9. オーガ族の角
「だいたいおかしいと思ってたのよ。いくらお父さんに腕力があるからって、あんな大剣を軽々と振り回せないでしょ。戦闘が長くなってもあんまり疲れた様子もなかったし」
コハクは宿の一階で夕食をとりながら、父親の魔力について自分の見解を述べていた。
「普段のアモーから感じる魔力量と、戦闘時の魔力量には違いがあった。だが、オーガ族特有のものかと思っていた。本人に自覚がなかったのか」
ソラノは呆れたように言った。その視線の先には、アモーの額から伸びる二本の黒角があった。
「俺は知らず知らずのうちに自分の魔力を使って、筋力や体力を底上げしていたのだな」
二人の話を聞いていたアモーは納得の表情を見せる。
エトウが補助魔法によってアモーの体内魔力を活性化した結果、その魔力量は三倍ほどにはね上がっていた。これは魔力感知にすぐれたソラノのお墨付きを得ている。
どうやらオーガ族の魔力は角に多く蓄えられているようで、戦闘時には本人の自覚がないままにその魔力を使っていたようだ。
「でも、アモーは無意識に使えていた魔力を、これからは意識して使わなければならないのだろ。その辺りはどうなんだ?」
「アモーは自分の魔力の動きがよく分かるようになったと言った。それならば魔力操作の訓練をすればいい。スキルや魔法を覚えるのはそれから」
ソラノがアモーを見ながら説明する。
「問題ない。できなければ、鍛錬をしてできるようになればいい。俺はいつもそれを目の前で見ている」
アモーはエトウの方を見て笑った。コハクとソラノも、エトウを見てにやにやしている。
褒められているのか、馬鹿にされているのか定かではないが、エトウは照れくさいような気持ちになった。
「おほん。そうだな。何事も挑戦してみなければ始まらないな。ただ、アモーは無理をしないように。魔力量が三倍になったということは、それを操作するための難易度も三倍以上になったと見るべきだ。ケガのリスクが増えていることを自覚してくれ」
エトウはパーティーリーダーらしくアモーに注意を与えたのだった。
「私の角にも魔力がこめられているのかな? ソラノはなにか感じてる?」
「ああ。コハクの角にも魔力が蓄えられている。でも戦闘時でもあまり変わらない。コハクは普段から角の魔力を使いこなしてると思う」
「なーんだ。魔力量二倍とかのボーナスを期待したんだけどな」
コハクは残念そうに言った。少し寄り目になりながら、自分の額から伸びる琥珀色の角を見ている。
「コハクはもともと魔力量が多い方。二倍になったら危険人物」
ソラノはコハクの顔を指差してそう言った。
「よーし、ちょっと聞いてくれ。ゴブリン・スタンピードの報酬がギルドの口座に振り込まれていた。この後、それぞれが受け取る報酬について確認しておきたい。コハクとソラノは俺たちの部屋まで来てほしい」
エトウには報酬のことでメンバーに伝えておきたいことがあった。




