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8. 宿敵マンティコア

 こんなことになるとはまったく想像していなかった。いつもよりも少しだけ難易度が高い魔物討伐の依頼だったはずだ。

 

 無理をした訳では決してない。ただ、エトウは間違いをおかしてしまった。そのたった一度の判断ミスによって、パーティーは窮地に陥ることになる。


 エトウは毒針によってえぐられた自分の太ももを見た。どす黒い血が止めどなく流れている。


 コハクがエトウの足のつけ根を細縄で縛り、手を血で汚しながら包帯を巻こうとしていた。すぐ近くではソラノがエトウたちの護衛につき、アモーは一人で二匹のマンティコアと戦っている。


 マンティコアは獅子の体に人の頭がついた不気味な魔物である。

 髭面の老人と若い男の顔をした二匹のマンティコアが、よだれを垂らしながら、ときどき思い出したように片言の人語を話した。

 サソリのように鋭くとがった尾がゆらゆらと揺れている。それこそがエトウの太ももを突き刺した必殺の武器だった。


☆☆☆


 その日、冒険者ギルドは朝から騒ぎになっていた。王都へ向かっていた商隊がマンティコアに襲われ、多くの犠牲者が出たというのだ。


 ギルドは王都から馬で二時間ほどの場所に、ランクCのマンティコアがあらわれたことを重視して緊急の討伐依頼を出していた。C級以上の冒険者パーティーを対象に、通常の二倍の報酬を約束している。


 ただし、討伐までの期限を三日とし、それを超えれば通常料金にもどる。マンティコアの迅速な討伐を第一の目的として、冒険者たちを競わせることにしたのだ。


「エトウ、報酬二倍だって! おいしいじゃない。やろうよ」

 コハクが乗り気になっている。

「いいんだけどな。マンティコアかぁ」

 エトウはあまり気が進まなかった。

「エトウはマンティコアが苦手?」

 ソラノが不思議そうな顔をする。

「うーん、嫌な記憶があることは確かだな」


 エトウが勇者パーティーにいたとき、マンティコア相手になにもできなかったことがある。

 ミレイの魔法に命を救われ、ラナは危険をかえりみずにエトウの身を守ってくれた。そして勇者ロナウドの一撃によって、マンティコアは倒されたのだった。


 そのときの戦いがきっかけとなり、エトウは補助魔法を禁じられることになった。そしてパーティーの雑用係のような扱いを受けるようになる。

 マンティコアには、あの頃の嫌な記憶がまとわりついているのだ。


「アモーがケガを負ったのも、マンティコア相手じゃなかったか?」

「そうだ。だが、別に苦手意識はないぞ。冒険者を長いこと続けていれば、うまくいかないこともある。一つ一つ気にしていてはきりがない」

「そうか……そうだよな。よし! マンティコアの討伐依頼、受けるか」

「やった! そうこなくちゃ」

「距離があれば、弓だけでも倒せる。難しい相手じゃない」


 エトウたちはマンティコアの討伐依頼を受注して、意気揚々とギルドを出たのである。

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