょ……」


 扉が開く。


 完全に背を預けていたからこそ、そのままこてんっ。


「いてっ」


 仰向けになる形で、頭をぶつけてしまう。


 痛みは感じる。やはりというか、どうやら死後の世界というわけではないらしい。と、そう判断する。もっとも、死後の世界があるのか、死後の世界だと痛みは感じないのかといった疑問はあるが。


 扉の先はただひたすらに開けた場所。驚くほどに遮蔽物がない草原。


 気付けば、扉も先程までいた部屋も綺麗さっぱり消えてしまっていた。


「わぁ、おっきい」


 寝転んだままで、そう感想を漏らす。


 空に浮かぶのは、星。


 人々に昔から親しまれてきた、圧倒的なまでの存在感。


「また、迎えに来てくれるんだね?」


 何故そう思ったのか。本人も不思議なくらいに自然と言葉が出てくる。


「まだかなー。今度はいつかな? 明日かな? そのまた明日かなぁ?」


 ゆっくりと。それこそ数日や数週間では気付かないくらいに、初めはゆっくりと。


 だが確実に。


 目覚めと共にその動きが加速したことすら気付かないくらい。


 生きるモノ全ての知らないところで。


 終わりへのカウントダウンは動き出す。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ