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16. ラナとの会食

 ラナはエトウたちよりも早くレストランに着いていた。

「すまん、待たせたか?」

 謝るエトウに対して、ラナは首を振る。

「ううん。さっき来たところ。個室をとってくれたんだね。ありがとう」


 ラナは光沢のある黒のワンピースを着ていた。顔にはごく薄くだが化粧をほどこしている。


「わぁ、かわいい」


 コハクがラナの服を褒めた。

 ワンピースには黒色の糸で刺繍がされていて、花々が浮き上がって見える。女性同士の会話が弾み、ラナもリラックスしているようだった。


 エトウたち五人は、オーク肉と各種の野菜を濃厚なソースで煮込んだシチューや、ワイバーン肉の蒸し焼きなど、その店のおすすめメニューを十分に楽しんだ。

 食後のデザートを食べながら、話はコハクが奴隷から解放されたことに及ぶ。


「へぇー、コハクちゃんだけなの? ソラノさんとアモーさんは?」

「このままのペースを続けたいというのがアモーの希望だからな。購入金額が稼げた時点で解放するよ。ソラノはちょっと事情があってな」

 エトウは言いよどんだ。

「ウチは犯罪奴隷。お金だけでは解放されない」

 ソラノはなんのためらいもなく答える。


 ソラノが奴隷に落とされた場所がエーベン辺境伯領だと聞くと、ラナは険しい目つきになり、さらに詳しくソラノから話を聞き出した。


「それはかなり怪しい話だね。ステインボルト辺境伯は病で長い間療養中なのよ。それで子息のリーゼンボルトが領主代理を務めているのだけど、評判はかなり悪かったわ」


 勇者パーティーは王都にもどってくる前、辺境の地を巡って魔物の討伐を行っていたという。

 エーベン辺境伯領に滞在中、領主代理やその周辺にいる有力貴族たちが平民と度々問題を起こし、権力で黙らせているといった話を聞いたのだそうだ。


「その奴隷商人が領主代理と懇意にしているようならば、強引な手段でソラノさんを奴隷にした疑いがあるわね」

「しかしそんなことが許されるのか? 奴隷の扱いは厳格に規定されているはずだろ」

「そうよね。だけど、貴族と平民の間でも国法が必ずしも守られているとはいえないでしょう? お金や権力で理非をねじ曲げるようなことも起きるわ。あの領主代理はちょっと信用できないわね」

「ラナは領主代理と会ったことがあるのか?」

「ええ、実はロナウド様ともめたのよ。ロナウド様はあれで正義感が強いから。特に弱い立場の女性にはね」


 ラナは苦笑いをしながら話を続けた。

 勇者パーティーが地元貴族主催のパーティーから帰る際に、令嬢にしつこく言い寄っていたリーゼンボルトを勇者ロナウドが止めたのだそうだ。

 令嬢が礼を言って去った後で、あのような口説き方は好ましくないと苦言を呈するロナウドに対して、リーゼンボルトは休日の遠乗りに誘っていただけだと弁明した。


 令嬢を強引に馬車に連れ込もうとしているように見えたというロナウド。それは見間違いではないのかとにこやかな表情をくずさないリーゼンボルト。

 これではらちが明かないと判断したミレイの仲裁で、この騒動は終わりとなった。


「リーゼンボルトがただごまかそうとするだけだったら、そんな人もたまにいるから印象に残ってないと思う。彼はちょっと違ったの。だって相手はロナウド様なのよ。攻撃されるような状況じゃなくても、ロナウド様の発する覇気は感じていただろうし、敵に回したら面倒になるぐらいの分別はあるでしょう? それなのに、どこまでも張り合っていたの。その図太さというか、後先考えてなさそうな危険さというか、とにかく私は嫌な感じがしたから、ミレイ様とも相談してその町をできるだけ早く出ることにしたのよ」

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― 新着の感想 ―
[一言]  あの性格の勇者サマとミレイなら、横領も知っていて黙認していたのが一番可能が高そうなんだけどな、未必の故意ってやつ。  それにラナもエトウも何だかしっくりこない、特に彼女は思考誘導みたいなも…
[一言] 着服の件は、エトウに金を支払われないことを知ってる人が多すぎて、連絡役2名の着服ってのは無理がありますね。 たぶん、関わった連中で逃げるためのコネがなかった下っ端に、全ての責任を押し付けただ…
[一言] ラナのヘイト溜まりすぎて何を言っても取り返しがつかないっしょ いっそのこと悪女に振り切った方が整合性あると思うわw
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