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2. 装備の刷新

 ワイバーン十二匹の討伐報酬と素材売却益はかなりの金額になった。

 パーティー用の貯蓄にも大分余裕が出てきたことから、エトウはメンバーの装備品を刷新することに決めた。


 防具は今回討伐したワイバーン革をふんだんに用いて、要所は鋼などで防御力のさらなる向上を図る。

 武具についても、アモーの大剣に代わる物は見つからないかもしれないが、コハクとソラノの短剣は思い切ってミスリル製にして、エンチャントの効果を底上げしようと考えていた。


 あとはソラノの弓矢である。

 ソラノが弓矢に適していると話した木材はなかなか手に入らなかった。この半年間、方々の伝手をたどって少量ずつ集めていたが、ワイバーンの収益でまとまったお金が入ったことにより、これまでよりも大胆に弓矢の素材を買い集めることが可能となった。

 集まった素材をすべて使って、ソラノが弓矢を製作する時間を作ることにする。さらに予備として一級品の弓も購入するつもりだ。


 こうした装備品の新調がすべて完了すれば、エトウのパーティーメンバー全員がB級冒険者としては十分な装備を身に着けるようになる。

 まだB級はエトウのみだが、今回のワイバーン討伐でアモーとソラノがB級昇格試験の要件を満たした。二人が昇格試験に合格すれば、B級冒険者三人とC級冒険者一人の有力パーティーとなる。

 エトウは今から楽しみだった。


「なんで私はB級に昇格できないの? エトウ、ずるくない?」


 コハクは口をとがらせながら不満を言っていた。


 今回、一緒にワイバーン討伐に行ったのだが、討伐数でいうとアモーが五匹、ソラノが四匹、エトウが二匹、コハクが一匹だった。アモーとソラノの成果が突出していたのだ。


 しかし、これはパーティー内での役割分担の結果でもある。

 エトウは補助魔法を行使する後衛として陣形を組んでおり、コハクはエトウを守るような位置取りをしていた。後衛のソラノはエトウのバフとエンチャントによって、離れた場所からワイバーンを狩ることができたのだ。

 コハクはソラノが打ち落としたワイバーン一匹の止めを刺しただけだった。


「コハクはエトウを守っていたんだから、十分な働きだった。そもそもB級に上がるには成人していなければだめ。コハクにはまだ早い」


 ソラノがコハクをなだめるように言う。

 この半年で女性陣は大分仲良くなり、休日には連れだって町に繰り出すことも多くなった。

 親離れが早すぎるのではないかと、アモーがエトウに相談していることは男性陣の秘密となっている。


「うーん。年齢制限があるのがおかしいよね。というか、私もB級に上がりたーい!」


 コハクの本音は自分だけがC級に留まっているのが嫌なのだろう。まだ子供の発想だとエトウは思ったが、今年十三歳になったばかりの彼女は正真正銘の子供だった。


「その年齢でコハクぐらい強い人はいないんじゃないかな? ギルドでもコハクが有望株だってことは理解しているよ。このまま冒険者活動を続けていけば、俺なんかよりもっと上に行けると思うな」

「ふーん。そう。でも、エトウの能力は極悪だから、勝てる気がしないけどね」


 コハクはいたずらをする子供のような笑顔を見せてそう言うのだった。


 パーティーメンバーの装備が刷新されたのはそれから二ヶ月後だった。

 アモーの大剣とエトウのミスリルソード以外は新調や整備を行って戦力の向上が図られた。


 パーティーメンバーを驚かせたのは、ソラノが製作した弓の威力だった。

 エトウのバフとエンチャントを付与すると、ソラノの弓の射程は千五百から二千メートルとなり、二百メートル先までの精密射撃が行えるようになったのだ。

 エルフは皆こんなにも弓に秀でているのかと訊くと、ソラノは首を振り「エトウの補助魔法がおかしい」とぶっきらぼうに答えた。


 エトウはそんなにおかしいのかなと疑問に思ったが、自分は一応賢者だったことを思い出して、補助魔法を授けてくださった女神様に感謝した。

 以前はなぜあんな人間を勇者や魔聖に選んだのかと女神様を恨んだこともあったが、自分のパーティーで成果を上げていくにつれて、過去のしがらみは段々と消えていったようだ。

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