新生
真っ白な天井。
目を覚ました時、最初に感じたのはなんだったのか。
震える身体。じんわりと痛む頭。どこかぽっかりと空いた心。
何故こんなところに居るのだろう。不思議と恐怖はない。
何もない空間。自分が寝ている台座だけが、唯一の違い。
大きな扉に閉ざされた、大きな空間。埃が舞うことも無い清潔なまでの床に、汚れ一つ無い真っ白な衣服。
どうするべきかなど知るはずもない。
だが、足は勝手に扉へと向かい動き出す。
人一人では到底開けられないであろう巨大な扉。頭の中では『開けられないのにな』と思うものの、足が勝手に動くのだから仕方ない。
「ふんっ」
小さく可愛らしい声が響くだけで、全くもって扉は微動だにしない。
ぺたん、と扉を背にして座る。先程まで自分が寝ていたのであろう台座をぼーっと見つめて、虚無の時間が流れる。
私は誰。ここはどこ。誰かいないの。そんな考えがくるくると二、三周したところで、ようやっと変化が。
ごごごごごっ……!!
「うぇ? あっ、ちょ……」
扉が開く。
完全に背を預けていたからこそ、そのままこてんっ。
「いてっ」
仰向けになる形で、頭をぶつけてしまう。
痛みは感じる。やはりというか、どうやら死後の世界というわけではないらしい。と、そう判断する。もっとも、死後の世界があるのか、死後の世界だと痛みは感じないのかといった疑問はあるが。
扉の先はただひたすらに開けた場所。驚くほどに遮蔽物がない草原。
気付けば、扉も先程までいた部屋も綺麗さっぱり消えてしまっていた。
「わぁ、おっきい」
寝転んだままで、そう感想を漏らす。
空に浮かぶのは、星。
人々に昔から親しまれてきた、圧倒的なまでの存在感。
「また、迎えに来てくれるんだね?」
何故そう思ったのか。本人も不思議なくらいに自然と言葉が出てくる。
「まだかなー。今度はいつかな? 明日かな? そのまた明日かなぁ?」
ゆっくりと。それこそ数日や数週間では気付かないくらいに、初めはゆっくりと。
だが確実に。
目覚めと共にその動きが加速したことすら気付かないくらい。
生きるモノ全ての知らないところで。
終わりへのカウントダウンは動き出す。