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冒頭のみ作品

作者: 赤木

通信制高校3年生・・・1月・・・。

洋室六畳の部屋にはかつて使われてたであろう勉強机、壁一面の収納棚に収容できない大量の漫画・DVD・ゲームソフト、もちろんベットもある。そして勉強机の横にはハイスペックモデルのパソコンがおいてある。ここは引きこもりが住んでるひきこもり部屋・・・。

 そう、僕はまさに絵に描いたような引きこもりだ。

 ある日はテレビゲーム(パソコンのモニター)で一日中時間をつぶし、またある時は漫画を読み一日を潰す。

 ひきこもりになった理由は別に複雑でない。ただ単に、いじめが原因だ。

 一年ほど前になる。当時の僕は高校二年生だった。学校は通信制高校ではなく公立高校だったが難関大学などに進学する人はいなく、学校近所では制服を見ただけで道を開けられるほどの不良高校、簡単に言うと名前が書ければ入れる程度の学校だった。

 勿論不良なのは一部だけだが、その不良が目立ってしまい不良高校のイメージがついてしまったのが実情だ。

 僕は当時、自分で言うのもおかしな話だが健全な男子高校生だった。授業中はよく寝たが化学数学などの理系科目が得意で、定期テストなどは全くテスト勉強しないで満点を取るほどだった。もっとも他の科目は壊滅的だったが、それでも合計点数的には平均よりも少し低いくらいだった。

 夏のある日、その日はテスト期間中でいつも通り最初の三十分で数学の問題を解き終わり机に顔を伏せていると窓から急に強い風が吹いた。そして不幸にもテストの解答用紙が飛び、それが隣の席の留年生の足元に落ちたのである。留年生はあろうことか素早く自分の解答用紙を僕のとすり替え、自分の解答用紙を僕に裏返しでわたしたのだ。その時は答えを見えないようにする配慮と思っていたがそうではないとこは後になって気づいた。

 その後、テスト返しの日がやってきた。僕は化学でまさかのゼロ点を喰らい泡を食った。まさか満点のつもりで提出したのにもかかわらすゼロ点を取るなんて思いもしなかった。だがその時はテスト中に寝てしまって解答用紙に書き込んだのも夢だったのかもしれないと思い、次からそういうことが無いように気をつけようと思うだけだった。

 その日の放課後、僕は掃除当番という強制労働に課せられていた。掃除は適当に地面に投げられてた紙くずを拾うだけという簡単な仕事だ。本来なら箒で床を掃き、チリホコリまで取るんだろうが誰も面倒くさがりやらなかった。

 掃除当番は最後にゴミ箱の中身をゴミ捨て場に持っていかなければならない。僕は掃除当番全員の正々堂々たるジャンケンにて見事に大敗し、仕方がなくゴミを捨てに行くことになった。

 紙くずだらけのゴミ箱は軽い。僕は早くその仕事を終わらせたかったので廊下を走った。その時何故か僕の靴の靴紐はほどけていた。そして案の定靴紐を踏んでしまい、大胆にコケてゴミ箱の中身を廊下にぶちまけた。僕は慌ててゴミを拾い集め次々にゴミ箱に投げ込んだ。そして最後の一個を拾った時、ちらりと自分の字が見えたのでなんとなく広げた。それは僕が夢の中で書いたはずの数学の解答用紙だった。得点は勿論満点だが名前が書き換えられてあった。

 唖然とした。

 僕は急いでゴミ箱の中のゴミを所定の場所で捨てて教室に戻してカギをかけ、職員室に向かった。

 数学科の先生は職員室入口近くにいた。僕はゴミ箱で拾ったシワクチャの解答用紙を先生に見せた。先生は最初は冗談だと思い笑っていたが、普段満点だったのにゼロ点を取るのは確かに不思議と思ったのか解答用紙をマジマジと見た。そして見つけたのである、名前が書き換えられた跡を。

 次の日、朝から授業そっちのけで職員会議が行われた。勿論事情を生徒の中で知ってるのは僕だけだった。

 ちょうど二時限目の始まりのチャイムが鳴り終わったあと、隣の席の留年生が呼び出された。留年生は周りの不良たちと話していたが呼び出しを食らい、仕方なしに教室を出て行った。

 その日、隣の席は空席となった。

 放課後、掃除当番と言うのは週ごとなので今日も掃除当番だったが、昨日とは違いジャンケンに勝った。僕は悠々と荷物をまとめ(まとめる荷物もほとんどないが)教室を出た。誰もいない廊下を歩き、誰も居ない階段を降りて校門を出た。その瞬間後ろから急に首に手が伸び、目隠しをされた。それから僕はそのまま三分ほど引きずられた。その間を締められたので声が全くでず、抵抗して息をするのがやっとだった。

 鉄の扉の音がし、何やら柔らかいものの上に僕は投げられた。僕は首を絞められてたために咳き込みながらも目隠しをとった。そこは体育倉庫だった。どうやら僕はマットの上に投げられたようだった。入り口は二人の不良が塞ぎ、目の前には隣の席の留年生が手を鳴らしながら立っていた。何でも僕がテストの事を先生に言ったせいで停学となり、その弊害で留年が決まったらしい。その腹いせに僕を焼入れることにしたそうだ。そこから一方的な暴力が始まり、終わったのは夜十時を回った後だった。

 学校側はこれ以上学校の評判を悪くしないためにこの事件を隠しただめ、一切の対策を取らなかった。そして僕の訴えた真実は僕の嘘となったのだ。

 この事件がきっかけになり僕は通信制高校に転校し、以来引きこもりとなった。

 僕はいつも通りパソコンでネット・サーフィンを樂しんでいる。家族も事件以降は学校に行けとは一切言わない。

 コンコン

「ユウキ、荷物が来てるわよー。後で取りに来なさい。」

「はーい。」

僕は母の後を追って部屋を出て一階に降りた。玄関先には革紐で止められた包みがおいてあった。大きさは百科事典よりも一回り大きく、厚い。

「それね、玄関前に置いてあったのよ。一瞬ゴミかなんかと思ったんだけどユウキの名前が書いてあったからユウキへの荷物かと思って玄関に入れておいたのよ。」

僕は小包を手に取った。見た目の大きさよりも重かった。僕はその包を自分の部屋に持ち帰った。

 包の中身は本だった。だがただの本ではない。表紙は革、中身は羊皮紙で手書きだった。明らかにこの時代に書かれた本ではない。しかし状態はよく、つい先程まで読まれたり書かれたりしていてもおかしくないほどだった。

 本の題名は「真・魔法の書」と少し崩れた日本語で書かれていた。少し気になり本を開いたが最初のページ以外は全く何も書かれていなかった。


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