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14. 覚醒 前編

 エトウは馬から降りて、こちらに向かってくるゴブリンの大群を眺めていた。


 見慣れた緑肌のゴブリンが先頭となり厚みを作っている、そこにはゴブリンアーチャーやゴブリンメイジも混じっているようだ。

 その後ろから体が二回りは大きく、肌の色が薄茶色のホブゴブリンが続く。手には棍棒を持ち、前へ前へと通常種のゴブリンを追い立てる。

 ゴブリンの群れは平地を覆い尽くすだけでなく、ずっと先の森の中にまで続いていた。


「エトウ! 私たちは馬を降りる? それともこのまま騎乗してるのがいい?」


 コハクの声は少し震えていた。

 この数のゴブリンを目の前にすれば、コハクでなくても緊張を強いられるのは当然だ。戦意を喪失していないだけ、コハクは戦士として見どころがある。

 コハクとアモーをちらっと見たエトウは困ったような表情を浮かべた。


「そうだな。予想していたよりもゴブリンの数が多かった。とりあえず、決死隊の方へ逃げやすい場所にいてくれ。それで俺の討ちもらしを余裕があったら狩ってほしい。余裕があったらでいいぞ。数が多くなりすぎたら、迷わずもどってくれ」


 だが、コハクにはエトウの意図するところが分からなかったようだ。


「うん? それはどういうこと? エトウが一人でゴブリンの相手をするってこと?」

「ああ、簡単にいえばそういうことだ」

「ちょっと! マンティコア戦のときみたいなことは嫌だよ!」

「分かってる。あのときとは状況も、俺の心理状態も違う。今は必要だから突撃するんだ」


 エトウはそのままゴブリンの群れへと走り出した。


「エトウ!」


 コハクが呼びかけるがエトウは止まらない。

 自らに身体強化のバトルスペルをかけて、ストレングス、ヘイスト、マジックフォースを重ねがけしていく。

 剣には雷魔法を付与した。風魔法の系列として使い手のあまり多くない魔法である。

 ミスリル製の片手剣は雷の光で輝き、ゴブリンの目を引きつけた。ゴブリンの先頭がその光に吸い寄せられるようにエトウの方に向かって来る。


 エトウは剣を振り上げると、魔力を込めて強く横なぎに払った。すると剣から鋭い雷光が十メートルほど先まで伸びていき、範囲内のゴブリンが次々に倒れ込む。

 エトウはそのまま右に左に展開して剣を振るう。その度に辺り一帯のゴブリンが死んでいった。

 雷の衝撃により一瞬で命を奪ったのだ。


「すごい……」


 コハクはその言葉しか出て来なかった。

 エトウが強いのは分かっていた。雷を付与した剣も見せてもらったことがある。

 だが、バフとエンチャントによって、ここまでの戦闘力を発揮できるとは想像していなかったのだ。


「お父さんは知ってたの?」

 コハクは、エトウの戦いに目を釘付けにされながらアモーに尋ねた。

「ああ、知っていた。だけど、エトウの場合、今日よりも明日の方が強い。剣も魔法もずっと鍛錬を続けている。半年前とは別人だ。だから、お父さんも驚いているよ」

 アモーも雷魔法でゴブリンを蹂躙するエトウに目を見張っている。


「しかし、あれほどの戦闘を長時間続けるのはエトウでも厳しい。まずはゴブリンの群れの勢いを消さなければならないとエトウは考えている。その後は時間稼ぎの消耗戦だ。エトウの戦闘の邪魔にならない場所で、俺たちもゴブリンの数を減らしていくぞ」

「うん、わかった!」


 コハクは元気よく答えるとミスリルの短剣を両手に構えた。

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